痔には?~薬剤師が本音でオススメする市販薬⑱
薬の専門家である薬剤師におススメの市販薬をセレクトしてもらうこのコーナー。
今回のテーマは「痔」です。
痔にお悩みの方も多いと思います。
なかなか恥ずかしくて人に言えない悩みかもしれません。
座り仕事の方に多いようです。
テレビCMなどでもよく流れますが、市販薬でも治療が出来ます。
今回も、これら症状にも効果のある市販薬を薬剤師さんにご紹介頂きました。
アドバイスしてくれる薬剤師はこちらの皆さんです。
(小豆田くら子/宇野さらら/日陰ましう/ふらんすぴあの/ゆきつばめ ※五十音順)
さて、このコーナー、選者の皆さんには全くの忖度無しでお選び頂いています。営業的な配慮などはありません。ステマも無し。
あくまで処方内容や剤形、コスパなど、一薬剤師の視点から「患者さんに自信を持ってオススメできる一品」をセレクトしていただいています。
編集側としては製品バリエーション色々あるほうがコンテンツとして面白いのですが、今回は2商品に絞り込まれました。
3名の薬剤師が揃って推薦してくれたのがこちらです。
プリザエース注入軟膏T(大正製薬)
【おすすめコメント】
痔の辛い痛み、急な出血に対して、炎症をおさえるヒドロコルチゾン酢酸エステル、痛みをおさえるリドカイン、出血をおさえる塩酸テトラヒドロゾリン、などの有効成分が作用して効果を発揮します。
注入型なので、患部や薬に直接触らずに使用可能です。肛門内側の痔には注入、外側の痔には塗布して使用できます。
(小豆田くら子)
競合商品ボラギノールと比べて、止血、鎮痒、消毒成分が含まれているのがプリザエースシリーズの特徴。急な出血、かゆみにお困りのときに効果的。
また注入軟膏は中、外両方の痔に使用でき、利便性が高い。使いきりタイプであり、衛生的。
(ふらんすぴあの)
内痔核という内側にできるものには使用できませんが、切れ痔や外側に出てしまった痔疾に対しては直接軟膏を塗ることができます。痛み、出血、炎症を抑える成分がしっかり入っていることと、かゆみを抑える抗ヒスタミン剤が入っていることがおすすめポイントです。10gチューブ入りなので、何度も使用できるという利点がある一方で、汚染されると保存できないというデメリットもあります。使用時は清潔にして使うことが必要です。
(宇野さらら)
*
そして、残る2票はこちらに。
ヘモリンド舌下錠(小林製薬)
◎急性症:1回2錠 1日4回
※激しい痛みと、出血、腫れ、かゆみ、違和感等を伴う症状
◎一般症状:1回1錠 1日3回
※急性症の激しい痛みが緩和した後の排便時の痛み、出血、腫れ、かゆみ、違和感等を伴う症状
◎慢性症:
第1日目 1回2錠 1日4回
第2日目 1回2錠 1日3回
第3日以降 1回1~2錠 ※ 1日3回
※慢性症の方は第3日以降、状態をみながら1回1錠に減量してください
※長期にわたり、排便時の痛み、出血、腫れ、かゆみ、違和感等を伴う症状。
◎服用タイミングについて
空腹時(食事の前や、食後なるべく2時間以上)に服用してください。
◎入り数
20錠入、40錠入
【おすすめコメント】
有効成分「静脈血管叢エキス」が、いぼ痔を根元から小さくし、いぼ内部のうっ血を内側から改善する。舌下錠タイプで、舌の裏から吸収された有効成分が血流に乗っていぼ痔の根元に直接届く。2017年に発売された舌下錠ですが、急性期~慢性期で使え、外用薬のみでは効果不十分という方にもオススメできます。
(ゆきつばめ)
外用薬ではなく、舌の下から吸収させる舌下錠という剤形で気軽に使用しやすい。症状によって容量が異なるので注意が必要。痔の根元のうっ血を改善することで症状を改善する。
舌下錠は飲み込む内服薬と違い肝臓などの影響を受けにないので成分がそのまま患部へ届きやすい。
(日陰ましう)
痔にお悩みの方へのアドバイス
痔ではなかなか病院を受診出来ないという方でも、軽度であればOTC薬で十分対応出来ると思います。
今回紹介したヘモリンドは2017年に発売された舌下錠ですが、急性期~慢性期で使え、外用薬のみでは効果不十分という方にもオススメ出来ます。
痔はトイレでのいきみ、長時間座っている事、便秘などで起こりやすい症状です。食生活の改善や適度な運動、身体を冷やさないようにするなどの心がけも大切です。
(ゆきつばめ)
排便時に無理をするとおしりに負担がかかり、うっ血を起こしやすくなる。無理に出そうとせず、出ないときは早く切りあげ、便意を催したときに短時間で排便するよう心掛ける。シャワーではなく湯船にお湯をため入浴することで、うっ血を改善しいぼ痔の症状を和らげることもできる。
(日陰ましう)
痔の大きな原因となるのは便秘や下痢です。特に日常的な便秘がある方は、水分をこまめに摂取し、食生活を見直し、適度な運動をこころがけましょう。
(小豆田くら子)
デスクワークなどで座る時間が長い方は肛門周辺がうっ血しやすくなります。適度に立ち上がるなどして休憩をとりましょう。
日常的な入浴習慣もお尻の血行改善に有用です。
(ふらんすぴあの)
悪化させないために、肛門へ負担のかからない生活習慣が必要です。便秘をしないようにする、食事で刺激のあるものを摂取しないこと、長時間の座位を取らないようにするなどです。薬はあくまでも症状を緩和するだけの効果しかありません。根本治療を希望される場合は専門の医療機関の手術で切除するしかありません。その場合は肛門科専門医へかかりましょう。
(宇野さらら)
監修者コメント
テレビCMでよく流れている「ボラギノール」ではなく、プリザエースを皆さん、選ばれました。
軟膏、坐薬、注入軟膏と痔の状態によって使い分けするといいですね。
内服薬のヘモリンドは静脈血管叢エキスが主成分です。これは主に動物の血管のたんぱく質を分解したもので、医療用にも同じ成分のものがあります。
痔も気がついたら、早めに治療すること、生活習慣を見直すことが必要だと思います。
<本稿の監修>
坂口眞弓
博士(薬学)。みどり薬局、みすじ薬局、ゆうま薬局代表(東京都台東区)著書に「ここが知りたかったOTC医薬品の選び方と勧め方(南江堂)」、「OTC医薬品の比較と使い分け(羊土社)」など多数。