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暮らしの薬学【衣類用洗剤・漂白編】~①漂白剤のはたらき

ミズホ「クリーニング代節約のため、旦那さんが毎日来ているワイシャツを私は家でお洗濯しているんです。毎日洗ってるんだけど、だんだん襟汚れが落ちなくなってくるのよね~。この前なんか、昼食でカレーをこぼしてしまって・・・・。黄色のシミができちゃったわ。」

薬剤師ナナコ「旦那さんのワイシャツを洗濯、アイロンがけして~偉いわ~。襟だけでなく、袖口汚れも気になるところよね~。それにカレーが服に着いたあとのシミも困るわね。他にはオレンジジュースとかケチャップとかいろいろな飲食物の色素がつくとただ洗濯機で洗っただけではきれいにならないわね。今回は衣類の漂白について勉強しましょう。

洗剤と漂白剤ってどう違うの? 漂白と除菌って一緒?

このシリーズでは衣類用の漂白剤について説明いたします。過去に「暮らしの薬学」で紹介した「家庭用洗剤の漂白剤」の内容をおさらいしつつ話を進めます。

衣類用漂白剤は、衣類についた食べ物のシミやボールペンなどのインク汚れなど普通の洗剤では汚れが落ちないときに使いますよね。では衣類の汚れを落とす洗剤と漂白剤はどう違うのでしょうか?

(参考)【家庭用洗剤・洗浄編】~①洗浄とは
 洗うってことは、汚れ取り除くってこと

酸化型漂白剤に対し、還元型漂白剤があります。これは汚れ自体を分解する力は小さいのですが、酸化した鉄さび、酸化鉄を含む赤土など酸化によってついた汚れを白くするのに用いられます。また、塩素系漂白剤(酸化型漂白剤)を使ったために黄変を起こした一部樹脂加工品(ワイシャツの襟は適度な硬さを保つために樹脂加工しています)を白くすることもできます。

(酸化型・還元型漂白剤については次項「衣類用洗剤・漂白編~②漂白剤の種類/成分と特徴」で説明します)

このように洗剤は汚れを分離してきれいにする、漂白剤は汚れを分解してきれいにするという違いがあるのです。
でもその分解反応が効くのは有機物に限られています。有機物とは、タンパク質や糖分、油脂類などで、細菌類やカビ類、食べこぼしや人の皮脂なども有機物です。ですから、泥やすすなど有機物ではないものにはほとんど効果がなく、この場合は汚れを分離する洗剤(界面活性剤)に頼るしかありません。
漂白剤は細菌類やカビ類などの有機物を分解しそれらの活動を止めてしまう、つまり、殺菌・除菌作用があるということです。有機物が色素であれば、白くし、有機物が細菌であれば殺菌・除菌するというわけです。(ただし、還元型漂白剤は、分解する能力が小さいので殺菌・除菌には使われません)

Q.うがい薬「イソジン」が衣服に付いて着色しました。脱色する方法は?

イソジンの成分はポピドンヨードです。還元型漂白剤であるハイポエタノール(チオ硫酸ナトリウム液)はポピドンヨード中のヨウ素を還元し、無色のヨウ素イオンに変化させるため脱色します。このチオ硫酸ナトリウムは、水道水に含まれている塩素(塩素は水道水を酸化反応によって除菌するために使われている)を中和させる働きがあるので、「カルキ抜き」とも呼ばれています。塩素を中和するので“次亜塩素酸ナトリウム”の中和にも使われます。

もっと勉強したい人に ~ 参考リンク・参考図書

衣類の漂白剤の使い方を知ろう~「酸素系」「塩素系」「還元型」~(日本石鹸洗剤工業会)
漂白剤にはご用心!漂白剤の知識と使い方(GUNZE)

<参考図書>
『石けん・洗剤100の知識』
『よくわかる最新洗浄・洗剤の基本と仕組み 水系・非水系洗浄、機械的洗浄の基礎知識 汚れ除去のメカニズム』
『身の回りには「ふしぎ」がいっぱい(「ふしぎ」を科学しよう)』

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<この記事をまとめた人>
ミズホ
「薬局活用ガイド」編集部員。埼玉県在住。中2の長女、小4の長男の子育てをする二児の母。

<書いた人・監修>
藤田知子
京都薬科⼤学卒業後、メーカー勤務を経て、ドラッグストアでOTC医薬品販売から処⽅箋調剤など薬剤師業務 に従事。“薬剤師は町の科学者”をテーマに薬系新聞に寄稿、「ドラッグストアQ&A」(薬事⽇報社)を編集。