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暮らしの薬学【防虫剤】~③防虫剤の選び方と使用上の注意

成分がナフタレン、パラジクロロベンゼンの防虫剤は同じような外見をしているので、混ぜて使ってしまって衣類にシミができた経験はありませんか?防虫剤の使用上の注意について説明します。

衣類の種類や使用する場所に応じて防虫剤を選びましょう!

防虫剤を選ぶときには、保管したい衣類などの素材を確認し(暮らしの薬学【防虫剤】~②防虫剤の種類と特徴Q&A)、使用する場所に応じて量やタイプを選択します。
衣装ケース、引き出し、クローゼット、洋服ダンスなど使用する場所に応じて、置くタイプ、吊り下げタイプなどがあります。特に、ピレスロイド系の防虫剤は、「引き出し用」、「衣装ケース用」、「洋服ダンス用」、「クローゼット用」など、収納空間の広さに合わせて薬剤を処方して商品が作られているので、その表記にしたがって選択するとよいでしょう。
効力がなくなったことを表示(色の変化や終了を知らせる文字など)してくれるので、その時に新しいものに交換します。

人形(ひな人形、五月人形など)は“人形用”と書かれた防虫剤があります。人形の着物(繊維)を食べる虫から守るための製品です。人形の装飾品に繊維が使用されていないようでしたら、防虫剤は必要ありません(例えば、ひな人形のケース、ミニチュア食器など)。防虫剤を使用するときは、人形や装飾品をあらかじめ和紙やティッシュ等で包んでおきます。材質や塗装、表面のコーティングの種類によっては、変色や変形などを避けるためです。
樟脳、ナフタレン、パラジクロロベンゼンは昇華性の性質を持ち、昇華性のガスは、その比重が空気よりも重いので、衣類の上部に置き、衣類の内部にガスが充満するように容器の表示指示通りの量を使用しましょう。必要以上に使用すると、再結晶となって、衣類に白い粉状のものがついてしまいます。しかし、そもそも昇華性の物質ですから、風通しのよい陰干しにしておけば、白い粉は自然になくなります。
また、これらの防虫剤を一緒に使うと防虫剤が溶けて液体のシミになってしまうことがあります(暮らしの薬学【防虫剤】~③防虫剤の選び方と使用上の注意Q&A参照)。ナフタレンとパラジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼンと樟脳、樟脳とナフタレンがNGの組み合わせです。昇華して形が無くなったら新しいものを再投入してください。

Q.ナフタレンとパラジクロロベンゼンを一緒に入れて収納すると衣類にシミができるのはなぜですか?

ナフタレンやパラジクロロベンゼンは固体から直接気体になります。これを昇華といいます。固体のパラジクロロベンゼン等を衣類の間に入れておいてもしみにならないのは薬剤が液体にならないからです。ナフタレンの凝固点は、80 ℃、パラジクロロベンゼンの凝固点は、53 ℃ですが、ほぼ1:2に混合すると、約29℃で液状になります。このように、混合物の凝固点が、単品のそれに比べて低くなる温度を共融点、そのときの混合物を共融混合物といいます。つまり、混ぜ合わせると、室温ぐらいで、固形物が融解して、液状になり、衣類にしみこんでシミになるのです。

もっと勉強したい人に ~ 参考リンク


防虫剤にはいろいろな種類がありますが、どのように違うのでしょうか?(エステー化学)

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<この記事を書いた人・監修>
藤田知子
京都薬科⼤学卒業後、メーカー勤務を経て、ドラッグストアでOTC医薬品販売から処⽅箋調剤など薬剤師業務 に従事。“薬剤師は町の科学者”をテーマに薬系新聞に寄稿、「ドラッグストアQ&A」(薬事⽇報社)を編集。