暮らしの薬学【ヘアカラーリング剤】~②カラーリング剤の種類と染まるメカニズム
ナナコ「ヘアカラーリング剤にはいろいろな種類があります。染める直前に2つの液・クリームを混ぜ合わせるものがありますが、混ぜることで髪の中で化学反応を起こし、髪の色を染めています。シャンプ―するときにカラーリンス、カラートリートメンで徐々に染めていくものもありますね。」
カラーリング剤にはどんな種類があるの?
髪を染めることは、ヘアスタイルの変化を楽しむだけでなく、黒髪を保つための日常的な身だしなみでもあります。現在、さまざまなヘアカラーリング剤がありますので、特徴を知って使い分けましょう。主なカラーリング剤について解説します。
永久染毛料 - 酸化染毛剤
酸化染毛剤はヘアカラー、白髪染め、おしゃれ染めと呼ばれ、1剤と2剤を混ぜ合わせ、髪に塗るとアルカリにより毛髪が膨潤され、酸化染料が毛髪中に浸透し、過酸化水素と酸化重合して発色し色を定着させます(染毛作用)。同時に、さらにアルカリによって分解を早めた過酸化水素の作用によりメラニン色素が分解され髪色を明るくします(脱色作用)。アルカリ剤を含むので単にアルカリカラーとも呼ばれていますが、酸性酸化染毛剤という1剤にアルカリ剤が含まれていないものもあります。アンモニアフリー、中性タイプ、弱酸性タイプカラーとも呼ばれています。特有の刺激臭や、頭皮への刺激が少ないため乾燥肌の方には頭皮に「しみない」ヘアカラーとして、また髪への負担を軽減しダメージを抑えられるヘアカラーとして使用されています。ただ、アルカリカラーに比べ染まりは弱くなります。2剤には共通して過酸化水素(酸化剤)が含まれています。
この製品は医薬部外品でヘアカラーをする前に毎回必ず皮膚アレルギー試験(パッチテスト)を行う必要があります。
半永久染毛料 - ヘアマニュキュア
半永久染毛料は化粧品に属し、1回の使用で染まるタイプ(ヘアマニュキュア)と連続使用して徐々に染まるタイプ(カラートリートメント、カラーリンス:後述)があります。繰り返し染めても毛髪の傷みがあまりなく、酸化染毛剤(ヘアカラー)でかぶれた人が代替品としても使用しています。
1回の使用で染まるタイプであるへアマニキュアは、色持ちは約2~4週間です。皮膚や衣類、床・洗面台・家具などにつくと、すぐに落としにくいこともあります。ヘアマニキュアに使われている染料は「酸性染毛料」とよばれ、酸性下で、毛髪表面のプラスの電荷をもつ部分にマイナスの電荷をもつアゾ系の酸性染料がイオン結合でくっつき、毛髪を染めます。
半永久染毛料 - カラートリートメント、カラーリンス
連続使用して徐々に染まるタイプで、カラートリートメント、カラーリンスと呼ばれています。ヘアマニュキュアと逆で多くのカラートリートメントは、弱酸性~弱アルカリ性下で毛髪表面のマイナスの電荷をもつ部分にプラスの電荷をもつ塩基性茶16などの染料がイオン結合でくっつき、毛髪を染めていきます。
一時染毛料(毛髪着色料)
ヘアマスカラ 、ヘアカラースプレー 、ヘアマーカーと呼ばれ、顔料などの着色料を毛髪の表面に付着させて、一時的に毛髪を着色します。塗るだけなので、手軽に使用できます。繰り返し染めても毛髪の傷みがあまりありません。一度のシャンプーで洗い流せますが、汗や雨などでも色が落ち、衣服を汚すこともあります。
脱色剤・脱染剤
この製品は、医薬部外品に該当し、毛髪を染める作用はなく、毛髪を明るくしたり(脱色効果)、毛髪に残っている染料を分解したり(脱染効果)します。ヘアブリーチ 、ヘアライトナーと呼ばれています。脱色剤には1剤式、2剤式、3剤式があります。1剤式は過酸化水素水を主成分とし、その酸化作用で毛髪を脱色します。一度の使用で毛を明るくすることはできませんが徐々に色を変えていくことができます。2剤式は1剤にアンモニア、モノエタノールアミンなどのアルカリ剤を使用し、過酸化水素水などの酸化剤を配合した2剤を使用前に混合して使用します。アルカリ剤で毛を膨張させ過酸化水素が毛に浸透し、メラニン色素を分解して脱色します。3剤式は脱色力をさらに強めたものでハイブリーチと言います。2剤式の脱色剤に酸化促進剤(過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩)であるブースターを加えて脱色するものです。1回の使用でかなり色を明るくすることができる反面、髪に損傷を与えやすいです。
Q.ヘアカラーとパーマが同時にできないのはなぜですか
へアカラーは、酸化反応により染着されますが、パーマは、還元作用の後、酸化反応によりウエーブを生み出します。したがって、ヘアカラーを先に行って、パーマをかけると、パーマの還元作用によりせっかく染着した色が落ちてしまいます。
もっと勉強したい人に ~ 参考リンク・参考図書
●ヘアカラーリング剤の分類(日本ヘアカラー工業会)
https://www.jhcia.org/information/1_classification.html
<参考図書>
『いい白髪、やばい白髪ケアー頭皮がしみる、かゆいは危険信号!』
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<この記事を書いた人・監修>
藤田知子
京都薬科⼤学卒業後、メーカー勤務を経て、ドラッグストアでOTC医薬品販売から処⽅箋調剤など薬剤師業務 に従事。“薬剤師は町の科学者”をテーマに薬系新聞に寄稿、「ドラッグストアQ&A」(薬事⽇報社)を編集。