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羅刹の紅(小説投稿)第九十三話Part2

○あらすじ
普通を愛する高校生「最上偉炎」は拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」に助けてもらうが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」、さらには不登校だったがかつてこの国の財閥に君臨していた今川家の令嬢である「今川雪愛」と切風の四人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
赤虎組は資金を確保するため偉炎たちが通う広星高校の地下金庫を襲撃することを決めた。その情報を手に入れた偉炎たち一般部はそれを体育大会当日に迎え撃つことになった。そして体育大会の当日を迎えた。
 正午になった頃、偉炎がミスをしてしまい赤虎組は学校の近くまで接近してしまう。それに対し一般部は総出で立ち向かう。ついに一般部と赤虎組の戦闘が始まった。しかし、人数的に不利な一般部はついにフォーメーションが崩れた。もはやこれまでとなったが、切風の部下と名乗る集団が一般部に加勢する。

〇本編

一方、視線は赤虎組に変わる。有坂の部隊が一般部と交戦することは有坂自身、想定の範囲内である。
「有坂様、敵の数はおよそ五人であります。」
 彼は学校のある丘の下で状況の確認をしていた。
「五人ですか・・・さすがに少なすぎますね。」
「はい!現に我々は多少の死傷者を出しながらも敵の防衛を突破、数分もしないうちに校内に侵入できるでしょう。」
「それは良かったです。くれぐれも冷静に、かつ冷徹に実行して・・・」
「現場より報告!」
 有坂は安堵して通信を切ろうとしたがここで新たな一報がきてしまった。
「どうしたのです?そんな慌てた様子で。」
「謎の集団、およそ五十人が敵に加わり我々を攻撃しております。敵は最新の武器やら装備やらを保持しており・・・このままでは全滅してしまいます!」
 有坂は大きく目を開いた。そして、何を思ったのか口を緩め不気味な笑みを浮かべたのだ。味方が死んでいく中で彼はそれを面白くも感じている、サイコパスの領域といっていいだろう。
「・・・大変のようだな。お前らしくもない。」 
 ここで御影が電話で有坂に接触した。
「えぇ、非常に困りました。さすがに想定外でしたね。」
「・・・どうするのだ?」
「申し訳ないのですがあなたの部隊と燿華さんの部隊は我々の援護をしてくれないでしょうか?要はプラン変更です。あれでいきます。」
「了解でーす!」
 ここで燿華が割り込んできた。
「・・・本当にこいつと行動するのか?」
「そうですね。ただこれも任務達成のためだと思ってここは一つ、よろしくお願いいたします。」
「・・・面白がっていないか?」
「いえまさか。もし、何かあったら逐一報告するようにしてください。」
 そういうと有坂は通信をきった。
「どうやら貴様と行動を共にしないといけないようだな。」
「おうよ!足引っ張るなよ!じゃぁまた後でな。」
 そういうと燿華も通信をきった。
「・・・さて。」
 御影は座っていた場所から静かに立って、自身の部隊に命じた。
「有坂の部隊と合流、学校になだれ込むぞ。」
 学校のある丘での戦闘は最高潮に達していた。

今日が体育大会の日で本当に良かったかもしれない。なぜなら警備の人や警備用の汎用性ロボットは全て校内の治安整備に費やしている。そして、監視カメラも赤虎組が新たに設置した妨害装置でジャミングされている。つまり、学校に丘は町の人々が目を凝らさない限り、完全に治外法権になっているのだ。
「偉炎!左から一人登って行っている。倒して!」
「了解。」
 偉炎は引き金を引く。そして、撃たれた赤い服の人間が倒れる。しかし、偉炎の背後から赤虎組の人間が急接近して鉄棒で頭を殴ろうとする。たださらにその裏から緑色の集団、つまり切風の部下がサプレッサー付きの拳銃で倒す。とにかく状況が混沌である。ただそんな中でも緑の集団のおかげで一般部が有利になっていることは間違いなかった。
「何だこいつら!」
「動きが人ではない!」
 赤虎組の連中は整備されていないし、投げ道具もほとんど持っていない。肝心の人数差だが、緑の集団が来てしまったせいでそれも持ち味にできなくなっている。このままだと数十分もしないで戦闘は終了するだろう。
(よし、このまま終わりそう・・・!)
 そんなことを考えている偉炎は再び赤虎組の構成員にナイフで背中を刺されそうになる。しかし、切風はそれを察し持っている日本刀とともに身体を回転させ相手の首を容赦なく斬った。
「全くもう!なんで君はそんなに油断することができるのかね?私たちがいなかったら人生五周目ぐらいだぞ、プンプン!」
「あぁ、すまん。」
 偉炎は緑色の集団が何者なのか、そして切風がなぜこれをまとめているのかが疑問で仕方がなかった。そのせいでボーとしないといけなくなったと言っても過言ではない。だからこそ、ここで彼は切風に質問しなければならない。それは悪魔との取引になるかもしれないが、今後のためにも必要かもしれない。
 偉炎はある程度戦闘が終わりそうになっていることを確認してから切風に聞く。
「切風・・・やっぱり聞いておきたい。あんた何者なんだ?」
「ん?そんなに気になるかい?それなら仕方がないね・・・」
 そう言うと切風は部下に任せて、偉炎の方に向かっていった。
「なら少しだけ教えてあげよう。」
 彼女の化けの皮を自分で剝がそうとしていた。

 私は警軍第一旅団副団長、及び隠密第一機動隊「蜂」の隊長である切風叶だ。階級は大佐である。

 とんでもない情報が偉炎の頭の中に入っていった。当然彼はその場で数秒停止する。
「・・・」
 またまたボーとしている偉炎に赤虎組の誰かが接近する。切風はそれを後ろも見ずに日本刀を振りかざして倒す。
「え・・・!」
 そうやく言葉が出たそうだ。
「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー――!」
人生で一番の声を出したかもしれない。もちろん、彼は情報を完全に理解できているかもしれない。
「言って大丈夫なのですが、まだ早いかと思われますが。」


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