結婚していた話
結婚はゴールではない。
リア充は総じて死滅しろと本心から思っている俺が、結婚をしていた話を語ろうか。
特に笑い所もなく長いので誰かの暇つぶしになれば嬉しい。
出会い
地元の飲み屋街では母はそこそこ有名で、スナックを経営を始める前から夜の街で仕事をしていたそうだ。
その息子ということで、街の店長達や夜のお姉様方はとても可愛がってくれた。
夜の街での飲み方や遊び方を教えてくれたし、今でも飲み出る時は教えを守るようにしている。
20代も折り返しの頃。ネトゲにハマって少しご無沙汰気味になっているいつもの飲み屋街。
馴染みのキャバクラの馴染みの客引きから、新人の子が少し前に入ったから練習相手になってやってくれと頼まれた。
そういう事は昔から度々あることだったので快諾し、通されたテーブルで出会ったのが彼女だった。
恋愛
容姿はそこそこ整っていたし小柄で貧乳(大事)、県外から転勤で富山に来て、昼も夜も仕事を頑張っている彼女に魅力を感じたのか自然と付き合うことになった。
付き合う前に大恋愛みたいな駆け引きやドキドキなんか特になかったし、付き合ってからも予定がなければ迎えに行って適当に出かける。そんな熟年カップルみたいな関係だった。
彼女と一緒にいるのは可もなく不可もなくな感じ。楽しいと言えば楽しかったし、これぐらいの年齢なら当然誰かしらと結婚するんだろうと思っていた。
どんなプロポーズがどちらからあったのか微塵も覚えてないけど、結婚することを決めた。
結婚
彼女の両親にも挨拶に行き、義父の趣味である釣りをしながら結婚の報告をした。
お互い、結婚式に羨望や憧れもなかったので、式の二次会のような身内のパーティを報告会とさせて貰った。
県外育ちの嫁の友人は来なかったが、俺の地元の友人や学生時代からのネットの友人数名は来てくれたので参加者無しみたいな事にならなかったのは嬉しい限りだった。
2人で賃貸を借りることも考えたが、出費が勿体ないと言ってくれたのと、俺の職場が実家から車で5分だったのでそのまま実家で暮らすことになった。
予感
諸々を済ませ、入籍から3日が経った。
嫁が友達とカラオケに行く約束をしているから車で送って欲しいと言ってきた。特に束縛もするつもりもないので二つ返事で送ってあげた。
待ち合わせの時間まで少しあるとのことでカラオケ屋の隣のコンビニに嫁を降ろす。
走り出してから小腹が空いたことに気付いたが、嫁を降ろしたコンビニに戻るのは監視しているみたいでバツが悪い。
ちょうど斜め向かいにある別のコンビニに車を停めて社内で軽食を食べていた。
向こう側で嫁がコンビニから出てくるのが見える。
嫁はこちらに気付かないまま、見知らぬ車の乗り込んだ。
カラオケは隣にあるに車に乗るの?他の友だちを車内で待つのかな?パンを噛りながら考えていた時。
車が動き出した。
この時ばかりは虫の知らせなのか妙な胸騒ぎを感じた。
妙な不安を覚えながら、俺も車を動かした。
失望
不安は最悪の形で的中し、嫁の乗った車はラブホテルの中へ入っていった。
今なら見なかったことにできる、、、そうも考えたが、既に入室済みで中に誰も乗っていない相手の車の前に駐車し、とりあえず逃走を防いでおいた。
2時間だったか、3時間だったか・・・
車に戻ってきた嫁達の顔は思い出すこともできない。
「俺はどうでもいいんで、彼女は殴らんで下さい!」
相手の男にそう言われたのだけははっきり覚えてるから、俺はきっとそんな顔をしていたんだろう。
入籍して3日。俺の嫁は不倫をした。
嫁を車に乗せ、とりあえず家に帰ってから話し合うことにした。
報復とかは一切考えなかったので男はその場で置き去りにしておいた。
余罪
嫁は素直に話してくれた。
相手の男性とは前から知り合いだったこと。
度々関係を持っていたこと。
それどころか、俺と暮らす前は一緒に住んでいたこと。
他にも、ホストなどに借金がいくつかあることも話してくれた。
そう言えば嫁の住まいには行ったことなかった。
言われてから気付く俺はアホなのか。
なんとか自分の中で許す余地を探したが、流石に無理だった。
その場で嫁には離婚を言い渡した。
流石に入籍3日はスピード離婚すぎる。ましてやここは富山県。
世間体が大事など田舎である。
一度は結婚したのだからそのまま放り出すのも忍びない。
嫁の数百万の借金は俺が代わりに支払い、3年後に離婚する。
それまでに自力で生活できるようになってもらうことにした。
出産
恋愛対象としては絶望的な離婚予定の嫁だが、友人としては悪い相手とは思っていなかった。
時間があれば決して美味くはない飯も作ってくれるし、飲み会の日は気軽に迎えを頼める。俺にとって男癖の悪さは友人関係にはどうでもいい話なのだ。
ただ、妊娠したと聞いた時は流石に驚いた。
前述のホテルの件以来、嫁とは体の関係はなかったので明らかに俺の子ではない。
しかし、入籍中の出産となると認知せざるを得ないのだ。
随分と悩んだが、生まれてくる子には何の罪もない。
血筋が大事かと言われればそんなに重要でもないと思えたので、そのまま我が子と思い接した。
生まれた子には、いつか離れても俺のことを探せるようにと人名には珍しいであろう虎の一文字を俺から取った。
離婚
3年が経ち、約束通り離婚が成立した。
嫁は元嫁となった。
この3年間はネットの仲間たちとも連絡を断ったりして意地の乗り越えた3年間だった。
離婚したことを報告した時、驚きながらも笑ってくれた事が何より嬉しかった。
元嫁は社会復帰とはまだ言い難く、パートの仕事を転々としながら生活していた。
そんな時期に育児まで押し付けては人でなしと呼ばれてしまう。
幸い、俺は実家暮らしで家族の助力を得ることもできる。
親権は一旦俺が預かることにして、元嫁には生活基盤を整えて貰うことにした。
令和
それから数年経った。
その間に仕事を独立して泥水を啜る生活をしたり、新しい彼女と同棲して人生最大の呪いを受けたり、東京に引っ越して来て今の環境を得たりと色々あった。
東京に引っ越して来る時に息子は元嫁に預けていたし、市政から貰える補助金は全て元嫁に丸々渡していた。
時々様子を伺う限りは生活も問題なさそうに思えた。
そして、ついに。
家庭裁判所から調停の通知が届いた。
もちろん事前に元嫁とは相談済みだったので何事もなく親権の譲渡は完了した。
「俺は・・・やり終えたのだろうか・・・」
CLANNADの岡崎父のセリフを思わず思い出した。
結婚は決してゴールではない。
他人同士だった人間が家族として関わって行くのだ。
そりゃ簡単なわけがない。
俺の場合は特殊だとしても、どんな人も難しいことばかり起こると思う。
どうか人生最大の苦難を共に乗り越えられる相手と添い遂げられますように。
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