昔、大阪に行った話
我々のようなネトゲプレイヤーにとって女性の存在は貴重だ。
昨今、女性が増えてきたと言ってもその価値観は変わらない。
存在価値が高いとされる女性プレイヤーの中でも女子高生ブランド（JKブランド）はやはり特別で、JKと通話をしながらゲームができるというのは一つの憧れの生活スタイルですらある。
これは俺がFINAL FANTASY XIVで出会ったJKとの思い出の話。
しらき
FF14は女性プレイヤーが多く、女性が1人もいないコミュニティを探す方が難しい程かもしれない。
RPGだからなのか、FF14は高難易度のコンテンツにも女性は多い。
つまりは普通に遊んでいれば女の子と知り合えるゲームと言って過言ではない。
その中の1人、エンドコンテンツで遊んでいる時にたまたま知り合って仲良くなったのが「しらき」だ。
しらきは女性が多いFF14の中でも特別珍しい女子高生だった。
萌え声貧乳美少女JKとイチャイチャするためにFF14を始めた俺はしらきと知り合った時、本当におるんやなぁ・・・美少女かは知らんけど。と感動すら覚えた。
俗に言う相方みたいな関係ではなかったが、暇があればVCで話していた。
8人で挑む零式と呼ばれるエンドコンテンツの固定パーティは別々だったが、しらきの入っているパーティは全員俺の知り合いだったので攻略中の期間であっても練習が終わったら毎日通話するぐらい仲が良かった。
ある日、しらきが住んでいる大阪の話になり、俺が海遊館に行ったことがないという会話から大阪で一緒に遊ぶ約束をした。
計画
俺はネトゲが趣味の引きこもり陰キャだが、誰かに会いに行くのは大好きだ。
過去に手痛い経験をしていても色んな人に会いに行ってしまうのは、そういう性分なのだろう。
しらきに会いに行くのもトントン拍子で話が進んだ。
エオカフェで昼食を取って海遊館に行く。夕食の予約も取ったし次の日も時間があればUSJに行くのもいいかもなんて話していた。
翌日も会う話をしていればもしかしたら何かあるかもしれん。
そんなつもりは無くても、うっかりそうなってしまう可能性はゼロではないよな？
だって俺が貧乳好きだって話をしたら私の胸は小さいよと言わんばかりに制服姿の写真を送って来るんだぞ？
少しぐらい期待してしまってもいいじゃねぇか。
幾度と失敗を重ねても淡い期待をしてしまう。
男というのはそういう生き物なのだ。
タレコミ
しらきと会う日の前日。
共通のフレンドからタレコミがあった。
しらきに新しい彼氏ができたというのだ。
はて？俺は付き合ってはいないぞ。
なんだぁ？会う前からもうそんなつもりでいるのか？
気の早いやつだなー俺にも選ぶ権利ってもんがあるんだからよぉ
そうも思ったがそうではないらしい。
内緒にして欲しいと言われたらしいが裏でこっそりと教えてくれたらしい。
恋愛関係でも相方関係でもない相手に新しく彼氏ができた事を内緒にする理由を考える。
理由その1 二股狙い
いや、万が一に実際会って俺がメロメロになったと仮定したとしても、俺がTwitterで何も言わないってことは有り得ない。俺は根が正直なのだから。
そうなると彼氏にもバレる可能性が高いわけだからそれは違う。
理由その2 キープ狙い
ネットリテラシーの高い俺は決して顔出しをしない。
顔を見るには実際に会うしかない。
直接会うまでキープしておきたいというのはどうだろうか。
彼氏いた時から仲は良かったのだから新しい彼氏ができた途端に何か変わるという事もないだろう。可能性は低いか。
理由その3 タダ飯狙い
真の男女平等主義者である俺は異性と食事に行っても割り勘を主張する。
かなり好感を持っていないと多めに出す事すらしないのはしらきにも話したことがあったはずだ。
口説くつもりがあれば奢るだろうが彼氏がいる相手には可能性が低いと思われた。USJに行く話もしていた訳だしこれは可能性が高そうだ。
まぁ流石に学生に金出せと言うつもりも最初からなかったが、最初からそのつもりで来る相手となるとこちらの心構えも変わってくると言うもの。
普通に楽しく遊ぶつもりならそれはそれで満足なのだし、明日会ってから考えよう。
そうして翌日、俺は大阪へ向かう。
大阪
待ち合わせの時間に余裕を持って到着し、迷路と名高い梅田駅を彷徨い歩く。
Twitterを見るとイケメンすぎて幸せだとか旅行のしおりを作りたいのに時間がないとか浮かれた口調がツイートされている。
こいつ、黙ってるつもりはあるのか？
今から会う女の子の脳内お花畑なツイートを見て複雑な気持ちになる。
先に着いていると連絡を送っているが、約束の時間になっても返信が返ってこない。
多少の遅刻で腹を立てるほど狭量ではないつもりだが、タレコミ情報とTwitterの雰囲気からドタキャンの可能性を感じていた。
とりあえず近場の喫煙所を探す。
しらきが来なかったら何処に行こうかと近場の観光地を検索しながらタバコを楽しむ。
20分ほど待ってから着いた。とDiscordの通知が鳴る。
観光はまた今度になったようだ。
しらきを迎えに行く。
皆様は喜多川歌麿の絵を見たことがあるだろうか。
江戸時代の浮世絵師で女性の絵を多く残している人なのだが、俺には全く顔の区別がつかない。
知らない人がいたら検索してみて欲しい。
本当に区別がつかない。
この女性は何なんだと長年疑問に思っていたが、実在のモデルがいたのなら納得できる。
ブサイクとは言わないけれど可愛くはない。
うん。可愛くは・・・ないかなぁ。
ちょっとビードロを吹いてくれませんか？とお願いしたい気持ちをそっと胸に秘めてエオカフェへ向かう。
エオカフェ
しらきとはVCで毎日のように会話をしていたからリアルで会っても変わりないと思っていた。
今まで会ったことのある女性たちとも多少の緊張はあったとしても気まずいと思ったことは1度もない。
だがこの時は違った。
俺も食事中は言葉数が多い方ではないが会話のキャッチボールぐらいはできる。
お喋りなはずのしらきは無言を貫いていて、話しかけても返事は俺の耳に届かない程に小さい。
それが緊張しているとかの理由であれば楽しめるように頑張ろうとも思えたが、そのしらきはどうやら自宅にでも表情筋を忘れてきてしまったように見えた。
無表情に無言。
これはちょっと緊張とかとは違うなとわかる。
誰が見てもつまらなさそうと思うだろう態度には俺も為す術がない。
多分、会ってみたはいいけど俺が全然好みじゃなかったとかなのだろう。
早く帰りたくてわざとそんな感じにやっているんだろうと思った。
出会い系で始めて会った相手ならいざ知らず、何ヶ月も一緒に遊んできた相手にされるのはちょっとショックだったな。
このまま解散となれば今後も気まずくなって連絡を取りづらくなりそうだ。
しかし、相手は有名な浮世絵のモデルさんだ。
今後も含めてこれ以上お時間を頂戴するのは失礼かもしれない。
会計を済ませ、エレベーターの中で今日はこれで解散しようと伝えた。
色々約束したけど旅のしおり作らないとなんだろ？忙しそうだから辞めておこうぜ！と畳み掛けた。
何より、今日しらきに会うことは仲間たちに伝えていたから早く帰りの電車に乗っている報告をしたかった。
自らの潔白を証明しなければならなかった。
近場の観光地を巡ることもなく、大急ぎで特急電車を手配した。
駅のホームから通話をかけることで完璧なアリバイを証明したのである。
後日談
俺は正直者なのでしらきと飯行って、その後水族館とか約束してたけど飯だけで解散したとみんなに話した。
しらきから「そんな言い方したらそういう事だろうがよ！」とお怒りの連絡を貰ったがどういう事だったのだろうか。
しらきは固定パーティの方でも揉めたらしく、程なく彼女は我々のコミュニティから消えたいった。
もしかしたら俺が仲良かったから大阪の件があるまで我慢してくれていたのかもしれない。俺は良い友人を持ったな。
しらきは今では名前を変え配信者として活動している。
VCRでも名前を見たことがあるから頑張っているんだと思う。
顔出しもしているので喜多川歌麿じゃん！と思うことがあれば応援してあげて欲しい。
俺は好みを聞かれれば「萌え声貧乳美少女JK」と答えていたが、この件以来「萌え声貧乳美少女」と答えるようにしている。
JKブランドは確かに希少価値の高いが、誰でもいいってものではないということを学んだ。
ブレザーは確かに最強に可愛い。
最強に可愛いがそれはJKが最強に可愛いというわけでは決してない。
そう、俺はただ、可愛い子に制服を着て貰いたかったのだ。
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