『日本人の叡智』(磯田道史:著)

 毎回、期待を裏切らない本。それは多くないけど、磯田さんの本は毎回眼から鱗だ。
 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉がある。まぁ、この言葉は省略されてる部分があると思う。補足すれば「愚者は経験だけに学び、賢者は歴史にも学ぶ」という意味だと僕は思っている。
 人は普通に生きていれば、経験できる量も限られている。例えば、会社員をしてる人は、戦場の出来事を経験することはない。日本であれば尚更だ。
 だからこそ、歴史に学ぶこと本を読み、擬似体験をするのは大切なことだ。そのことを毎回改めて感じさせてくれるのが、磯田さんだ。シミュレーション番組「英雄たちの選択」でも、彼の凝縮された教養が魅力だ。
 人は生きてると同じ轍を踏む失敗もする。それをできるだけ減らす術の1つが読書だろうか。歴史に学び、考えることは有益だ。
 今回は面白い発見もあった。
 僕は人生は日本刀だと考えている。就職活動で苦しく、生きることの意義を見出そうとして捻り出した考えだった。が、僕よりも遥か先に同じ考えをしていた人がいた。それが森村市左衛門だった。
 武具屋の生まれだった彼は名刀のような人になりたかった。だから、困難は自分を成長させるものと思うことだ、と語った。偶然の一致だったが、なるほど昔の偉人が言うなら間違い無いと自信がつくような不思議な心地だった。
 あらためて確信めいたような、僕の人生の哲学になる気がする。
 彼はまた、金があるかどうかではなく、良心と照らしてやましいことがない人生が素晴らしいと言う。僕もそう考えなければ、と思う。目先のことばかり考えるのではなく、人生を終える時に名刀に値する人物でありたい。
 そのほかにもさまざまな素晴らしい先人の言葉がこの本にある。悩む時には振り返って読みたい。そう思う一冊だった。
 いつか磯田さんに会って、話してみたい。

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