見出し画像

【著作権フリーのコント】ご自由にお使いください。その30「一杯のかけそば」

《著作権フリーの扱い》
クリエイティブ・コモンズのBY・NCです。
使用する条件として、
・使用の場合の許可は不要。
・ネタの改変(アレンジ)を行う時のみ、info@funbest.jpまで連絡またはネタ元の表記をする
・商用利用不可
上記を守っていただければ、先生がやっても子どもがやっても、芸人がやっても、一般の方がやっても構いません。どうぞご自由にお使いください。
------------------

コント「一杯のかけそば」

野村:そば屋の店主(それらしい格好で)
矢島:子ども2人連れの貧乏な父親

野村:(客を見送る)ありがとうございました!(時計を見て)…そろそろ閉店か…
(野村、のれんを店の中に入れようとする)
矢島:あの…まだ、空いてますか?
野村:すいません、もう店じまいなんですよ…。
矢島:そこを何とかお願いできませんか?子ども2人いて、まだ夕飯を食べさせてないんです。
野村:ああ…そうですか…。そういうことなら、どうぞ。
矢島:いいですか?ありがとうございます!(子ども2人に話しかける)良かったなぁ!
野村:空いてる席に座ってください。
矢島:(店に入る)ようやく、暖かいところに入れたな…。今日は外も冷えるから。
野村:こちらがメニューになりますんで…。
矢島:(メニューを見て、財布の中身を確認しながら)足りないなぁ…。
野村:…え?
矢島:すいません…お金がなくて、子どもと3人で、一杯のかけそばを分けて食べてもいいですか?
野村:…一杯のかけそばを?
矢島:(子ども2人に)ごめんなぁ…父ちゃんが…お金がないばっかりに…。お願いします。
野村:…申し訳ありませんが…それはできません。ウチは…100年続く老舗のそば屋で、かけそば一杯にしたって、決して妥協はありません。
矢島:知ってますよ。近所でも美味しいと評判のおそば屋さんですから。だからこそ、子どもたちにも食わしてやりたいんです。
野村:お気持ちは大変にありがたいんですが…。
矢島:(ため息をつく)お店の決まりがあるっていうんなら仕方がないですね…。
野村:いえ、そういうわけではなくて…。
矢島:だったらなぜダメなんです!?こうやって…子どもたちが腹を空かせてるんです…。お願いします!一杯1500円のかけそばを作ってください!
野村:そこなんですよ!!ウチ、そば屋の中でも高級な店なんで!
矢島:…え?そうなんですか?
野村:分かるだろメニュー見て!なんか桁1個多いなぁ…って、ならなかったんですか!?
矢島:はぁ…。
野村:あのね?こういうのは…食う店によるのよ!うちでそれやっても…感動がないのよ!
矢島:…感動?
野村:ウチみたいな、割と高い金取ってるそば屋でやっても、ただ、お金ない人が背伸びして高いもん食いに来た感じになっちゃうの!
矢島:何ちゅう言い方するんですか!貧乏な私たちが悪い言い方じゃないですか!
野村:誰も悪くないですよ!?ただ、こうなってくると、1杯1500円で出してるこっちが悪いとさえ思えて来てますけど。
矢島:私だってね…お金がなくても、子どもに何か食わせてあげなきゃって思ってるんですよ。
野村:だから言ってるんです!1500円が払えるんなら、他のところだったら、3人でそこそこいいの食えるんですよ!
矢島:そりゃあ…あなたにしたら、たかが一杯のかけそばでしょうけどね…貧乏で男手一人、2人の子どもを育てる私たち家族にしてみれば…最高のご馳走なんですよ。
野村:ご馳走すぎるんです!ウチの店のかけそばを基準にしないでください!
矢島:私たちは…一杯のかけそばも、ろくに食えないっていうんですか…。
野村:富士そば行けって!あそこなら5杯食えるんですよ!1500円もあれば!
矢島:ん?何だ、どうしたタカシ…。イタリアンが食いたいのか?でもなぁ…父さん、お金持ってないから…ごめんなぁ。
野村:サイゼリヤ行けって!ドリア5杯食えるんですよ!1500円もあれば!
矢島:どうしたツヨシ…。そうか…お前は、同じクラスの好きな子に、告白ができないんだな。
野村:何の話だよ!食べ物どこいったんですか?
矢島:でもなぁ…父さん、お金持ってないから…。
野村:関係ないよ!持ってたとしても、どうにもならないだろ!
矢島:いやいや…私が大金持ちだったら!?ツヨシも自信もって、家に呼べたり、デートに誘えたりするでしょうよ!?あなたが言いたいのは、そういう事でしょ!?
野村:全然違いますけど!?貧乏を突き抜けて卑屈になりすぎてません!?
矢島:私たちは…一杯のかけそばしか食べれないほどの貧乏ですからね!
野村:ウチだけで見たらね!?別の店なら、そこそこ食えるんだって!
矢島:とにかく…ここのお店は、客を差別する最低な店だと、ぐるなびに星1つで報告しておきます。
野村:ちょっと待ってくださいよ!意外とそういう事する人なんすね!?
矢島:ほら、タカシ・ツヨシ、帰るよ、タカシ・ツヨシ!
野村:漫才師みたく呼ぶな!分かりましたよ!作ればいいんでしょ?後悔しないですね?
矢島:後悔しない!
野村:他の店ならもっと食えたなぁって思わないですね!?
矢島:思わない!ここがいい!
野村:本当にいいんですね!?
矢島:(食い気味に)いいんです!!
野村:なんで川平慈英なんだよ!…分かりました。今回だけ1杯分の値段で3杯作らせてもらいます。
矢島:…え!?
野村:お客さんも、せっかくウチの店を選んで来てくれたわけですし。子どもたちにも、お腹いっぱい食べてもらいたいですから。
矢島:…ご主人!ありがとうございます!良かったなぁ、2人とも!
野村:そうと決まれば、早速作ってきますね!あ…お冷や、お持ちしましょう!(水を持ってくる)
矢島:(子どもに話しかける)いやぁ…でも、本当にギリギリだったよ。父さん、手持ちで1600円しか持ってなかったから。1500円でほんとによかったよ。
野村:あ…これ税別の価格表示なんで、ほんとは1650円なんですよ…。
矢島:えええ!?じゃあ…足りないじゃないですか!…あの、50円分そば少なくできます?
野村:(複雑な表情で)…もうお代は結構です!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?