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日常に使える笑いの技術【第3回】ツッコミ(基礎編)ツッコミの役割を理解する

ツッコミの役割は「フォロー」にあり
ツッコミは、笑いの仕組みの中で最後を担う部分です。フリ(導入)から展開されたボケの「ズレ」に対し、適切な対処をすることが主な役割です。ここで「適切な対処」と書いたのには理由があります。それは、ツッコミとは「言葉巧みにボケの間違いを指摘するもの」である、と誤解されていることが多いからです。
つまり、「それは○○だろ!」や「○○が△△なら××になっちゃうだろ!」のように、ボケの間違っているところが明確に説明できて、初めてツッコミが成立すると考えている人が多いのです。
しかし、実際は違います。ツッコミの役割は、ボケが言ったことを「ここが面白いんですよ」ということを第三者に伝えるためにあります。ボケが持っている笑わせポイントを示すことができれば、それが説明でなくてもよいのです。
日本を代表するコメディアン、萩本欽一さんはツッコミを「フォロー」という言葉に言い換えています。私もこの言葉のほうがストンときます。ここでいう「フォロー」は、ボケの笑いを増幅するリアクションという意味です。
したがって、「おい!」や「なんでだよ!」でもボケの笑いどころは十分に説明できますし、ボケに対して大きく「えー!」とリアクションを取ったり、大笑いしたりすることで笑いどころを示すことができます。これこそがボケへの「フォロー」になるわけです。
それを証拠に、我々は一人芝居や漫談を見るとき、「そんなわけねぇだろ!」「なんでそうなるんだよ!」「いや、確かにそういうことあるけど!」と心の中でツッコんで笑っています。その笑い声こそが、一人芝居や漫談におけるツッコミの代わりになるのです。
以上のことから、ツッコミの役割は、ボケが持っている面白さをそのまま、またはそれ以上に増幅させるための「フォロー」であり、いわゆる間違いの指摘を伴うツッコミは、「高度なフォロー」であるといえます。

まずはリアクションをしっかり取ろう
ツッコミの役割を理解したところで、まずはボケをフォローできる人を目指していきましょう。フォローは前述のとおり、ボケの笑い強度を増幅させるためのリアクションのことです。主なフォローは以下の2つです。
①相手のボケに対して笑う
すべてのボケに大笑いをする必要はありませんが、しっかりと笑って反応してあげることが、ボケた相手を安心させ、その場も笑いやすい雰囲気になります。
②相手のボケに対して驚く
≪例≫
A「今年のクールビズは、パンツ一丁でいいらしいよ」
B「マジで!?」
※上記に対応するその他のツッコミ
「そんなわけねぇだろ!」(否定する)
「ウソつけ!」(ウソを指摘する)
「いや、そんなことしたら捕まるわ!」
(ボケの間違いを具体的に指摘する)
ただAの言っていることに驚いただけですが、それだけで十分Aがボケたことが伝わるはずです。その他対応するツッコミも書いておきましたので、ご参照ください。

ボケがされて嬉しいツッコミのポイント
ボケにとって一番の喜びは、ツッコミの人がボケの笑いどころを汲み取って、それを的確に射抜いてくれたときです。「そう!自分はそれをボケで伝えたかった!よくぞ分かってくれた!」となるようなツッコミをしてあげることができれば、あなたもツッコミマスターといえるでしょう。そのポイントは、次の3点にあります。
①間違っているところを拾ってあげる
≪例≫
A「今日の昼食はそばにするか。そば粉買ってきて!」
B「いや1から作る気かい!」(ボケ指摘型)
※上記に対応するその他のツッコミ
「昼休みの時間足りないでしょ!」(状況説明型)
「会社の中でそば屋を開く気かよ!」(乗っかり型)
ボケの笑いどころ、つまり常識とはズレている(間違っている)箇所をどのように説明するかがポイントになります。上記では、ボケの意味を説明する「ボケ指摘型」、ボケの状況で起こり得る問題を指摘する「状況説明型」、ボケに乗っかってイメージを発展させる「乗っかり型」の3つのツッコミを紹介しています。
②ボケていることを認めてあげる
≪例≫
A「ちょっと昼寝するんで、会議室の鍵借りていい?」
B「そんな目的で会議室使うなよ!」
A「(ニヤニヤしている)」
B「いや嬉しそうだな!『ボケがうまく伝わったー』じゃないんだよ!」
相手がツッコまれたことを嬉しそうにしていたら、それも拾ってあげるといいでしょう。高度なテクニックですが、相手がボケたことを明確にすることで、「この人は冗談で言っているのであって、本気じゃないんですよ」というのを周囲に伝える効果がさらに上がります。
ボケを本気に受け取られて、周囲からひんしゅくを買われるのも可哀想ですからね。ここは愛をもってボケを受け止めてあげましょう。
③ボケていることをホメてあげる
≪例≫
A「あぁ、家から会社までつながるトンネルがあればいいのになぁ」
B「いや何だよそれ!面白い発想だな!」
ツッコミの口調で、相手のボケをホメてあげましょう。これをお笑いの世界では「ホメツッコミ」といいます。ツッコミは言い方によって相手を貶めてしまう場合がありますが、ホメツッコミならその心配がありません。

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