【著作権フリーのコント】ご自由にお使いください。その22「お隣さん」

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コント「お隣さん」

（矢島１人板付き）

矢島：（インターホンを押す）

野村：はーい。（インターホンの覗き穴から確認する）

矢島：（覗き穴に顔を近づける）

野村：（びっくりしながら）…え？…誰？（ドアを開ける）…あ、こんにちは。

矢島：すいません、お休みのところ。このアパートに先月引っ越してきた、202 号室の矢島です。

野村：202…てことは、お隣さんですか？

矢島：あ…乙成ではなく、矢島…。

野村：あ、いや、そういうことじゃなくて…。隣に住んでいる方ですか？ってことです。

矢島：あーーー！はい、そうです、矢島に住んでいるお隣です。

野村：逆だと思いますよ？お隣に住んでいる矢島さんですか？

矢島：そうですそうです。

野村：あの…何か御用ですか？

矢島：あ…いや、こういうのちょっと恥ずかしいんですけど…お借りしたいものがありまして…。

野村：借りたいもの？

矢島：ほら、昔は向う三軒両隣っていうんですか？ご近所でその…貸し借りがあったみたいな。

野村：あー、よく聞きますね。醤油とか、お米とか。

矢島：味噌とか、塩とか。あとは…昔って、何借りてましたかね？

野村：いや知らないです。そこまで膨らませる話題でもないと思うんで…。え、今、2020 年ですよね？

矢島：日本はそうみたいですね。

野村：いや、世界もそうなんですけど。2020 年にやります、それ！？

矢島：すいません…。

野村：え、戦後からタイムスリップしたわけじゃないですよね？

矢島：違います違います！戦後から来た人が、こんな流暢に日本語しゃべれます？

野村：どういうことですか？戦後の人も普通に日本語はいけるでしょ？

矢島：ああ、そっか…。

野村：…え、そんなに生活がその…困ってるんですか？

矢島：いや、ちょっと使いすぎちゃいまして…。

野村：それは…お金を？

矢島：…パケットを。

野村：パケット？？パケット！？え、もしかして、Wi-Fi 借りにきたんですか！？

矢島：はい…。

野村：そこ 2020 年できます！？

矢島：そんなに驚きますか？

野村：そりゃ驚きますよ！昭和の頼み方で、令和のもの頼まれてんだから！

矢島：僕はその間で平静を保ってます。

野村：うまいこと言わなくていいですよ！え、矢島さん、今、通信制限がかかっちゃったんですか？

矢島：はい…。うっかり Wi-Fi が切れてて、４G のままスマホをいじり続けてたみたいで…。

野村：まぁ、よくあることですけどね。

矢島：早速ですけど、ID とパスワードを…。

野村：いやいや、待ってくださいよ！ちょっと考えさせてくださいよ！

矢島：何でですか？

野村：お隣さんとはいえ初対面ですし！そんなすぐ「うん」とは言えませんよ。

矢島：じゃあ「はい」なら言えるんじゃないですか？

野村：屁理屈じゃないすか！別に僕「うん」が言えない病気とかじゃないんですよ。

矢島：お願いしますよ！減るもんじゃないんですから。…あ、でも無制限プランだから減るもんじゃないは成立するけど、制限付きのプランだったら減るな。まぁでも、別に Wi-Fi は目に見える物じゃないから、実質減ったとはいえない…。

野村：ゴチャゴチャうるせぇなぁ！ずっと何言ってんですかアンタ！アタマ飛んでんじゃないすか？

矢島：…Wi-Fi だけに？

野村：うるせぇよ！もう帰ってくださいよ！（玄関を閉めようとする）

矢島：ちょ、待ってください！分け前を差し上げますから！

野村：分け前？何ですかそれ？

矢島：いや、実は僕、デイトレーダーでして、大事な取引中に急に制限かかっちゃんです。

野村：本当に！？

矢島：だから、なるべく早く貸してほしくて。

野村：いやいやいやいや、信じられないなぁ。

矢島：今売っとかないと、10 万の株が 3 億で戻ってこないんですよ…。

野村：貸す貸す貸す貸す！早く言ってくださいよ、そういうのは！

矢島：いいんですか？

野村：当り前ですよ！人を一番早く説得できるのは金だから！株の動きより人の心を読みなさいよ！

矢島：ありがとうございます…。

野村：これ、パスワードね！早く持ち場に戻って！ハウス！ハウス！

（矢島ハケる）

野村：…あ、分け前いくらなのか聞いてなかった！（玄関を出て隣のインターホンを押す）

（玄関から矢島が出てくる）…あ、どうでした？

矢島：…飛びました。

野村：それって…Wi-Fi がですか？