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「1回観てつまんなかったら2度目はない」は正しいか?

オシエルズの矢島です。
僕の地元には2012年、スカイツリーという大きな街のシンボルができました。その道路沿いにあった「ラーメン大」(今はもうありません)という、ラーメン二郎のインスパイア系のお店によく行ってました。

元々濃くてパンチの利いたラーメンが好きで、二郎もよく通ってました(新宿ハイジアの近くにある二郎は特に)。ラーメン大も堀切や汐留(日テレのそばにありました、今もあるかな?)にあるのは知ってて、それが墨田にできた時は喜びました。

そのラーメン大っていうお店はとても強気でして、壁に「当店の本当のよさを知るために、最低3回は食べてください」という文言が書かれた紙を貼ってたんです。

もしかしたら、僕が行ってた店だけが貼ってたのか、どの店にも貼ってあったのか分かりませんが、かなりインパクトあったんでずっと覚えてました。

これ、お笑いの世界に置き換えたら、「僕らの本当の面白さが分かるまで、最低3回はライブでネタ見てください」ってことになると思うんですけど、それを誰かに言われたとして、皆さんだったら行きます?笑

そりゃあ1回目行って面白かったら、2回目も行ってやるかってなると思うんですけど、1回目でしっくり来なかったら、もう行かなくないですか?お笑いの世界はシビアで、「1回目でつまんなかったら、次のライブにその客は来ない」という考え方が一般的だと思って生きてきたので、「いやいや、3回てw」って思いましたよね、最初に見た時は。

でも、よくよく考えると、やっぱ3回見なきゃ分かんないよなって思うようになりまして。というのも、たまたま1回目、ラーメン大に行った日が風邪気味で、鼻が詰まってて味があんま分かんなかったんだとしたら、それってこちらに落ち度があるってことじゃないですか。

似たようなエピソードが僕にもあって、僕は元々鳥貴族が好きではなくて、それは24歳ぐらいの時に行った鳥貴族の食べ物が美味しくなかったんですよね。

でも後々、その時たまたま直前にメシを食っていて、その中で断れない感じの飲みの誘いだった(本当は全然行きたくなかった)ので、仕方なく鳥貴族に行ったから美味しくなかったんだってことに気づいたんです。

緊張やイライラを伴うメシは味すら感じないと言いますし、ましてやメシの直後でしたから、僕にとっての最初の鳥貴族は、最低のコンディションで臨んだばっかりにネガティブなイメージがついたワケです。

しかし、まぁ、その数年後に行った鳥貴族の美味かったこと!気の知れた芸人で行った打ち上げで、腹もペコペコの状態でしたから、もうヨダレどり、貴族焼のタレ/塩、フライドポテトについてるバターみたいなタレまで、全部が美味かったんですよね。…あ、いや、もちろんそこまで好条件じゃなくても美味いですけどね!

まぁ、何が言いたいかというと、実は物事の評価には、評価を受ける対象とは別の様々な外的要因が重なって、その影響により対象へのネガティブな評価へと繋がってしまうことがあるってことなんですよね。

分かりやすく言うと、客が重たい舞台では、出演者全体が割を食って、つまらない評価に下方修正されがちってことです。

ここだけの話、様々なテレビの賞レースで決勝まで行く方々たちが、自分たちのネタ調整のために地下ライブに出てくれたりしますけど、重たい空気のせいで笑いもあんまり起きなかったりして、「これ調整になるんか?」って思うこともしばしばです。だけど、そういう場でも調整できる人は、ちゃんと決勝に行っちゃうんだからすごいですよねぇ…。

少々話がずれましたが、ラーメン大の強気な張り紙は、僕なりの解釈で言い換えると「色んな状況や気分によって評価が変わってしまうから、自分なりに何回か来て統計とって!それでも面白くなかったら来なくていいから!」ってことになるんですが、どうでしょう?長くなって逆に分かりづらくなりました?笑。

これはパフォーマー全体に言えることかもしれませんが、誰もが一発の舞台に懸けてはいます。でも、その一発が必ず上手くいくとは限りません。あまりに意気込んでも空回りしてしまうし、舞台はやっぱりナマモノです。そういう意味じゃ、甘えということではなく、やっぱり3回は見に来て欲しいなぁ…って思ってしまいますよね、僕は。

上記は表現者としての願いですが、僕個人が何かや誰かを評価するときは、「最低3回は味わう余裕」をもって、色んな角度で見ることを心がけるようになりました。そういうお客さんって、批判ばっかりじゃなくて、良いところも見てくれる人だと思いますしね。

何でもすぐ観れるようになった時代で、退屈を待てない消費者に対して、パフォーマーは1発目で決められなかったら全部がつまんないという烙印を押されがちです。

だからこそ、僕らはそのプレッシャーに潰されることなく、待てるファンに対して全力でやるべきだし、観る側にも「3回味わう余裕」を持つべきだと僕は考えます。

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