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【マンガの研究】連載に向けて大事にしたい9つのこと。


Webで連載をやってみて気が付いたこと、第2弾です。

今回はこれから連載をする新人マンガ家仲間に少しでも参考になれば、と思って書き残しておきます。

ファンの方は舞台裏的な話なので、興味のない、あるいは見たくない方はそっと閉じてください…でも創作の考えまで読んでみたい、という方はがっつり書くので是非読んでください。

(ぶっちゃけ過ぎたので、何日かしたら有料記事にしたいと思います。今のうちに読んじゃってください!)

では早速始まります。


1.そのメディアでの「勝ち」は何かを把握しよう。


まず最初にしたいのは「そのメディアでの勝ち」が何かということを把握しよう!ということです。

僕の場合、次もLINEマンガでの連載予定なので、LINEマンガでは明確で「view数」と「課金数」です。

これが一定数に満たないと、連載が続けることができない。つまり、

たくさん読まれて続きが気になり、
先が読みたくて無料をまたずに
課金をしてまで読んでしまうこと。

当たり前と言えば当たり前ですが、これを満たすためにはメディアの特性についての理解が必要だと考えています。

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2.メディアの特性を理解しよう。

僕は今回コッぺくん、をLINEマンガという場で連載したのですが、皆さんはLINEマンガを読んだことがあるでしょうか?
読んだことない人はこちらから↓


ご覧いただくとわかる通り、上位にあるマンガのジャンルは

エロ・ホラー・恋愛・不倫・喧嘩・バトル・裏社会…etc

と、刺激の強いドーパミンがでる作品が多い印象です。

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なんか肌色、ピンク系が多い。

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端的にいうとLINEマンガで上位にいきやすいジャンルには

エロ・ホラー・恋愛・不倫・喧嘩・バトル・裏社会…etc

が多い、ということです。

なので、上位に食い込みたい場合、必然的にこれらの作品群と戦うことになります。では、LINEマンガで読まれるためにはドーパミンが出るマンガを描かないといけないのでしょうか?


3.場のもとめるものと、描きたいものとの交点を見つけよう。

そこに合わせてドーパミンが出る作品を描けばいい!ということではないと僕は思いました。(今書きながら)

このLINEマンガという場と、自分の描きたいものの交点を探すのが大事なのではないか、と思います。

つまり、場に合わせ過ぎてもいけないし、かといって自分が好き勝手に描いても読まれない。そのためには、この場で受け入れられそうな、かつ、自分でも描きたいと思えるものを見つけるのが大事な気がします。
では、それを見つけるためにはどうすればいいのでしょうか。


4.編集者とのコミュニケーション。

そのためには、自分が「こうしたい」という主観と世間とをフラットに見てくれる「編集者」さんとのコミュニケーションが不可欠だと思いました。

編集者さんが見てくれるのはマンガの内容そのものを面白くするということの他に、下記のようなことがあると思います。

・自分はこういう作家だ!と思ってるものと世間の認識のズレ。
・描きたいものと世間や時代の温度感のマッチ度。
・長い目で見てその作品が作家や周りの人が関わっていく価値のあるものかを客観的に見てもらうビジネス視点。

それらを、自分がこうしたい!ということを伝えながら照らし合わせて判断してもらい、
ファン(世間)と自分のしたいことの円の交点を見つけてもらう、見つける手伝いをしてもらう。

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そういったことが作家と編集さんが話し合う中できると理想なのではないかと思っています。

では、「自分がこうしたい」はどうやって見つけたらいいのでしょうか?


5.先行作品、参照するマンガ、映画、ドラマを見つけよう。

これはよく編集の佐渡島さんに言われることなのですが、
「完全なオリジナル作品というものはない。すべての創作は以前に作られたもののアップデートだ(意訳)」ということです。

どういうことかというと、様々なマンガにはすでに「ジャンル」というものがあって、そのジャンルを新しく作る、ということはほとんどないという解釈です。

既存のジャンルに当てはまらないものは大ヒットしづらい。
なぜなら「お客さんがどう受け取っていいかわからない」からです。
※もちろん、自分は大ヒットではなく、サブカルチャー誌で連載をもてれば満足である、というのも一つの価値観だと思いますが、ここでは「ヒットしたい」という前提で描いています。

「お、これは不良ものだな」と思えばろくでなしブルースや、クローズといった作品が過去にあり、その文脈でとらえられるわけです。

なので、どういう作品ジャンルかというのが、ぱっと見で「ああいうやつね」とわかるようにする、というのが大事だと僕は考えました。

そのためには自分の中で「これはろくでなしブルースの令和版だ!」

などと参照元、ジャンルのイメージを固めるのが大事だと思います。

さらに欲をいうと、そのジャンルの中でどんな話?と言えるのがより、ヒットにつながる作品ではないでしょうか?


6.ワンフレーズで「○○が××する話」と言えるか。

どんな話?というのは他人に説明するときに、その物語を一言で言えるかどう、それが面白く人に興味を抱かせるかということです。

大ヒットしている話のほとんどはこれが言える作品が多いのではないでしょか。

たとえば

「身体がゴムのように伸びる人間が海賊の頂点を目指す話。」

「頭脳が大人のまま子どもの体になってしまった少年が
殺人事件を解決する話。」

「壁に囲まれた世界で人食いの巨人と戦い自由を得る話。」

「幼い頃に宇宙飛行士になろうと約束した兄弟が、大人になって約束を果たすまでの話」

どれも好き嫌いはあるにせよ、人に「どういうこと?面白そう」という印象を抱かせる強さがあると思います。

なので、自分のマンガをみたときに「こういう話」と言えるように企画を練っていくと、より多くの人に届きやすいマンガになるのではないかと考えました。

さて、ジャンルと「こういう話」を決めたらそれにあった絵柄が必要である、と僕は考えます。


7.感じてほしい気持ちを伝えるのにふさわしい絵柄か。

ジャンルと描きたい話の中で「作者が読者に感じてほしい感情(気持ち)」があると思います。

たとえばドラゴンボールを読んでいて「あんなに殴られて、肋骨や内臓が心配だ」と思う人はあまりいませんね。ドラゴンボールでのバトルはそういうところを見てほしいマンガではない。

逆にスラムダンクであればひざや腰を痛めていたらそれが大変な問題である可能性がある、と思うわけです。

もし仮にドラえもんの話で、誰かが皮膚科にいってステロイドの薬をもらう、とかそういうことがあったらなんか「あれ?」ってなるわけです。ドラえもんはのび太のダメさと道具によって起きる事件の中でのび太の右往左往を楽しむ話であり、そこには皮膚がかゆい、とかそういう細かいことは余計なのですね。

なので、「自分がみてほしい、感じてほしい気持ちを伝えるのにふさわしい絵柄か」というのは大事な要素だと、思っています。

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さらにこの問題は作家性にもつながっていて、作家が「何をみせて何をみせないか」にもつながってくると思います。


8.どんな気持ちを届けたいか。

前の項でマンガの中で「何をみせて何をみせないか」が大事という話を書きましたがこれは作家の過ごし方にも関係があるな、と最近思います。どういうことかというと

「どんな作家になりたか」

ということです。これはつまり

「ファンや世間に対してどういう気持ちを届けたいか」

ということだと解釈しています。

これは僕自身が全然できてないことなので、具体的にいえないのですが、ダメな例でいうとたとえば
「中華料理屋なのに内装の壁にタイの寺院の写真が飾ってある」
みたいなことです。

本当に中華を味も雰囲気も含めて没頭してほしいと思えばタイの写真は飾らないはずです。すごく小さいことですし、味さえよければいい!という人もいると思うんですが、そういうことが「あれ?」という小さなノイズを生む。

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せっかく中華に没入しようとしてたお客さんを、醒める原因になってしまう。そういうことを、極力なくしていけたらいいな、と考えています。

9.コアなファンとの交流の場を作る。

では、最後にその届けたい相手とはだれなのかをどうやって知ればいいのか?マンガを読んでくれる人が何を考えて、何を感じたくて自分の物語を読んでくれるのか?

それを知り、知ってもらうために必要なのがファンコミュニティになるのだと考えています。

マンガを楽しむだけでもありがたいけれど、さらに作家自体を応援したい!と考えてくれる人。

ファンクラブと書かないのは読者の方が受け取るだけではなくて発信したりする、相互のコミュニケーションをイメージしているからです。

これは僕もこれからやることでまだ実感はないのだけど、

今のところ想定してるのはnoteの有料マガジンのような場所で、ファンの人に創作の過程や舞台裏を見てもらいながら感想をもらったり、アイディアをもらってブラッシュアップすること。

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そういう風に、出来ていく過程を知ってもらうことで、より作品に親近感をもってもらえるし、楽しんでもらえるのではないかと思っています。

やじまの有料マガジンは絶賛リニューアル準備中ですが、今から購読してやじまを応援しちゃおう!


まとめ

こんなところが、今回LINEマンガで週間連載をして終わるまでを経験して僕が考えたことです。

またこれからやっていく中でどんどん考えがアップデートされたりまた変わったりすることだと思います。

これから連載を準備する、始める人に少しでも参考になればうれしいです。



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SpecialThanks

最後に、この場で関わっている人への感謝を書いておきます―。

いつも、ありがとうございます!

作家であっても、この点はおろそかにはできない。すれば、結果的に周りの人間を不幸にして自分を苦しめることになりそうだと思います。

色々書いても、結果的には「人間関係を大事にする」これが一番大事なんだと思いました。

出来てる、出来てないは次の話ネ…したいとは思ってるの、これからもよろしくね。。

○LINEマンガやツイッターなどのSNSで感想を書いて投稿してくれる読者さん、有料マガジンを購読してくれてるコアファンの方。

これ、実は地味だけどかなりありがたいし、モチベーションあがります。あ、読んでくれてるんだ、というのが実感として分かるし、わざわざ描いてくれるってことがありがたい。
有料マガジン購読者さんにいたっては有料で創作活動を応援してくれてる。これからもぜひよろしくお願いします。ありがとうございます。

○編集者の佐渡島さん

僕はかなり感情が揺れやすいところがあって、打ち合わせ中に怒ったり悲しんだりと色んな起伏があってかなり面倒だったと思うのですが常に「作品を面白く、作家を長く描ける作家にしたい」という気持ちをもって接してくれていたこと。これがありがたかった。
一人で考えていたら「このくらいかな」とか「もういいや」とあきらめていたことがあったのですが「もう少し直して良くなる」とか「締め切りを交渉するから良くしよう」と提案してくれるのはとても励みになりました。

次回作ではもう少し、自分の感情をコントロールして、佐渡島さんの負荷を減らしたいです笑 ありがとうございます。

○ビジネスや健康をケアしてくれる方々。(今回の連載ではコルクの長谷川さん、中谷さん、酒井さん、ミヨシさん、古川さん、小林さん、マッキーさん、…その他にも大勢)

これは上の編集者さんとの関係に近いのですが、僕が〆切ギリギリに入稿した時に先方(僕の場合はLINEさん)と交渉したり、夜遅くに写植をしてくれたり、チェックやサムネやタイトルを作ってくれている。打ち合わせのスケジュールをくれたり、また、僕がモチベーションが下がりグチっぽくなった時に話を聞いてくれる方々。健康のケアまでしてもらってる…

こういった人たちが補ったり、支えたりしてくれてるところは大きく、普段は見えない部分であったりする。それを自分だけがツライみたいに思い過ぎるのはよくないな、と反省と感謝と両方あります。今後も機会を作って話したり、ご飯を食べたりしていきたい。ありがとうございます。

○外部の助けてくれる人たち。(A社のO氏、前田デザイン室の方)

僕の場合は今回、前田デザイン室の前田さんを中心にコッぺくんのデザインを手伝ってもらったり、コルクとビジネスを共にしているA社のO氏にはLINEマンガのバナーのクリック数があがるようにバナーを作ってくれたり、絵やキャラクターについてのアドバイスに時間をとってもらったりした。ありがとうございます。

○創作仲間。(ラッキーズ、ヒットを生み出すぞ)

今僕が所属してるエージェント会社のコルクではWeb時代のマンガ家のヒットを生み出そうとしていて、そのための作家グループやWebコミュニティがいくつか作られている。

その中で主に今回「ラッキーズ」という創作グループのみんなにはとても助けてもらった。その中にさらに羽賀部、という小グループがある。
(わかりづらい)

コッペくんの連載準備中、第1話がなかなかできなくて編集の佐渡島さんが“君たちはどう生きるか”を描いたコルクの羽賀さんに相談し、第1話を描いてもらった。今回のコッぺくん第1話はほとんどそのままそのネームを元に描いている。

また、ふむさん、ホリプー、には初期からネームを相談してアイディアをもらったり、途中から合流した吉本ユータヌキさんやるびーさんにも感想やアイディアをもらった。

具体的な悩みを相談することはもちろん、漠然とした不安を話したり、家庭や収入、健康のことを相談したりできる仲間がいると、とっても心強いです。

これからもよろしくね。

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