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BASE株式会社の決算書を読んでみた-2-

前回に引き続きBASE社の決算書を読んで、特にBASE社の成長の源泉は何かという点を中心に解説したいと思います。四半期報告書は記載が省略されることが多いため、2019年12月期の有価証券報告書も事業の理解を深めるために参照します。

まず、有価証券報告書にてどのような経営方針で目標とする経営指標が何かを見て行きたいと思います。

目標とする経営指標

Base社の有価証券報告書の第一部企業情報 第2事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)目標とする経営指標 に流通総額(GMV)と売上総利益の最大化を重視しているとあるため、流通総額(GMV)を重視した経営を行っていることがわかります。

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収益モデル

有価証券報告書の第一部企業情報 第1企業の概況 3事業の内容 事業系統図を見ると、BASE社は決済代行会社を通じて購入者から代金を預かり、決済手数及びサービス利用料を控除して商品代金を支払っています。そのため、決済手数料及びサービス利用料がしBase社の収益となっていることが読み取れます。

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では料率はいくらなのか。3事業の内容に決済手数料として「取引金額に対して3.6%+40円」、サービス利用料として「取引金額の3.0%」とあり、これが第1回でも触れたテイククレートの約8%の内訳に相当すると考えられます。以上のことから、BASE社の収益はGMVに比例します。

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GMVの分解

GMVを開示されている情報を元に、単価×数量に分解すると以下のようになります。

GMV=平均月間売店数*1ショップあたりの月間平均GMV

よって、GMVをあげるには、月間平均売店数又はショップあたりの平均GMVを上げるかのどちらかが必要になります。2Qにおいては、月間売店数及び1ショップあたりの月間平均数が共に大きく成長しています。ここでは、月間売店数に着目していきたいと思います。

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ストック型のビジネスモデル

現状のところ、BASE社は成長フェーズにあることから、ショップが開設されたらGMVが伸びるという構造になっています。また、以下の通り、プラットフォームBASE でのショップの開設年別流通総額を見ると、ショップの売上高は、各々安定的に推移しています。

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このビジネスモデルはストック型のビジネスモデルと言え、ネットワーク外部性が働くビジネスモデルといえます。具体的には、ある一定程度の規模に達したら、様々な店舗が出店している→購入ユーザーが増える→プラットフォームBaseの集客力が上がる→さらに店舗が集まる→購入ユーザーが増えるという好循環が自浄的に働く仕組みといえます。つまり店舗の数と質が成長の源泉となっていると言えるでしょう。なお、2020年7月の累計ショップ開設数は110万ショップです。

さらに筆者が着目したのは、2QのGMVの伸びです。コロナの影響をうけ、カテゴリ別GMVが変化しています。従来はファッションが56%だったのに対して、コロナ禍の生活様式の変化に伴い、ファッションが43%と減りましたが、食べ物・飲み物が4%から18%まで増えています。驚くべきことにファッションカテゴリそのもののGMVも全体割合は減少しましたが、前四半期比較だと伸びています。

つまり、強みである分野は引き続き成長していることに加え、特定のカテゴリーからの収益に過度に依存することなく、様々なカテゴリーから収益も得られる体制になりつつある状態になっていると言えます。

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マーケットの環境

では、マーケット環境の観点から、どのくらいの成長余地があるのかという点を見て行きたいと思います。

2020年において国内のB to Cの市場環境が22.3兆円とあります。BASE社の2020年12月期の業績予想の決済ベースの予想GMVが783億円〜844億円なので、平均値の814億円が今期稼げたと仮定した場合、市場環境全体に占めるシェアはわずかに0.3%にすぎません。また、市場は2022年までに26兆規模になることが予想されること、日本のEC化率は他国と比較すると低いことから、今後の成長の余地はあるものと考えられます。

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BASE社の成長戦略

成長戦略について、決算説明会資料などに定性的な説明はありますが、具体的な金額については、上場時の有価証券届出書の第一部 証券情報 第1募集要項 5新規発行による手取金の使途に 調達資金の使途に情報がありますので見ていきたと思います。

そこには、広告宣伝費に2020年及び2021年にかけて約10億円使用予定とあります。2020年の販管費のおよそ11%を占める規模です。新規のショップと購入ユーザーへの認知度向上のために使用すると決算説明会で説明しているため、更なる認知度向上が見込めるのはないのかと考えます。

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気になる点

今まで、ポジティブなことばかり述べてきましたが、気になる点に触れたいと思います。それは、累計出店数が既に110万店舗数に達している点です。集計の方法などが同一でないと単純比較はできず、ここでの具体的な参照は割愛しますが、楽天などと比較するとこの店舗数は非常に高い水準にある印象を受けます。よって、店舗数に関して、どこまで伸びる余地があるかという点が不透明です。

店舗数の増加により、成長が牽引されてきただけに店舗数の国内の成長が止まると、次は1ショップあたりの平均GMVを上げる=購入ユーザーを増やす施策により注力する施策を打っていくのではないかと予想します。

まとめ

・BASE社は自律的な好循環サイクルが働く仕組みで、その新規出店数に牽引されて業績が好調となっている。その源泉となるのはショップ数。

・しかしながら、店舗数は高い水準にあり店舗数がGMVを牽引するのはいつまで続くは不透明。

・特定のカテゴリーからの収益に過度に依存する体制から、様々なカテゴリーから収益も得られると体制になりつつある。

以上です。

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