シンデレラで100本記事を書く(3/100)
異史シンデレラ
前回は、正史シンデレラとして
純真無垢な優しい少女
愛に飢えた受け身の娘
語り継がれるシンデレラについて語りました
もちろん、原作や過去のシンデレラ作品はリスペクトしていますが
語り手の願いを込めて語るのも寝物語の醍醐味です
今回私は主人公シンデレラに
なんとなく王子と結婚してめでたしな
そんな幸せで終わってほしくないわけです
シンデレラの物語の中で
「どうすればよりシンデレラがハッピーになるか」
そういった視点で、物語を考えていきたいと思います
そもそもの元凶である親父
そう、お前のせいでシンデレラが不幸になったんだよ
しかも世間知らずのまま王子と結婚だぞ
それでも親かと
作中最大の悪は親父であると私は思っています
もちろん、親父にも言い分はあると思います
時代背景という常識の違いもあります
しかし、今回はシンデレラを幸せにすることを考えているので
親父にはシンデレラが幸せになるための踏み台になってもらいましょう
(いずれは親父視点で彼が幸せになるストーリーも考えると思います)
まず、シンデレラは親父を疑うべきでした
母が亡くなって、再婚相手を勝手に連れてきて
自分の育児を継母に任せる
この親父は私(シンデレラ)のことは考えていない
というか、お前の嫁なんだからちゃんと手綱位握れと
親父を相手取って出るとこに出るシンデレラは良いかもしれません
母方の親戚や、祖父母の家に家出する行動的なシンデレラも良いかもしれません
私(シンデレラ)は、お前らのペットや奴隷じゃないぞと
ただこの場合、シンデレラに相応の行動力を求めることになります
プロローグでシンデレラを行動的にするような出来事があれば
シンデレラの未来も変わったかもしれません
例えば
シンデレラの友達に「おませな女の子」がいて
お父さんの再婚のタイミングで引っ越すシンデレラに
「つらいことがあってら逃げても良いんだよ」
「悪い大人は裁判で懲らしめちゃえばいい」
とか吹き込まれていると、また別の行動を選べたかもしれません
シンデレラIF(おせっかいな友人との出会い)
むかしむかし
シンデレラという可愛らしい女の子がいました
シンデレラは幼いころに優しい母親を亡くしましたが
彼女にはいつでも支えになってくれる心強い友達がいました
友達はどんなに悲しい時でも前向きで
お母さんが天国に旅立った時も
一緒に泣きながらシンデレラを励ましてくれました
そんなある日
シンデレラはお父さんの再婚で
遠くの街に引っ越すことになりました
街を出ていく最後の日
シンデレラは友達と別れることに悲しくて
手を握りながらずっと泣いていました
そんなシンデレラを、友達はぎゅっと抱きしめて
シンデレラの頭を優しくなでてくれます
別れがもう間もなくやってくるとき
友達はシンデレラの真っ赤になった目をじっと見て言います
いつか大人になったらまた会おう
そして
いつまでも、どんな時でも私はあなたの味方だから
友人の真剣な顔はシンデレラの心に強く残りました
それから、いくつもの街を越えて
シンデレラは父親の再婚相手の家に引き取られました
新しい家の中で
新しいお母さんと
二人のお姉ちゃんを
紹介されました
シンデレラは家族が増えることにとても喜びました
新しいお母さんも
二人のお姉ちゃんも
優しく迎え入れてくれました
その日、シンデレラはベッドの中で
新しい家族と楽しく過ごすことを夢見て
ゆっくり眠りました
しかし、そんなシンデレラの想いは
お父さんが仕事に出て行ったあと
裏切られました
掃除や洗濯
食事の準備や庭の手入れ
家の雑用は全てシンデレラに押し付けられました
全てが手作業で
道具は最低限の粗末なものしかありませんでした
冬は冷たい水で凍える思いをして
夏は暑さで倒れそうになりながら
シンデレラは、自分は他所の子だからと我慢して
新しい母親の言いつけを守り一生懸命働きました
そのうち、シンデレラの様子を見ていた二人の姉は
シンデレラの仕事を邪魔するようになります
最初は些細な事だったのでシンデレラも気のせいかと思っていましたが
日に日に過激になっていき
最近では
掃除した場所に泥をまかれたり
かまどの火をわざと消されたり
防寒用のコートを隠されたりしました
最初は継母に相談しましたが取り合ってくれません
たまに帰ってくる父親に相談しても、気にしすぎと言われてしまいます
そして、悲しそうなシンデレラの顔を見て姉たちは笑います
そんな日々を過ごすある日
シンデレラは近くお城で舞踏会が開かれる話を耳にします
昔母親に何度もねだって聞かせてもらったお話です
きらびやかなお城で
優雅な音楽を背景に
素敵な衣装に身を包み
王子様とダンスをする
小さいころからシンデレラの密かな憧れでした
お城のダンスに思いをはせながら
暖炉の掃除をしていたシンデレラは
ふいに鏡に映る灰まみれの自分の姿が目に留まります
なんてみすぼらしい姿なんだろう
そんな思いと共に彼女の目からは涙がこぼれました
ポロリ、ポロリと
大粒の涙は次から次へと溢れていったのです
しばらく泣いて、目を赤くしたシンデレラは思います
このままではいけない
そんな時ふいに昔別れた友達の顔が浮かびました
迷惑をかけるかもしれない
そしたら、下働きでも何でもするといって働かせてもらおう
このままここにいては、きっと一生抜け出せない
そう思い立つと小さなカバンに荷物を詰めて
裏口からこっそりと抜け出し
友人の住む町に向けて馬車に乗りこみました
馬車に揺られ
いくつもの街を越え
目的地にたどり着いたシンデレラ
懐かしい街の中を記憶を頼りに進むと
昔と変わらない一件のお店を見つけます
お店の裏手に回り
玄関をノックしようとするタイミングで
急にシンデレラは不安になりました
勢いでここまで来てしまったけど
このまま友達に会っていいのだろうか
迷惑じゃないかな
私のこと覚えてないんじゃないかな
そんな思いにノックをしようとあげた手が震えます
「あれ、もしかして、シンデレラ?」
その声に振り向くと
成長して少し大人びたけども
昔と変わらない友達が
驚いた顔をして立っていました
気が付けば、シンデレラは友達にしがみついて泣いていました
友達は優しくシンデレラの頭をなでてくれます
そして、シンデレラはこれまであった全ての事を友達に語りました
途中で友達の両親も加わり
父や継母に怒り
あなたは悪くないと
シンデレラに優しい言葉をかけてくれました
温かいスープを飲んだシンデレラは
柔らかい布団に入り込むと
あっとうまにぐっすりと眠りに落ちてしまいました
その夜友達とその両親はシンデレラについて話をします
このまま自分の所でシンデレラの面倒を見ることは決定事項ですが
どうにかして見返すことはできないかと
友達はある作戦を思いつきます
それを聞いた両親もその作戦に賛成しました
それからしばらく
シンデレラはゆっくり体を休め
しっかりと栄養のあるものを食べ
髪をすき
肌の手入れをすると
見違えるほどの美しい娘になりました
それは、昔街で美しいと評判だったシンデレラの母の様でした
それに合わせて
仕立て屋である友人の両親は
シンデレラにぴったりの衣装を縫い上げます
シンデレラの事を聞いた街の人たちも
みんなシンデレラに同情し
協力してくれました
そして、舞踏会の日
シンデレラは立派な馬車に乗り
彼女の美しさを引き立てる衣装をまとい
お城にやってきました
この日の為に町のマナーの先生から
礼儀作法やダンスも習いバッチリです
悪ノリした友人もシンデレラの女中として付き従います
街の警備隊に守られたシンデレラはまるで異国のお姫様でした
一緒に参加していた義姉たちも
すっかり変わったシンデレラに気づかず
むしろ見惚れてしまっている程です
そんな彼女が王子の目に留まらないわけがありません
どこかはかなく
そしてしっかりと芯を感じるシンデレラ
ダンスを踊り
話をしたら
王子はすっかりシンデレラに夢中になってしまいました
しかしシンデレラは
自分は大したことない
王子さまはもったいないと言って
最後まで名前を明かさず
消えるようにお城から去っていきました
舞踏会に参加して素敵な思い出が作れたら
シンデレラはそれで充分満足でした
しかし、その程度諦めるほどシンデレラに対する王子の愛は軽くありません
騎士たちに命じ
自らも馬に乗りシンデレラを探しに出かけました
そして、しばらくたったある日
とうとうシンデレラの住んでいる街まで王子がやってきます
仕立て屋で売り子として働くシンデレラに
王子は大輪の花束を持ち跪きます
「あなたが私の運命の人だ。私と結婚してほしい」
しばらく驚いたまま固まるシンデレラを
王子はそのままの姿勢で見上げて待ちます
シンデレラは少し迷いながらも
最後はしっかりと王子の手を取り
「はい」
と返事をしました
その眼には涙が浮かんでいましたが
あのときの様に悲しい涙ではありません
嬉しくて
温かくて
幸せな
そんな涙を流す女の子がそこにはいました
その後シンデレラと王子は街をあげて祝福され
このシンデレラのお話は美談として長く語られました
めでたしめでたし
ちなみに友人はちゃっかり結婚後もシンデレラのファッションコーディネーターとして、末永く傍にいたそうです
主人公シンデレラに祝福の鐘を
あったかもしれないシンデレラのもう一つのストーリーはどうでしたか?
すでに物語として完成されているシンデレラですが
一人の登場人物が増えることで
(魔法使いはクビになりましたが)
テイストの違う物語になったと思います
そして、寝物語として
友達を大切にする気持ち
悲しい事があれば友達を頼っていいし
友達が困っているなら手を差しのべてあげること
教育的な事を前面に出したいわけではないですが
シンデレラを通して、別のメッセージを持たせられたと思います
寝物語は語り手の想いを込めたものです
何となく王子と結婚した受け身の少女ではなく
友達と王子の愛を勝ち取ったシンデレラの方が
私は夢があると思います
ちなみに、友人が裁判官になって父や継母たちを断罪して
違った幸せを手に入れるパターンも考えていましたが
それはまた別の機会にします
次回はガラスの靴の存在についてです
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