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世界で一番アツい夏、BIG WAVEを乗りこなせ

初のオンラインファンミでとても幸せな夜を過ごした翌日。ファンミの余韻が残るTLにそのポストはひょいと現れた。

「これ気にならない…?」

リンク先はあの大ヒット漫画「推しの子」のアニメ2期の予告映像だった。よく読むとオープニング曲を担当するアーティストが正体不明だと。特定班によるとヒントは👁️と🌹。さらにファンによれば👁️はキタニタツヤらしい。(この時点でキタニタツヤだと言い当ててたかなちの皆さん本当にすごいと思う。)
とにもかくにも、予告映像を見てみることにしたがーーなるほど。確かにこの歌声は聞いたことがある。よく知っている声に似ている。似ているというかそっくりだ。特に最後の「最愛のファタール」の“ル”の舌の巻き方なんかめちゃくちゃ聞いたことがある。
でもまあないよなぁ…とその時の私は軽く流していた。薔薇がモチーフのアーティストなんて他にもいるだろうし、似たような歌声の人だってどこかにはいるだろう。たしかに健人くんは「推しの子」にハマっていることを公言していたし、アニメ1期のオープニング曲「アイドル」を踊ってみた動画は当時とても話題になった。それでも、ソロになってすぐにそんな上手い話はないだろうなと。
私はとても予防線を張りたがる人間なのである。

それからしばらくして、新たなポストが流れてきた。 

「推しの子は海外でMy Starって呼ばれてるらしいよ!」
「FC動画の本棚にMy Starって書いてあるよね?」

最初に発見した人、探偵とかになった方がいい。
それでも私はやっぱりいやいやいや〜そんな都合の良いことあるわけないじゃん〜と予防線を張りまくっていた。
だって、特定班によると謎のアーティストのうちの一人はあのキタニタツヤだと言う。キタニタツヤといえば、去年「青のすみか」で大ブレイクした飛ぶ鳥を落とす勢いのアーティストだ。ちなみに東大出身らしい。天は何物も与えすぎだなと思った覚えがある。
私自身、「青のすみか」が大好きで去年一番聴いた曲のうちの一つだった。年末大型歌番組に複雑な感情を抱いていた私が、唯一「青のすみか」の生歌唱が聴きたくてキタニタツヤの出番の時だけ某番組を映したくらいである。
そんなすごいアーティストと、超人気アニメ「推しの子」のオープニング曲を?それはあまりにもオタクの妄想というか願望なのではないか?そもそもゴリゴリのアーティストであるキタニタツヤとバリバリのアイドルである中島健人のコラボなんて実現するのか想像もつかない。
ちょうどその頃、仲良しの相互さんから「どう思う?」と連絡が来たが「そうだと嬉しいけどそんな都合が良いことあるのかな?って思う」みたいに返した記憶がある。でも、実のところは予防線張りまくり人間の私ですら、ちょっぴりソワソワ気になり始めていたのだ。ほんのちょっと期待するくらいならタダかな、なんて。

最初に公開された情報は、👁️の人のライナーノーツと顔が隠された姿だった。この時すでにキタニタツヤ界隈の人々は「絶対キタニだ!」「キタニじゃなかったら切腹する!」とお祭り騒ぎだった。
一方、U:nity界隈は「来週公開されるライナーノーツで健人くんかどうか分かるよね」とソワソワドキドキムードだった。私は正直、ライナーノーツだけで健人くんと判断できるか不安を覚えていた。健人くんは言葉遣いが独特な時もあるけれど、よく使う言葉あるわけでも特徴的な文章を書くわけでもないと思っていたので。

ーーという私の不安は1週間後に払拭された。
「光に憧れてしまった影の物語」という一文だけでももはや中島健人以外の何者でもないと分かった。
「1番になりたい」
「様々な決断が重なった直後」
「アイドルとして」
これはもう絶対に中島健人だ。
健人くんの文章に特徴がないと思っていたけれど、このライナーノーツからは普段KTTを通してたくさん語りかけてくれる健人くんの息遣いがありありと感じられた。
もう絶対に中島健人だ。(2回目)
「絶対中島健人だ!」「健人くんじゃなかったら切腹する!」
ーーなんでファンってみんな切腹したがるんだろう。武士なのかな。
しかしこの時、TLの空気は戸惑いの方が大きかったように思う。果たして表立って喜んで良いのか。我々は今まで公式が発表した情報以外は反応するなと教えられてきた。解禁前の情報に反応することと週刊誌のリンクを踏むことは死後地獄道を歩むことになるほどの大罪とされる界隈なのだ。
では今回の場合はどうか。どう考えても健人くんだけど、名前が出ていない状態ではしゃいで健人くんに迷惑はかからないだろうか。それとも公式は「誰だろう」と予想合戦を繰り広げるような盛り上がりを期待してるのではないか。
内心の喜びを隠しつつ、界隈にはなぜか心理戦のような空気が流れていた。今から考えたらどちらの考え方も「健人くんのため」なのだから愛おしい時間である。私は「違ったら新喜劇ばりにズッコケようね」とポストしていた。

そうしてソワソワワクワクしながら臨んだ6月30日。ついに公式からGEMNの正体が発表された。
ファンの予想通り、キタニタツヤと中島健人の二人。異色のコラボの誕生に、U:nityたちは歓喜に沸いた。
その理由の一つとして、推しの子というBIGコンテンツに関われることへの喜びはもちろんのこと、ソロになってから懸念していた「健人くんのパフォーマンスを見る機会が減るのではないか」という不安が一つ解消されたことが大きかったかもしれない。U:nityはやはり健人くんのパフォーマンスに惚れ込んでいる人が多いのだと思う。

しかし、この時、私の中で新たな不安が二つ生まれていた。
一つは、キタニタツヤさんのファンがアイドルである健人くんとのコラボをどう思っているかだ。私の勝手なイメージに過ぎないが、アーティストのファン界隈では場合によっては「アイドル」という存在はよく思われていないのではないか、というぼんやりとしたイメージがあった。
そしてもう一つは、あの社会現象を巻き起こした「アイドル」の次のオープニング曲であるという事実だ。どんなに良い曲が来ても「やっぱりアイドルには敵わないよね」と言われてしまうのではないかとどうしても不安を拭えなかった。

だが、この二つの不安は良い意味で裏切られることとなる。
まず、キタニタツヤさんのファン「かなち」の皆さんはとても民度が高く、優しい人が多かった。異色のコラボを前向きに受け止め、健人くんとそのファンの存在をあたたかく迎え入れてくれた。キタニさんのおすすめの曲を教えてくれたり、反対に健人くんのことを知ろうとしてくれたり。キタニさんのことを本当に大切に思っている方たちなんだなと感じた。推しとファンは鏡のような存在だ。きっとキタニさん自身が素敵な人だからこそなのだろう。あとイラストが上手い人と言語化が上手い人がめちゃくちゃ多い。もしかしてキタニさん絵も上手かったりする…?
かなちの皆さんととても良いご縁に恵まれたことは、きっとGEMNの活動が終わった後も忘れることはないだろう。

そして、公開された「ファタール」を聴いた瞬間、二つ目の不安も消え去った。
一見、アクアのアイへの執着や後悔、今も消えない憧れを綴った曲のように思える。複雑な感情を表すように曲調も次々と色を変える。まさに「全てサビのような曲」だと感じた。
しかしYJのインタビューで二人の「ファタール」への想いを知った時、MVを見た時、最初に抱いた印象がまた少し変わった。
「ファタール」はキタニタツヤと中島健人、二人自身のことを描いた曲なのだ。承認欲求が強く、常に光を求めて上へ上へと進み続ける。現状の地位に甘んじるつもりなんかない。二人の熱量と光への執着を表現したのが「ファタール」という曲だ。
健人くんのあくなき向上心と情熱はファンなら皆が知っているだろう。高みを目指してその時の全力を出し切る、ほどほどなんて許さない。魂を削って芸能界でもがき続ける健人くんの姿を時に嘲笑う人もいたし、空回ってしまう時もあった。それでも光を求め続け、光を演じ続けるのが中島健人というアイドルだ。
そしてきっと、キタニタツヤというアーティストもまた同じ世界の中でもがき続ける人なのだろう。YJとSPURのインタビューからはキタニさんのアーティストとしての絶対に譲れない矜持が痺れるほどに伝わってきた。キタニさんは自分が生み出す作品に誇りと責任を持って仕事をしている人なのだと思う。また、キタニさんがダンスに挑戦したのも驚きだった。自分はアーティストだからそういうことはしないんだ、と断ることもできたはずだ。しかし良い作品のためならば妥協などできない人なのだろう。多忙なスケジュールの中で完成させたダンスは、ファタールの世界観に素晴らしいスパイスを加えていた。まさにキタニタツヤは“求め続ける人”だ。

そんな二人から生まれる化学反応が、半端なものであるはずなどない。
“愛を愛で返すような呼応”と“満たされることのない承認欲求”が生み出した作品は、大きなインパクトと魔力をもって多くの人々を惹きつけた。
キタニさんはアーティストとしてますます輝きを放ち、多くの人に「さすがキタニタツヤ」と言わしめた。
そして意外だったのは健人くんへの反応だった。
「さすがトップアイドルの表現力だ」
「やっぱり本物のアイドルはすごいな」
MVのコメント欄に並んだ言葉の数々は、健人くんのアイドルとしての表現力・パフォーマンス力を賞賛するものだった。
アイドルという職業が馬鹿にされがちなこの時代に、アイドルという土俵から降りることが評価されがちなこの時代に、健人くんは正々堂々と真っ向から「アイドル」として勝負した。そしてその魅力で多くの人々を圧倒したのだ。

GEMNというユニットは期間限定のものかもしれないけれど、きっとこの先、キタニタツヤと中島健人の存在が誰かの「ファタール」になっていくに違いない。

私たちは時代の目撃者なのだ。

今回、サブスク配信だったり、コラボ相手がアーティストだったり、アニメ界隈とも関わったりとU:nityにとっては嬉しい反面初めて尽くしのことばかりだ。
戸惑うことも不安もあるけれどこんな機会はきっと滅多にない。
我々の手でGEMNをさらに盛り上げて、スターダムに駆け上がらせようではないか。

世界で一番アツい夏、このBIG WAVEを乗りこなせ!


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