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身も心もティボルトに捧げる覚悟で「’21星ロミジュリB日程」を観劇した話

前提として


★5/25(日)マチネを観劇したレポ
★瀬央ゆりあ様のファン
★ティボ様しか見てない(見えていない)
★大劇場B日程の配信を視聴済み
★生ロミジュリ観劇は初(過去映像は見た)
とにかく重い、長い

 

今日こそその日

5/25(日)10時半頃、私は相当な覚悟で東京宝塚劇場に足を踏み入れた。

もとよりその日が最初で最後の瀬央ティボ様に会える日だったため、ティボ様の衣装をイメージしたネイルや真っ赤なワンピース、おろしたての靴、うららちゃんのハンドメイドの星いっぱいのヘアアクセサリーなどなど、気合いは十分すぎるほど入っていた。
しかし、それに加え、3回目の緊急事態宣言の影響で、突然、私の唯一の観劇日がB日程最後の日となってしまったのだ。

瀬央さんが演じるティボルトは、その日を境にこの世から存在しなくなってしまう。

彼が存在する最後の日を一瞬たりとも見逃してはならないと、緊張で若干テンションをおかしくしながら「今日こそその日、思いを果たす日」を頭の中でループし、いつも以上に念入りにオペラグラスのピントを合わせた。
 

ティボルトの登場

開演アナウンス、優しい神父様の声、愛と死のダンス、最高に治安の悪いヴェローナ。
初めてのロミジュリに胸を躍らせていると、私の視界にティボルトが降り立つ。

その瞬間、信じられないくらいに心臓が跳ね上がり、のどがつまり、体が熱くなった。

あの大きな瞳。カッと見開かれた目に瞳孔が大きく開かれ突き刺さる。怖い。好き。

時折、けだるげに閉じられる瞼。色気に殺される。好き。

一音一音がはっきりと、艶のある声で発せられる言葉。脳に響いて狂いたくなる。好き。

焼けた肌の色と真っ赤な血の色の服、薄い肌に浮き立つ骨格が美しい顔も相まって、荒々しく削り出された彫刻のよう。いつも以上にたくましく感じられる。強い。好き。

焦がれる気持ちがどんどん溢れて体中がティボルトへの「好き」で埋め尽くされた。

オペラグラスを慌てて覗き込んで小刻みに震えだしたから、周りの方からしたらちょっとした恐怖体験だったかもしれないが、どうかお許しいただきたい。
配信で画面越しに恋をしたティボルト様が目の前に現れて、息をしている。狂わずにいられるわけがない。

その後の記憶は正直定かではないため、全体を通して受けた瀬央さんのティボルトの印象を書きたいと思う。

本当の俺じゃない

瀬央さんのティボルトは、周りの人間が求め、作り上げた「ティボルト像」に従って生きていることを強く感じるティボルトだった。

叔父のキャピュレット卿は、キャピュレット家を守るために都合のいい人間であることを、キャピュレットの女達は、強くたくましく、手に入れたいと焦がれさせる色男を、キャピュレットの男達は、理不尽に殴られ、恐怖の色をのぞかせつつも、近寄りがたいが故の憧れ、圧倒的な強さを彼に求めた。
龍の宮の時も思ったが、瀬央さんは、周りの人の気持ちを受け取って動く、受け身の芝居が本当に上手い。よ
ティボルトってもっと、自分発信で孤独を選んでいるイメージだったが、瀬央さんのティボルトは周りに孤高の存在になることを仕立て上げられたように感じた。
 
そのことを強く感じる場面として、マーキューシオを刺した後の、困ったようなどうしたらいいか分からない表情がすごく印象に残っている。

その場にいる誰からも離れ、背を向け、静かにナイフを見つめる瞳に戸惑いの色が映る。

幼い子供のようで、抱きしめてティボルトの代わりに泣き叫びたくなるが、モンタギューの仲間たちに囲まれるマーキューシオとは対照的に、ティボルトを抱きしめる者は居ない。

そのうちに女達が近寄ってきて、称えられて、初めて勝ち誇る。

これがティボルトなんだ。人を殺しても、動揺なんかしない。
それを自分に言い聞かせるように大きく口を開けて笑い、酒を飲み、女たちにちょっかいを出してるように見えた。

自由を求めるティボルト

ティボルトがジュリエットを愛したのは、手あかが見えるくらいに周りの人間に求められた反動からではないかと思う。

舞空さんのジュリエットは夢見がちで、天真爛漫で、そして毛ほどもティボルトに興味がない
今までのジュリエットに比べても、ティボルトへの興味があまりにも希薄で、ティボルト視点で見ると、残酷すぎるようにも見える。

でも、ティボルトにとっては、その興味の無さが心地よかったのかもしれない。
興味のないジュリエットは、彼に何も求めない。
幼い頃から周りの人間が欲を満たす為にティボルトに自分の理想を押し付けた。そんな中で、誰にも左右されず、自分に何も求めないジュリエットを神聖化し、救いを求めてしまうのも頷ける。

また、キャピュレットの掟によって、従兄妹同士の結婚は禁じられている。
色々なものに抑圧されてがんじがらめになったティボルトにとって、ジュリエットを好きな気持ちだけが、唯一残された周りが求めるティボルト像ではない「本当の俺」なのだ。
ジュリエットと結ばれるという事は、ただ単純に自分の秘めた想いを遂げることができるだけでなく、掟を破り、自由になるという意味もあるのではないだろうか。
瀬央さんのティボルトがジュリエットを見つめる瞳が純粋に真っ直ぐなのは、ただの恋や愛ではなく、その先に自由を見ているのかなと感じた。

寄り添いたくなるヴィラン

ティボルトという役は、圧倒的に敵役だ。
ヒロインに横恋慕し、主人公の仲間を殺し、主人公に殺される。
同情の余地はないはずだ。

でも、瀬央さんのティボルトは抱きしめたくなる。
それは、私がもともと瀬央さんのファンだからというのも多少は影響しているだろうけど、きっとそれだけではない。
なんというか、こんなに幼いティボルトは初めて見た気がする。周りの期待を裏切ることができずにがんじがらめになって生きている。
純粋さを捨てきれないのが、とても哀しい。
辛い。
その心に寄り添って、抱きしめたくなるビィランだった。

瀬央さんのティボルトに出会えて本当によかった。

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