見出し画像

エヴァン・ハンセンはもうひとりの私<ネタバレ>

去年のことになってしまうのですが、『ディア・エヴァン・ハンセン』という映画を見て、感動を通りこして大泣きしてしまいました。映画館がひとつ飛ばしの席で本当に良かったと思うくらい。
なぜあんなに泣いてしまったのか、自分の泣いた理由を探ろうと、後日、再度見に行ったところ、
1回目は事前情報なしで、どんなストーリーなのか考えながら見ていたので、涙腺崩壊は後半あたりからだったのですが、
2回目は冒頭1曲目から号泣し、結局泣きっぱなしで、見終わったときはとてもすっきりした気分で映画館を後にした、という始末です。
それから数カ月が経って、『ディア・エヴァン・ハンセン』は私のなかで、すっかり過去の感動作品になっていたのですが、
先日、グラミー賞の番組を見ていたら、エヴァン・ハンセンを演じたベン・プラットが追悼ステージ(亡くなったミュージシャンや音楽関係者に捧げるためのステージ)に登場したのです。
その特徴のある歌声で、エヴァン・ハンセンの人や! と、気が付いて、映画の感動も思い出しました。
そうなんです。ベン・プラットとレイチェル・ゼグラーの共演がグラミーの舞台で見られたんです。
すごい。びっくり。嬉しい。

(↑日本版トレイラーよりオリジナルがよかったので)

さて、あらすじ、ですが、
主人公のエヴァン・ハンセンはシングルマザーのお母さんと二人暮らしで、社会で生活することを難しく感じている高校生です。メンタルのお医者さんから、治療の一環として自分宛の手紙を書くことをすすめられていて、手紙の書きだしが、タイトルの「ディア・エヴァン・ハンセン」です。
その手紙を、孤独で暴力的なコナーに奪われてしまい、コナーが「ディア・エヴァン・ハンセン」の手紙を持ったまま自殺してしまったことから、コナーの両親は自分たちの息子に親友がいた、と誤解します。
そして彼らをがっかりさせないためにエヴァンはコナーと親友だったと嘘をついてしまいます。
さらにコナーの死を無駄にしたくないと考えている同級生の期待に応えるため、嘘の上塗りを重ねていきます。
そんな中でコナーとの嘘の思い出話を講演会で語った姿がSNSでバズって、様々な人たちに勇気を与える存在となります。
コナーの両親から感謝され、コナーの妹とつきあったりもして、とても充実した生活を手に入れるのですが、あるSNSの投稿をきっかけにすべてが崩れてしまいます。
すべて嘘だったということがばれてすべてを失った状態から、エヴァンは改めてコナーのことを深く知ろうとします。
という、若干複雑なお話なので、あらすじの説明では感動を伝えられないんですけど、とても深くて胸に残る作品なんです。

とにかくエヴァンを演じたベン・プラットの歌が素晴らしくて、映画を見終わってもしばらくずっと耳に残しておきたくなります。セリフとして話すよりも、あの歌声であのメロディで語るからこそ、心に響く歌たちです。
特に好きなのはこの三つ。
”You will be found”。本当に素晴らしいです。作品の中で物語が大きくうごいて、一番盛り上がる歌です。You will be foundは、「君はひとりじゃない」という字幕が付いています。じーんときます。
“Sincerely Me”。エヴァンと友だちが一緒になって、エヴァンとコナーの思い出話を作るときの歌で、亡くなったコナーが登場して歌ったり踊ったり、遊んだり、愉快で楽しいナンバーです。
“So Big / So Small”。終盤の、とても感動的なエヴァンのお母さんの歌です。個人的に一番泣けます。
エヴァンがまだ小さかったころ、お父さんが荷物と一緒に出て行ってしまって、2 人きりになった家がとても大きくて、自分(お母さん)はとても小さくて、エヴァンがお母さんまでいなくなったらどうしようと不安がった姿を忘れない、私は何があってもあなたのそばにいるわ、という内容で、それを何度もうなずいて聞いているエヴァンの姿を思い出すと、今でも泣けてきます。

私はエヴァンに感情移入しすぎてしまって、エヴァンが優しさから嘘をついてしまったとき、その嘘をさらに重ねてしまうとき、大勢の前で講演することになったとき、それが嘘だったと伝えるとき、そのたびごとに、「あかん、あかん。やめといたほうがいいよー」って思いながら見てしまっていました。
嘘をついてしまうと、それが嘘だったと明かすだけではなくて、なぜそんな嘘をついたのか、という説明が必要にもなるし、その姿が見ていて辛すぎて。
でも結果的には、何もなければ隠したまま過ごしていたこともさらけ出すことで、お母さんの思いを知ることができて(“So Big / So Small”のシーン)、これまで以上に絆が深まって、そんなエヴァンの姿に大号泣してしまったのだと思います。それはもう自分のことのように。

以下、蛇足です。
この文章を書くにあたり、作品について少し調べていたところ、なんと、ブロードウェイのミュージカルでは、
スピルバーグ監督の『ウエスト・サイド・ストーリー』で大優勝をかっさらったリフを演じた、マイク・ファイストがコナーを演じていて、トニー賞の助演男優賞にノミネートされていた、ということを知ってしまいました!
なんという運命! 見たいぞ!
ということで、エヴァン・ハンセンのマイク・ファイスを調べて、インタビュー動画やらミュージカルのビハインド動画を見ていたら、いつのまにかWSSのメイキングやインタビュー動画まであれこれ見ることになってしまい、めっさ時間をつぶしてしまいました。♪YouTubeは、時間どーろぼ♪(♪キャラメルは、銀歯どーろぼ♪ by錦鯉 まさのりさんのオマージュ)
WSSのリフは短髪だけど、エヴァン・ハンセンのコナーは長髪なんですよー。

何はなくとも『ディア・エヴァン・ハンセン』、素晴らしい作品です。Amazon Primeで見られるようになったら、また見ようと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?