見出し画像

「代打大和」って実際どうなんですか?


はじめに

 何よりもまずお断りしておくこととして、だらだら書いていたので一部データが新鮮でないこともありますが、その際はご指摘いただけますと幸いです。

 今シーズンからオフェンスコーチやアナリストの重用など采配に変化が見られる我らがベイスターズ。
 とはいえ正解がないのが采配。ファンが疑問を持ってしまうこともあります。その中で大きな声になってきているのが「代打大和」という采配に対する意見です。
 昨シーズンまで素晴らしい勝負強さを見せ多くのファンに感動を与え、もはや一種の宗教ではないかと思うほど横浜スタジアムを沸かせてきた大和選手ですが、今シーズンはその声援になかなか応えられていません。こうなると手のひらを返して愚策だなんだと言い始めるのは野球ファンのよくないクセなのですが、それはそれとして実際「代打大和」ってどうなのか?という興味が湧きました。改めて確認し、分析してみたいと思います。

 

得点圏に鬼は棲むか?

 個人的にあまり興味がないというのもあり適当にはなりますが、一般に言われている「得点圏の鬼大和」について少し考えてみます。

 まずは昨シーズンの大和選手の得点圏にランナーを置いた際の成績を確認してみましょう。

https://nf3.sakura.ne.jp/2023/Central/DB/f/9_stat.htm より

 記録されなかった本塁打など一部のスタッツは記載していません。
 ランナー2塁、3塁、2,3塁の時の成績は流石ですね。最低限の仕事をこなす職人といった感じを受けます。また、ランナーが1塁にいると成績が低い傾向にありますが、これは大和選手の高いコンタクト能力が災いしゲッツーになっているなどが考えられるでしょうか。

 では次に同じ23シーズンのセ・リーグ平均を見てみましょう。

https://nf3.sakura.ne.jp/2023/Stats/team_etc.htm より

 比較してみた際にどのように思ったでしょうか?ランナーが3塁にいるって詰みなんですね、というのは一番の感想でした。みんな割と打てるんだね。
 昨シーズンのセ・リーグ全打席平均打率は.244でした。それを踏まえて上のデータを見ると得点圏に鬼は棲むかもしれません。が、別に大和選手に限った話ではないのではないでしょうか。先述の場面以外では大和選手を優先して起用する必要はないのかもしれません。逆に言えば大和選手でもいいんですけどね。大した右の控え今いませんから。

「140キロ台前半の速球」

 昨シーズンからの大和選手はそれまで得意としていたスライダーを叩くことができなくなっています。

 これは横変化の大きいいわゆる「スイーパー」と言われるスライダーが普及したことも大きいのではないかと個人的には思っていますが、ここは感想止まり。トラッキングデータもないしね。

 では、最近の大和選手は何をヒットにしているのかと言えばストレートです。
 まだ十分なサンプルサイズとは言えませんが、今シーズンの大和選手は結果球がストレートの打席では11-7で打率.636(5/15まで)と驚異的な成績を残しています。また三振どころか空振りも1つしか記録しておらず、四球も1つ選んでいるなどアプローチ面も良好。得点圏の鬼から対ストレートの鬼にジョブチェンジしたのかと思えてきます。
 これだけ見るとストレートが強い終盤のリリーフにぶつけたらいいんじゃないか、となりますがもうすこし細かく見てみましょう。

 今シーズン大和選手に投じられたストレートの平均球速は145.5キロ。昨年のストレートのNPB平均球速は146.6キロらしいので、まあ平均程度と言っていいと思います。

https://1point02.jp/op/gnav/column/bs/column.aspx?cid=53955 より

 150キロ以上の真っ直ぐに絞って1例を除き挙げてみると、
・3/29 カープ島内颯太郎選手のストレートを空振り(152キロ)、ファール(152キロ)、ボール球見逃し(151キロ)、ライトへ犠牲フライ(154キロ)
・4/10 ドラゴンズ清水達也選手のストレートを見逃し(150キロ)
・5/6 スワローズ星知弥選手のストレートをボール球見逃し(150キロ)、ボール球見逃し(149キロ)、ファウル(150キロ)
・5/14 ジャイアンツ山﨑伊織選手のストレートをボール球見逃し(152キロ)

というようなアプローチに。

 サンプルサイズの小ささから分析としては不十分だという但し書きはつきますが、150キロを超える速球への対応は選球眼により最低限は保証されているが特段良い結果にはなっていないという印象を受けます。残念ながらライデル・マルティネスやアルベルト・バルドナード相手に繰り出すのはちょっとむりそうでしょうか。
 一応タイガースのハビアー・ゲラとの対戦では全球が150キロを超えるストレートの中で四球を選んだりもしていてこれが先述の「除いた1例」なのですが、いつの話かというと土砂降りのハマスタで山﨑康晃、徳山壮磨両名が大乱調だった日のもの。ゲラもタイガースが9回に逆転してから準備していたでしょうし、土を入れ替えることを要求するなど落ち着かない様子を見せていました。また、これを註釈なく含めても結局目の良さを強調するのみになるだろうという部分もあります。

 それはそうと、150キロ超えの剛速球を打てないのは大和選手に限った話ではないだろう!というのはおっしゃる通りなのですが、それは裏を返せば140キロ台前半のストレートを打てるのも大和選手に限った話ではないのでは?という意見と表裏一体のものです。
 以下、ストレートに対する長打率、コンタクト率のデータ。

https://1point02.jp/op/gnav/column/bs/column.aspx?cid=53955 より
https://1point02.jp/op/gnav/column/bs/column.aspx?cid=53955 より

 昨シーズン長打率が.410付近だったのはカープ坂倉将吾選手。昨オフの欧州代表戦では侍JAPANトップチームにも選出された、強打が売りの選手です。「140キロ台前半のストレート」というのは打者の塁打能力が全員坂倉選手レベルになってしまうほどに微妙な球である、と言ってしまうのは流石に暴論ですが……まあ特定の選手を優先して起用する理由にはならないかな、と個人的には思います。

まとめ

・得点圏打率とかいうのはどうでもいい
・走者が3塁にいるときは誰でも打てる
・140キロ台前半の真っ直ぐも誰でも打てる
・優先的に大和選手を使う理由は特に見当たらない
・誰でもいい場面でばかり使われているので、逆に大和選手でもそんなに問題ないかも
・妙に「勝負がかかる」ように見えるところで出てくるから必要以上に心象は悪くなりそう

おわりに

 大和選手の今シーズンの起用を改めて振り返る中で感じたことがあります。それは功労者のベテランから若い戦力に移行していくにあたってかなりいい推移の仕方ではないか、ということです。昨シーズンはショートでのスタメン機も多かった大和選手ですが、今年は相手先発が「相性の良い」ドラゴンズ小笠原慎之介選手のときなどの一部に限られ、基本的には代打からの途中出場がメイン。納得感のある限られた起用に留めることで、加齢による衰えなどによるマイナスを最小限に押し留めているようにも見えます。

 とはいえ終盤のあと一本出れば、というような場面で起用されることも多く、見ているファンとしてはフラストレーションが溜まることは多くなるかもしれません。特にここまでチャンスで仕事をこなしてくれていたことによる期待値の高さも相まってどうしても文句のひとつも言いたくなるかもしれません。
 ですが、終盤のあと一本出れば、という場面は裏を返せば、そこまでのより長い期間で一本出せなかった展開の結果とも見ることができないでしょうか?これを書いている今も1点ビハインドの8回1アウトに代打大和がコールされ、結果としては大和選手はゲッツーに倒れてしまったのですが、そもそもそれまでの7回でもう1点取っておくほうが遥かに確率が高い話ではないでしょうか?スタメンしっかりせい。大和が叩かれてるやんか。

 2018年に大和選手がFAで横浜を選んでくれた時の気持ちを忘れたことはありません。石井琢朗以来ショートを固定できなかったチーム、勝つときも負けるときも大味だったチームに、こんなに野球が上手い選手が来てくれるなんて!筆者はその感動を今も覚えています。

 思い出に浸りながら、このあたりで筆を置きたいと思います。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

参考資料

各種成績

平均球速、球速ごとのデータ


この記事が参加している募集

#野球が好き

11,019件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?