祈り

僕の母親は毎朝、祈りを捧げる。相手は仏。

別に仏教徒というわけではないけれど、
実家に帰ってくるといつも見る日常的な光景。
それが母の祈りなんだ。

昔、どのくらい昔かは覚えていないけど、
何を祈っているのかを聞いたことがある。
「家族の安全を毎日祈ってるんだよ」と言っていた。
いや、もう仰っていたと言っても良いかもしれない。

母の人柄がこの朝の祈りに滲み出ているようで、
息子として、人として言葉にならない気持ちになる。
まあ、息子としては自分のために手を合わせてもらいたい気もするけど。

そんな母の姿を、僕ら家族は”アタリマエ”の事として
目を向けなくなっている。
それでも祈り続ける母親。

誰かの声にならない祈りを、僕は受け取れているだろうか。