【ライブ観戦史】Wayne Shorter Quartet 2004


【この記事の位置づけ】


この観戦史シリーズは2004年ごろNiftyのブログに書いてたものであるが、その中から2004年2月9日みたウェインショーターのライブについて書いたものをサルベージしてみる。

ライブの様子


場所は文京シビックセンターというところ。通勤途上の丸ノ内線から毎日見ているビルだったのだが、こんなに立派なホールがあるとは知らなかった。なんでも2千人近くはいるそうで、天井が高い立派なところ。ほぼ満席状態。
さて、定刻の19時より多少遅れたが、東京JAZZ 2002の時と同じメンバーがステージに揃い、ショーターの「ボゲッ」という音で演奏開始。すぐにベースが怪しげなパターンを弾き初め、なんとなくピアノとドラムが絡み、ショーターがたまにホゲホゲと吹く・・・

というのが、30分くらい続いた(笑)。

まあ、途中でスタンダードみたいなコード進行になった瞬間もあったし、ベースとピアノは譜面見てたし(笑)、なにやら連続的に数曲を演奏してたんだろう。それにしてもあんまり盛り上がらないまま怪しげな緊張感のある演奏が続く。そのうち、一瞬最近私もたまにやっている”Aung San Suu Kyi”のメロディが出てきて、それを演奏しているようだったが、小節数とかコード進行とかどこまでちゃんとやっているのか判らない(一回だけリズム隊のキメ(五拍子の所)がビッチリとあって吃驚した)。曲と曲の間(?)は大抵ピアノとサックスのデュオのような状況になって、サックスが吹き終わるとピアノが次のモチーフを提示して進行する、というような感じで演奏が進んでいくのだが、3~40分経ったとき、恐らく当人達は続けようとしているタイミングで一瞬音が切れ、勘違いした(業を煮やした?)観客が拍手をし、回りがそれにつられて大拍手となって演奏を停めざるを得なくなることになって、メンバー一同苦笑い。

その後、また怪しげな展開から、なんと”Joy Rider”を演奏(これは格好良かった)。この曲はキメで終わり、また大拍手。また怪しげな展開が続き、ちょっと聴いたことのあるようなメロディの断片が聴けたり(Sanctuary?)、ドラムが比較的強力なビートを出し始めたりと、多少盛り上がったのだが、そんなことをやっている間に終わり。

その後は、アンコールに応えて”Juju”を演奏して本当に終わり。

感想

さて、改めての感想だが、何といったら良いんでしょうかねえ。演奏の全体イメージは「霧の中を歩いている」ような感じという表現がぴったりか。ショーターも吹いたり吹かなかったり、リズム隊もショーターに反応していろいろやるのだが、「よっしゃ、いくぞー!」というところは殆ど無くて、いわゆる無調性、無ビートで断片的なコールアンドレスポンスが主体のフリー状態が続く。たまに、ちょっと知っている曲の断片が出てきたり、比較的明確なビートが聴けたり、バンド全体がぐっと盛り上がったり「お、霧が晴れたかな」と思わせる瞬間も有るのだが、なかなか長続きしないですな。あ、今思い出したがショーター、怪しげな口笛も吹いてたぞ。

何かのインタビューでショーターは「このカルテットでは昔の曲を”De-composition(作曲の逆の意、「解曲」とでもいうか)”してるんだ」みたいなことを喋っていたが、なるほど、2年前にはもう少しわかりやすかったAung San Suu kyiが跡形もなくなってたりして(笑)、De-compositionの結果どんどん音楽としての抽象度が高くなっている印象。De-compositionというよりはDestruction(破壊)に近いかも。というわけで、もしかすると実はバンドとして必要以上に成熟(煮詰まっているともいう)してしまっているような印象を受けた。いや、駄目だといっているわけではなく、そうとうに高度な美しい音楽で、それなりに感銘を受けたんですけどね。でもちょっとやりすぎかと。

さて、このショーターカルテットのアプローチを数日前に書いたWRについての考察と比較してみると面白い。ショーターははやりメロディ(テーマだけではなく即興演奏の部分も含む)中心のアプローチで、バンドはショーターの吹くメロディに対してなんらかのムーブメントを興すことが求められている。ショーターのメロディがあまり調性とかビートとかを意識しないで「ポロッ」と置かれちゃうので、それに反応しようとすると、バンドとしての抽象度が増すのも当然か。瞬間瞬間に美しさを求めていくので、いきおい内省的にならざるを得ない。それでもFootprints liveや東京JAZZ 2002の時は「キターッ!」と思わせる瞬間があったんだけどな。

一方、ザヴィヌルは「リズム・ビート・グルーブ」といったものを重視して「反復・盛り上がり・発散」といった人間の根元的欲求に訴える。当然ジャズの即興演奏とかコールアンドレスポンスといった手法も使う(それも相当高度なもの)わけだが、それはどうも手段であって、更にいえばあんまりメロディに固執するイメージがない。バンドとして抽象度の高いパートもあるが、一旦盛り上がり始めるととことんイッテしまうことを求める。
というわけで、今から考えるとバンドに対する考え方がまったく違うアプローチの二人であってよく十数年も一緒にリーダーをやってたもんだと改めて感心したりしてます。

さて、コンサートの様子に戻る。まあ美しいとはいえ、全体的に抽象度の高い、言い換えると「分かりにくい」音楽が続いたと思うのだが、会場は何故か大拍手でスタンディングオベーション。う~む、こちとら頭の上に???を散らかしていた状況だったのになぁ。

私は13列目中央に近いところという大変良い席で見たのだが、私の後ろの列は(多分)業界関係者、すなわち評論家の皆様臭い方々が並んでいたようで、その方達もコンサート後はなにか困惑しているような顔をしていた。さて、どんなコンサート評が出るか楽しみ楽年のライブ2004年のライブ

【追記】

2004年のライブ、You Tubeで検索してみたんだけど見つからないので、その前年の映像をリンク。一曲目がJoy Riderだったりして、多分雰囲気はこんな感じだったんだろう。





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