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クラシック・ミニの専門店が生き残る為の偉大な選択

昭和の頃はタイヤ販売店だった勝又一明社長はミニ(ローバー)が大好き。ミニに乗り、ミニを修理し、ミニの仲間との出会いと集いを繰り返して来ました。気が付くと街のタイヤ屋さんはミニの専門店『ケントガレージ』になり。いつしか店は業界でも有名な人気店に成長。70を越えたオーナーが振り向くと、父の背中に憧れた2人の息子が頼もしい技術者・経営者としてお店を切り盛りしている。

これは、そんな『ケントガレージ』の長男(専務)が話してくれた、お店が16年前に行った勇気ある決断とその結果のお話。

クラシックカーのディーラーは、仕入れて、修理して、売って、アフターサービスする。のが仕事です。有名店でもあり、もはや業界のマスコットにもなっている社長を慕いお客さんが集まり、色々なカーイベントを主催したり、専門店同士のネットワークを作ったりしているうちに、ケントガレージは大きな問題に直面します。お客さんが居るのにこのままだと売る車が無くなるという事態が迫ってきたのです。

専務

このままだと、経費をかけてお客さん集めても商売にならない。だから恐いけどお客さんを選ぶことにしたんだ。

八木(筆者)

お客を選ぶ、ってどうやって選ぶんですか?

専務

思い切って、安い車(状態の悪いクラシックカー)の扱いをやめて、同じ車種、同じ走行距離でも、3倍、4倍の値段の高級車だけを販売することにしたんだ。

八木(筆者)

そもそも安い車の値段も、それが状態次第でいくらまで上がるのか教えて下さい。

専務

カーセンサーやgooで検索すると分かりやすいけど、ミニの中古は60万円くらいから販売してる。今そこにある車は、年式や走行距離だけで検索するとだいたい相場は70万円位から販売している。でも、ウチのこの車「ローバーミニ1,3I」は214万円の値をつけてる。

八木(筆者)

ホント、丁度3倍ですね。3倍の値段で買う人ってどんな人なんですか?

専務

一言で言えば、ウチで販売する214万円の車にその価値が充分あると思う人が買っていきます。でも、そんな乱暴な言い方だと答えになってないから、逆に八木さんは、70万円でローバーミニを買う人はどんな人だと思います?

八木(筆者)

予算70万円でミニが欲しい人だと思います。

専務

ですよね、でも先に話した通り70万円の車は、安い状態の車なんです、つまり買って暫くたつと・・・

八木(筆者)

故障する

専務

残念だけどその通り、そして故障したクラシックカーを治すには、お金(部品)と技術と時間が掛かる。ちょっとした故障から、どんどん不備が見つかって20万、30万っていう修理代が気軽に発生します。でも残念ながら予算70万円で車を買った人に修理の予算は無い。って言う事がほとんどのパターンです。そういうオーナーがどう言う行動に出ると思います?

八木(筆者)

買った店に、クレームつけて「格安で直せ!」って迫る?

専務

まあ、そうなるよね。幸いにも当時のウチのお客さんは例え70万で買った人でも修理費をゴネたりする人はいなかったけど、ウチが売った車が半年で故障で戻ってきた時、正規の修理代金がなかなか請求しにくいのも事実。それでも部品の値は一緒だから、我々の技術料を下げてその車を修理することになる。

八木(筆者)

そうすると新しく売る車を直す時間がどんどん無くなる?

専務

その通り・・・「お客さんが居るのに売る車が無い」の法則発動だよ。そもそもさ、ウチで買った車には、バックウィンドにこのケントガレージのシールが貼ってあるでしょ? その車が、道端で故障して止まってるのを助けに行くのって辛いのよ、その姿って「クラシックミニが壊れやすい」っていう印象にも繋がるし、ましてやそこにウチのシールが貼ってあったりしたら「ケントのミニは壊れやすい」ってイメージなわけでしょ?

八木(筆者)

確かにイメージ悪いですよね

専務

だから、壊れない車(ミニ)を売ることにしたんだ。

ただ走る状態にして売るんじゃなくて、1台1台の車を売るまでに目的地やドライバーを変えて何度も何度も試乗して、エンジンだけじゃないよ、ドアやインパネ、シートの調整どかちょっとした不具合や綻びを徹底的に探して、買ったオーナーが多少無理な運転をしてもキッチリ走って壊れない状態、極端な言い方、新車よりも安定した車に仕上げる。

八木(筆者)

そんだけやれば、壊れないミニって言えますね。

専務

安く売って、安く修理して、また壊れて、安く修理してって、繰り返しても誰もハッピーにならないし、トラブル場所に急行して運ぶことを考えたら、壊れない車を売ることが大事だって気づいたんだよね。

八木(筆者)

じゃあ、ケントガレージは大繁盛ですね。

専務

たくさん仕入れて、じゃんじゃん直せば、儲かるけど、この「じゃんじゃん直す」っていうのが難しくてね。ウチの基準で直してると注文ばかりが溜まっちゃう。今も21台の車が修理を待ってる状態で、お客さんにしてみたら穏やかじゃないよね。

八木(筆者)

じゃあ、今のところは「直す人が増えれば儲かる」に訂正ですね。

専務

ホント、「妥協しない腕の良いメカニック」が欲しいな〜


意図しない、雑談から記事にしてしまいました。興味の沸いた人、思わず壊れないミニが欲しくなった人、それ以上に妥協を許さなくて職場を探してるメカニックの人、お問合せはケントガレージに!


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