出崎版/OVA版ブラック・ジャックとは

というわけで表題通りです。


何故かキリコが紹介をしている(笑)こちらのサイトにもある通り、ブラック・ジャックは沢山の映像作品にスターシステム的に出演し、『ブラック・ジャック』自体の映像化もアニメ実写双方で複数回されています。その中でブラック・ジャックを演じた声優さんも何人かいます。

伊武雅刀(1949~ )

俳優としても活躍、デスラー総統も演じた方です。どちらかと敵対寄りのブラック・ジャックが多いかな?

野沢那智(1938~2010)

指導の厳しさで知られる大御所中の大御所。後のテレビアニメ化では琵琶丸を演じました。

大塚明夫(1959~ )

言わずと知れたダンディボイス。今現在ブラック・ジャックといえばこの人!なお方。昨年還暦を迎えられたそうです、おめでとうございます。

この内大塚明夫ブラック・ジャック、が定着したのが『OVAブラック・ジャック』となります。元々別の方の予定だったがその方の体調が悪く、代打で大塚さんがやったらハマり…というのは有名なお話のようで(全然知りませんでした、お恥ずかしい)。

と、そのOVA版/出崎版ブラック・ジャック(以下出崎版とだけ言います)は1993年から2000年にかけて出崎統監督の下で10話が制作され、その後出崎監督の没年である2011年にラストワーク、としてFINALと銘打たれ11話と12話が制作されました。

作風としては先の記事で上げた表情豊かなブラック・ジャック…ではなく、落ち着き大人びたクールなブラック・ジャックがメインに制作されています。

おいおいそれではブラック・ジャックの魅力が…とお思いの貴方、そんなことはございません。

出崎版のブラック・ジャックは身長も高く身体付きもゴツい、ハードボイルドな…原作からさらに数年が経過したかのようなダンディなブラック・ジャック先生です。

どこか諦めたような目線すら持ち合わせ、冷静に淡々と患者に向き合うことが多いですが、中身はちゃんと我らがブラック・ジャック先生。ちょっと感情的に声を荒げたりもしますし、生きようとする患者に必死で全力なのは原作やテレビアニメ版と同じです。

そうして年齢が高くなったのに合わせて対象年齢も上がったのか、手術シーンの描写も割と容赦ありませんし女の裸やらセクシュアルでアダルティな要素も有り、全体的に狂気を孕んだダークな展開です。

医療ドラマだってのにバンバン人が死んでいきます、治そうとした患者や助けようとした人々が物凄い勢いで命を落とし、全滅エンドも珍しくありません。そんな話ばっかりでもありませんがね、勿論。

ただストーリーがそんな救われないだからこそ、ブラック・ジャック先生が「救い」の体現者かのような側面がより強化されています。シリアスにダークに、人が下手したら原作以上に死ぬような世界で最後の希望として縋り付く先という面が非常に強いです、女性患者だと号泣しながら訪れた先生の服を掴むことすらあります。

描写として他に挙げるべき点といえば、この出崎版は先生のモノローグが物凄く多いです。ブラック・ジャックのアニメでは話数はKARTE:〇〇という様ないかにも医者な表記をするんですが、まるでカルテを後から読み返しているかの様な造りになっています。(作中で先生は「必要のない限り過去のカルテは思い出さないようにしている」とも言ってますが)

しかしそうなると話は重い、先生はハードボイルドで感情移入しにくい…となるわけですがそこで出てくるのがピノコちゃん。

出崎版は全体的に海外や自宅診療所から離れた場所での診療治療の話が多いので、大体の場合ピノコは同行しない場合長期間帰って来ない先生に怒りの電話を入れてます…ブラック・ジャックに「死ねー!」なんて言えるのはこの子くらいでしょう。

同行した時はストレートな感情表現の窓口になってくれます。カルテVIのある場面でピノコが耐えきれず泣き出すシーンはホントに何も報われないし救われないしなトコロでしんどくて仕方ないんですが、先生はそこで泣いちゃくれません…だからピノコが代わりにその悲しさや嘆きをぶつけるかのように泣き叫ぶのです。

それと、この世界のピノコはテレビアニメ版や原作に比べてかなり大人っぽいです。言葉もかなり普通の言葉遣いに近いですし、ワインらしきものあおりながら飯をかっ食らうシーンまであります。さらにはピノコのモノローグとして大人ピノコでのナレーションもありまして、その中では先生への恋や愛が叶わないものと諦めているような言葉もあるくらい。

そして何よりも圧倒的な映像美。

製作年見てもわかるように、1〜10話はなんと「セルアニメ」です。セル画を何枚も何枚も描いてそれを動かしてるんです。

デジタル程自由の効かない環境であるセル画でこれだけ生き生きとしたキャラ、美しい風景を描けるというのはとてつもないことです。ロストテクノロジー、オーパーツ…セル画やセルアニメにはそういう言葉を当てはめたくなる「魔力」があるように思います。

あと出てくる人が皆いい声なんですよ(笑)。

ブラック・ジャックの大塚明夫さんをはじめ初回から大塚周夫さんとの親子共演、その後も羽佐間道夫さんに滝口順平さん、土師孝也さんに青野武さんや玄田哲章さんに麦人さん、大塚芳忠さんに古谷徹さんと挙げればキリがない程に「ええ声」の男性声優が押し寄せてきます。

後に話数毎の感想でも書きますが、カルテⅠのクロスワード役の大塚周夫さん…ホントにカッコイイんですよ。笑い声の演技聞いて涙出たのは初めてです。

そしてキリコの声は最近結婚された、伝わる人には所長で伝わる山路和弘さんです。出崎版のキリコは何故か敬語キャラなんですが、それがまた合ってるんですよね…。

勿論女性陣も凄まじいですよ、水谷優子さんを筆頭に林原めぐみさんや土井美加さん、井上喜久子さんに潘恵子さんとこちらもベテラン達が総出です。カッコイイんですよこの作品の女性たち!皆強いんです。ここはブラック・ジャックならではですね、彼自身が母親を何よりも敬愛、崇拝する人ですから。

印象深いのは2話のメインヒロイン役の林原めぐみさんでしょうか。自室のとあるシーンなんか鳥肌立ちました。

さて何故出崎版ブラック・ジャックの感想を今更書こうかと思ったかというと…いや単純に面白かったってのと、後は検索してもなかなか感想が出てこなかったからです。

昔の作品なので仕方ないんですけど、どうも薄味だったり「ホントに見たのか!?」って感想ばっかだったりで…。じゃあいっちょ俺が書くか!と思い至ったわけです。

次回からは各話の感想を書いていこうと思います。よろしくおねがいします。

お読みいただいてありがとうございました。

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