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行き詰まったら島に行け①~神が集う島 神津島~ 往路編

人生が行き詰まったので、神津島という島に行った。

行き詰まった具体的なきっかけは特になかった。
仕事はそこそこ順調だし、プライベートにもなんら問題は無い。ただ、毎日毎日なんとなく閉塞感が積もり、崩壊しかけていた。

そんな社会人3年目の8月、ベッドに横たわって鬼束ちひろを聴きながら、「これはダメだ、自分を【解放】しないと!」と思い立った。

とにかく海が見たかった。海はいい。母なる海とか言うように、すべてを癒し、赦してくれる。海の前にいる時、私たちはひとしくちっぽけな存在でいられる。
星と空も見たかった。都会の喧騒に揉まれ、空を見上げる機会も少なくなった。昔は、凍えるような寒さの中で流星群をひたすら待ったり、どこまでも大きくなる入道雲に夏休みの期待を乗せて遊んだりしたのに。

そこで、以前見た「星空に浮かぶ島」というコニカミノルタのプラネタリウムでの記憶を頼りに、神津島という島に行くことを決めた。

島の詳細はWikipediaからいくつか引用する。

神津島(こうづしま)は、伊豆諸島の有人島の一つである。東京都神津島村に属する。

Wikipedia

島名の由来は、伊豆の島々を作るために、神々を集めて話し合う場がこの島であったことから。昔は「神集島」と書いた。

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要するに、いかにも癒されるパワースポットがありそうな島である。コニカミノルタも「ヒーリングプラネタリウム」と銘打っていた。 今回の旅行先にはうってつけである。

神津島への交通手段は、
・大型夜行客船(所要時間:約10時間)
・高速ジェット船(所要時間:3時間45分)
・飛行機(所要時間:45分)
の3通りの方法がある。

いくつかの交通手段を体験してみたかったため、行きは夜行客船でのんびりと、帰りは飛行機でサッと帰ることにした。

往路に利用した夜行客船は、23時に竹芝港を出て8:55に神津島に着く。上述したように、実に10時間の旅だ。
最初は何も考えずに2等和室を予約していたものの、ものを広げて散らかしまくる悪癖がある私には無理だと悟り、ある程度ゆとりがあるであろう特一等室へ変更した。手痛い出費だったが、他人に迷惑をかけないための必要経費である。

実際に乗り込んでみると、これがなかなかどうして、とても快適だった。繁忙期を過ぎて予約が埋まっていなかったのか、2段ベッドが2つ、つまり4つベッドがある個室を1人で利用出来た。
衛生面も文句の付けようがないし、都内の1万円~1万5000円のビジホ程度のサービスは整っていた。ホテル+移動が付いて18000円であれば、まぁ妥当と思えるクオリティだった。

ただ、ここで私は第一の関門に突き当たった。
現金がないのである。
日々QUICPayに頼りきりの私の財布には、34円しか入っていなかった。
船のサービスはすべて現金であり、私は特1等客室に乗っていながら飲み物のひとつも買えない間抜けな乗客になっていた。
一縷の希望を託して案内所の船員に「現金以外が使えるところってないですよね…?」と聞くも、首を振られるだけであった。

そんな中、救世主が現れる。いかにも「サーフィンが趣味です」という見てくれをした女性が、「現金ないの?Paypayくれれば渡せるよ?」と声をかけてくれたのだ。
(ここで彼女から3,500円のPaypayを生贄に現金3,200円を召喚した(いただいた)訳だが、実際島にはATMもなかった為、ここで受け取った3,200円で何とか食いつないだ。彼女は正しく救世主だった。)

伊豆諸島に行く読者諸君においては、現金を事前に、出来れば前日までに用意しておくことをおすすめする。コンビニも無い島に向かうのに現金を下ろさない馬鹿がそんなにいるとは思いたくないが、ここにいた訳なので。

紆余曲折ありながら眠りについた私だが、更に予想外の事態も起こった。
今回乗った「さるびあ丸」は、大島、利島、新島、式根島を経て神津島に着くという航路をとる。そして、最初の停泊地である大島に着くのが、朝の5時である。つまり、0時過ぎにようやく眠りについたかと思うと、5時間も経たないうちにバカデカアナウンスによって無理やり起こされるのである。このバカデカアナウンスは、冬眠中のクマでもない限り絶対に起こすという強い意志を感じるバカデカさであった。
そんなこんなで、私はうつらうつらと寝ては起こされ、寝ては起こされを繰り返し、最後のバカデカアナウンスでようやく目的地に到着した。

と、往路だけで2,000字近くになってしまったので、1度往路編として区切ろうと思う。
今回は単なる旅の備忘録のような形になってしまったが、次回、海巡り編はもう少しポエティックな読み応えあるものにできたらと思う。

↑さるびあ丸のイメージソング。出航時船内で流れ、テンションが上がった。

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