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第9回公判より被告人質問全文

被告人氏名: 大藪 龍二郎(出頭)
被告事件名: 大麻取締法違反
公判をした日: 令和5年10月12日
公判をした裁判所: 前橋地方裁判所刑事第一部
裁判官: 橋本 健
裁判所書記官: 諸見 ひかり
検察官: 筒井 督雄
出頭した弁護人: 丸井 英弘(主任)、石塚 伸一


弁護人(石塚)
まず最初に、捜査手続のうち現行犯逮捕の過程についてお伺いします。最初、何の容疑で警察官に職務質問を受けましたか?

自動車運転、道路交通法違反の疑いでしょうか。

弁護人(石塚)
道路交通法違反ということで職務質問を受けたということですね?

はい。

弁護人(石塚)
その後、身分を証明するために何か提示するように言われましたか?

はいすぐに運転免許証を提示しました。

弁護人(石塚)
その際、免許証を提示すると何か警察官の態度に変化はありましたか?

まず運転免許証を持って勝手にどっか後ろの方に行ってしまって、少し経ってから、ちょっと降りてきてくださいと、後ろに来てくださいって言われました。

弁護人(石塚)
この法廷で警察官がおっしゃってたんですが、ラテン系の服装をしている人は大麻が怪しいというふうに教育を受けていると。その日、大藪さんはラテン系の服装をされてましたか?

自分ではしてないと思います。

弁護人(石塚)
大藪さんには何か前科がありますか?

前科はありません。

弁護人(石塚)
刑事処分を受けたことはありますか?

ありません。

弁護人(石塚)
何か捜査対象になったりしたようなことはありますか?

はい。以前、一度家宅捜索を受けたことがあります。
それは話してもいいですか?

弁護人(石塚)
どうぞ。

知人の家に仕事で出入りしていたんですが、その知人の家に捜査が入 って、そこに出入りしていたと思われる人全員にまた捜査が来たという流れでうちに来ました。

弁護人(石塚)
何か処分はありましたか?

いや、たまたま寝室の机の引き出しにお守りとして僕は大麻の種を持っていたんですけど、それが出てきて、それを押収物として押収されたってことはあります。

弁護人(石塚)
大麻の種を持っていたということですね?

はい。

弁護人(石塚)
何か処分があったというような連絡は受けていますか?

ないです。

弁護人(石塚)
次に、その後、警察官の職務質問があったんですが、誰かに対応について助言を乞いましたか?

すぐに丸井英弘弁護士に電話しました。

弁護人(石塚)
本日おられる主任の丸井弁護士に連絡をされたということですね?

はい。

弁護人(石塚)
そうしたところ、どのような指示がありましたか?

まず、証拠物は自分のものと認めなさいと。そして証拠物は任意で提出するので、任意での捜査をお願いしなさいと言われました。

弁護人(石塚)
その時、現行犯逮捕されましたね?

はい。その後、現行犯逮捕されました。

弁護人(石塚)
任意で応ずると言っていたのに現行犯で逮捕されたということですか?

はい。その時に僕は先生に言われたとおり伝えたのですが、その時に答えは、これから担当の者が来るので、その人が来てその場で判断するということでした。

弁護人(石塚)
そうすると、その際、何か現行犯逮捕の前あるいは後に押収されましたか?

証拠物として大麻とみられる植物片と携帯電話を押収されました。

弁護人(石塚)
それで検査をしに別の警察官来られたんですね?

はい、そうです。

弁護人(石塚)
どのような検査をされていましたか?

到着して、まず大麻かどうかを試薬に入れて、その色の反応を見て、それが色の変化で大麻かどうかを測る簡易試薬検査を行うという説明を受けました。

弁護人(石塚)
結果については聞きましたか?

結果は陽性反応だと言われました。

弁護人(石塚)
全体を通じてなんですが、捜査は丁寧でしたか?

丁寧という表現はちょっといえないかなと思っていまして。

弁護人(石塚)
じゃあ、例えば威圧的であったとか強引であったとか感じたことはありますか?

はい、それはすごく感じました。

弁護人(石塚)
どのようなところが威圧的である、あるいは強引であると感じましたか?

まず車の後ろに回って、いきなり開ロ 一 番に過去 1年間に大麻の事件に関わったことはないですかというような質問をされたので、すぐありませんと答えました。そして、もう 一 度全く同じことをより強いロ調で言われて、また同じようにありませんと答えたら、また同じ質問をさらに強い口調でという感じで、どんどん威圧的になっていく感じでした。

弁護人(石塚)
何度も同じ質問をされたということですか?

はい、少なくとも3度ぐらいはやり取りがありました。

弁護人(石塚)
そうなると、それに答えなきゃならないというふうに思いましたか?

はい。もう何を言ってもこちらの意見は通らなそうだなというような気がしたので、渋々持ち物検査に応えました。

弁護人(石塚)
任意捜査だというふうに言ってましたか?

はい。そもそも何度も無線で聞いた後の態度が変わったのは、僕が何か大麻の事件に関わったことがないんですかっていうことをずっと聞いていて、それは僕は先ほど言ったように種しか出てきてないので、前科があるという認識は全くなかったので、そのことがもし原因であればという前提で、何でそんなことを知ってるんですかって言いました。それは何でそんな前科でもないことを知ってるんですか、おかしくないですか。そして、そんな誰にも知られたくないようなプライベ ートな情報を何でみんなで共有してるんですか、おかしくないですかと言いました。

弁護人(石塚)
前科っていうのは法律的にいうと最終的に裁判所で何らかの処分を受けたということを意味するんですが、そういう意味での前科はありますか?

前科はありません。

弁護人(石塚)
少年の時とか未成年の時に少年院に行ったとか、そういうようなことはありますか?

ありません。

弁護人(石塚)
次に、ここでは大藪さんが大麻草を持っていたということが本件で問題となってるんですが、大麻取締法で大麻草とは何かについて御存じですか?

はい。大麻取締法には大麻草、カンナビスス ・サティバ ・エル、及びその製品、ただし、成熟した茎と種は除くとあると思います。

弁護人(石塚)
先ほど種が家にあったっていうのは、その除くつて書いてあるところの部分にあたるから大麻草にはあたらないというふうに考えたってことですか?

はい。鶏の餌も七味唐辛子も入ってるものなので。

弁護人(石塚)
あなたの認識では、いわゆる大麻草にはカンナビスス ・サティバ ・エル以外のものがあるというふうに認識していますか?

はい。

弁護人(石塚)
例えばどういうようなものがありますか?

ほかにも、大雑把でしかないと思うんですけど、カンナビスインディ力やカンナビスルベラリスなど、そういう名称のものはあります。

弁護人(石塚)
あなたが所持していたのは確実にカンナビスス・サティバ・エルだというふうに認識していますか?

全く分かりません。むしろ両方なんじゃないかと思います。

弁護人(石塚)
両方というのは?

インデイカとサティバの可能性、両方あるんじゃないかと思っています。

弁護人(石塚)
薬物の事案ではよく検査のために尿を出すようにつて言われることが多いんですが、今回は尿の提出を求められましたか?

いえ、ありませんでした。

弁護人(石塚)
それでは、大藪さんが大麻を吸引するというやり方で摂取していたということはお認めになるんですか?

はい。

弁護人(石塚)
その上で大麻の吸引がなぜ始まったのかについて説明していただけますか?

もともと僕、2 0 0 0年ぐらいから症状が出だしたんですけど、 パニック障害といわれている病気が発症するようになって、それ以来まずデパスという薬を、正式に処方されたわけじゃないですがそれを飲んで、そっからそれを飲むようになったんですけど、それを飲みだして、最初はすごい効くから安心して飲んでたんですけど、だんだんもうそれが効きすぎるという感覚で、それがないと不安になるっていうふうに自分の中で加速していってる、 パニ ック症が。っていう中で大麻という存在に出会ったという流れです。

弁護人(石塚)
今、それっていう言葉が出てきたんですけども、向精神薬のデパ スをパニック障害の治療のために使っていた?

はい。

弁護人(石塚)
使っていると効果があった?

効果がありました。

弁護人(石塚)
それを何度も使うようになって、頻繁に使うようになって、ないと不安になるようになっていった?

はい。

弁護人(石塚)
そうすると、ないと不安になるんだとすれば、ずっと持ってるとかいうようなことをされてましたか?

はい。実は逮捕された時も財布の中に1錠ずっと入れっぱなしではあるんですけど、お守りのように安心材料のように持っていました。

弁護人(石塚)
お守りつていうのはなかなか理解しにくいんですが、お守りというのはどういう意味でお守りというふうに言ってるのかを説明してください。

まず、 パニック症の症状っていうと不安が襲ってきて居ても立ってもいられなくなるということから始まり、息苦しくなって息ができなくなってくるんですね。それで最終的には今にも叫びたくなるような焦りになって、それで気を失ってしまうようなことも何回か経験したことがあるんですが、そういうときにそれがあれば、やはり強いので楽になる、収まるのは間違いないんです。ただ、それがないと、例えば忘れていっちゃってどっかに泊まりに行くとかっていうときにないと分かった瞬間にパニック症の症状が現れるっていうぐらいに自分の中ではすごく依存しているな、怖さがあったということです。

弁護人(石塚)
デパスを持っていれば急な発作のときに対応できるけれど、ないとそれだけで不安になるようになってきた?

はい。

弁護人(石塚)
常に持つようになってきた?

はい。

弁護人(石塚)
それが大藪さんの中ではデパスヘの依存じゃないかというふうに考えた?

そうです。

弁護人(石塚)
そういう状態だったのが、大麻を吸引するようになったっていうのはどういうきっかけですか?

友人にそういう悩みを相談した時に大麻ってものがあるよっていうことで試してみたところ、デパスで感じるような強さはないですけども結果的にすごくよく寝れたので、これはすごく自然由来だし安心だなと思ったのが素直な感想です。

弁護人(石塚)
大藪さんは勉強しに留学したことはありますか?

はい。2004年から3年半ぐらいロンドンに行ってました。

弁護人(石塚)
その時もやはり同じようなパニック障害が発作として出てくるようなことがありましたか?

はい。ロンドンに渡って3か月ぐらいしてから、その間はスタジオも持っていないで様々なアーティストを訪ねたり、作品見たり、いろんな展示で絵を見たりしてる毎日が3か月続いたところパニック障害がすごく襲ってきて、これがすごい深刻なものだったんですね。なぜかというのは先ほど申したように、やっぱりそういう身近な、すぐに自分の仕事に没頭して帰れるような、そういう場所が身近にない日が続くと、いろんなところで見た、自分ならこうしようああしようとか自分だったらこうしようっていうアイディアが手を動かさずにいると余計不安が増長してパニック症になるって、これ結構すごい循環として悪くて、それで結構深刻でした。

弁護人(石塚)
そういう、今お話は創作活動と、それとパニック障害ということが何らかの形でつながってるということですか?

はい。

弁護人(石塚)
ちょっと創作活動の方に伺います。創作活動を大藪さんされてますよね?

はい。

弁護人(石塚)
どういう活動されてますか?

陶芸家として活動しています。

弁護人(石塚)
イギリスにいられた時も陶芸の活動をされていたということですか?

はい。

弁護人(石塚)
陶芸という創作活動、芸術活動に大藪さんの場合、大麻というのが一 定の役割を果たしていますか?

はい。

弁護人(石塚)
どのようなものか説明していただけますか?

例えば新しいアイディアなどを発案したり整理したりするとき、あるいは自分の思いを体で表現したりするときなんかには一 番重要なことは、まず心を開放的にできるだけ持って、余計なうんちくというか常識というか理屈みたいなものは極力なくして、素直な自分、無垢な自分を一 度持っていきたい、それが心躍らせて美しい線とか美しい形っていうものを生み出すと思ってるんですね。それには大麻がものすごく有効で、大麻を使うと私の場合は先ほど申したように本当の自分というのか、子供の頃の無垢だった自分みたいな部分と今の自分が溶け合って、こうしたいああしたいってものがスムーズに出てくる。なので、心躍らせて楽しくなった中で、例えばスタジオからの帰り、いつもの道で全くいつもと気づかないものに気づいたり、音楽聴いて、いつも聴いてるはずの曲がすごい涙が出るぐらい感動するポイントがあ ったり、そういうことが生まれるのも日頃抑え込まれているような社会常識みたいなもので縛られてる気持ちがなくなるといった中で心から遊びを楽しんでいるからこそ見る人が心に響くような作品ができるんじゃないかと思っていますので、そういう意味で自分の作品との中に影響力があるかといえば、ものすごくあると思います。

弁護人(石塚)
そうすると、大藪さんの場合、前の方でお聞きしたパニック障害という病気の治療あるいは寛解ということと、本業である創作活動との関係で大麻というのはとても重要な存在であるということでよろしいですか?

はい。

弁護人(石塚)
だとすると、大藪さんが生きていく上で大麻がなければ生きていけないんだとすれば、いわゆる大麻という薬物に対する依存症ではないかという疑いがあると思うんですが、そのことについては何か大藪さんの方で言いたいことはありますか?

はい。まず、依存とは何かということもありますが、私は今ここにありますが、国立精神神経医療研究センター病院のマツモ トトシヒコ先生に大麻の使用障害に該当しないとする診断書をいただいております。
(調書末尾添付の診断書を示す)

弁護人(石塚)
要するに記憶の確認ということなんですが、マツモト先生という精神科の先生のところに行って診断を受けたということでよろしいですか?

はい。

弁護人(石塚)
使用障害ではないというふうに診断していただいたということですね?

はい。


主任弁護人(丸井)
あなたは本件公訴事実に対して弁護人通じて釈明をしてありますが、現在までその釈明の回答がないままに裁判進行してしまって、ちょっと中途半端な形で進んでるんで私少し残念なんですが、未だに検察官の方から何ら回答もないし、さらに検察官の立証活動においても大麻の作用については立証しないということで全く現在も実施されてません。また、大麻の有害性についての立証も検察官やってないんですけど、それで今回の被告人質問という段階を迎えたんですが、そういう裁判の進行についてあなたはどんな感じでいますか?

まず、私は2 2日間牢屋に入れられて社会的制裁も受けたと感じています。 しかし、検察の方々はさらに重罪であるからもっと強い刑罰を与えるべきだという主張なんだと思うんですね。その中で僕は今の大麻取締法に書いてある文言について幾つか分からない点があるので、それをまず教えてもらいたい、その解釈はどういうものかを教えてもらいたいというようなことで、そういったことをある意味なぜ検察としてはこれこれこういう考えているからしてこれだけの重罪を犯したんだっていうことを教えてもらえないのかっていうのが素直な疑問です。そして、その主張を裁判所が最終的に判断して決定するんではないのかと思うんですが、なぜそんな素朴な疑問が通らないのかなという思いです。

主任弁護人(丸井)
あなたは陶芸作家として縄文時代からの陶芸をやってるわけですが、その中で大麻草というものがどのようなものか、日本の歴史も含めていろいろ今回研究したと思いますが、どんな感想を持ってますか?

もちろん僕は縄文時代を使われていた道具とかを研究してるわけですけども、そもそも大麻草は種を蒔けば1 0 0日余りで、つまり3か月ちょっとでみんながいつも着る衣服だったり弓だったり釣り糸だったり、そういう狩りの道具やら人が生きていくために最初に必要なもの全ての材料になるわけです。さらに7か月、8か月もすれば食料にもなるし燃料にもなる、そんな驚異的な植物なわけです。ですから1万2 0 0 0年以上前の縄文人から1万年後に至るまで神聖な植物として崇めた、その道具を使ってひたすらと縄文土器を作ってたわけです。それぐらい神聖として崇めて神の御印としてきた。だからこそ、その精神は引き継がれ、天皇が即位し初めて行う大嘗祭、ここにおいて聖なる繊維で作ったアラタエという麻の織物を、それがなければ大嘗祭は行われないといわれるほどの重要なものとして崇めてきたわけです。だからこそ日本人にとって麻は自分たちの象徴であり神の象徴なんです。その伝統を精神を根こそぎ骨抜きにするような、そういう政策だったんじゃないかなと思っています。

主任弁護人(丸井)
これはGHQの政策で行われたわけですが、当時、実際はアメリカ政府の意向だと思いますが、どうして占領後直ちに、昭和2 0年の8月に戦争は終わ ったわけですが、1 0月の段階で大麻草全面消去って命令出したんですよ。これは数年前から占領政策としてかなり緻密に準備してやってきたのは間違いないんですね。日本の麻がどれぐらい入ってて、どこに入ってるか全部調べてますから。それをやめろと言ってるわけですけど、こういうことをあえてする歴史的な背景というか、なぜこんなことをするのかなと私非常に疑問に思うんですが、あなたから見てどう思いますか?

まさにおっしゃるように占領政策だったんだろうなと思いますし、先ほど申しましたように、まず日本人のアイデンテイティを抜き去る。そしてGHQ以降は戦利品だった化石燃料とそれをもとにした化学繊維などを普及させたかったわけで、まさに大麻草はその頃もなお生活の中にあらゆるところに使われていたわけで、ものすごい邪魔だった存在で、それを戦略的に奪い取って経済的にも隷属させるといったやっぱ狙いがあったというふうに僕は思っています。

主任弁護人(丸井)]
大麻取締法の国会が一 応審議はされてるんですが、その国会の審議は調べたことありますか?

審議は、はい、調べたことあります。

主任弁護人(丸井)
その中で大麻草というものがどのように日本で使われてきたのか、また、神宮大麻と言われるほどの重要な貴重な植物だったわけですが、それについての議論とか、大麻を規制するとする具体な法的な根拠、社会的な必要性とかそういうことについての審議が全くなされてないんだけども、これについてはどう思いますか?

その時にやはり大麻取締法ができた立法趣旨っていうものが書かれていないの、まさにそれが根幹なのかなと。要するに世の中にそんな必要がなかった。だから書いてないんではないかと。そんな取り締まる必要がなかったのに作られた法案なんじゃないかなと思います。

主任弁護人(丸井)
日本の中では神道では大麻とは罪械れを祓う神聖な植物だと、伊勢神宮では天照大神、太陽の御印だといって神宮大麻といってるんですが、この点についてはあなたはどう思いますか?

まさにそう思います。先ほど申しましたように神の御印として崇められてきて、今も神社にも祀られて、皆さんそこに礼をしています。まさにアイデンテイティ、象徴だと思います。

主任弁護人(丸井)
あなたが陶芸で使っている道具の中に大麻がありますね?

はい。

主任弁護人(丸井)
これはどういう形で使ってるんですか?

これは縄文時代が1万5 0 0 0年ともいわれているんですが、長く続いている。その間に出てきたほぼ全ての土器からこの道具を使った形跡があるわけで、だからこそ縄文時代が1万年以上続いたといわれている証拠になっているものです。そして、それは大麻草の繊維をよってできた、いわば横綱の綱だったり注連縄と全く同じものの原型なわけです。それが大きくなったものがそれらのものなので、まさに今もそれを崇め、その力を信じてると思います。

主任弁護人(丸井)
そうすると、あなたが扱っているまさに自分が芸術家として扱っている大麻草、これが悪いものだと、使うなと言われて従うことはできるんでしょうか。心の中でそれに納得できるんでしょうか?

私はこの裁判を行いたいと思った最大の理由は、自分がそれだけ大麻草というものを調べれば調べるほど今のように思えるので、それをこのような状況ですいませんでしたっていうふうに認めて、悪いことをしました、すいませんというふうには思えないほどなので、まずそれを裁判で話した上でやりたいというのが今の気持ちです。

主任弁護人(丸井)
次の質問を続けますが、実は大麻取締法を制定させるように一 番動いたアメリカ政府が大きな今変化が起こっていますね。実はちょうど1年前ですけど、バイデン大統領が声明出してますけど、その内容知ってますか?

はい。昨年の1 0月6日にアメリカ大統領のバイデン大統領が出した声明ですね。それは私のように大麻の単純所持、個人使用の単純所持、これで人を捕まえて罰すること、この政策は誤りだったことを認め、これに該当する全ての者に恩赦を与えるという発言でした。そして、この誤った政策によって何千という人たちが捕えられ、その後、住宅や就職、教育といった機会を奪われ続け、その二次的な被害を和らげることが今一 番大切な政策だという声明でした。そしてさらに福祉保健長官と司法長官に向けて連邦法上の大麻の分類を迅速に見直すべきだと発言しました。

主任弁護人(丸井)
それを見直すっていうのは具体的にどういうことですか?

連邦法上はあらゆる世の中にあるドラッグの一 番危険な部類として今も大麻が入っています。ほかの小卜Iとかではそうではないというか国連はそうじゃないと言っているんですが、連邦法上はいまだにそこに入 っています。

主任弁護人(丸井)
国連の方はどんな段階にあるんでしょうか?

国連はその分類を既に見直しました。

主任弁護人(丸井)
医療用の有用性もあるというような認定ですか?

はい。

主任弁護人(丸井)
そこが大きな今変化ですよね?

はい。

主任弁護人(丸井)
あと、これはつい最近ですけど、前回の法廷の日だったんですが、今日に変更になったんですが、前回、あれ何日ですかね?

6月23日です。

主任弁護人(丸井)
その時にかなり重大な声明が国連の方から出てるんですが、その内容知ってますか?

はい。

主任弁護人(丸井)
ちょっと言ってください。

国連は国際社会と国連加盟国に向けて、あらゆる薬物を刑罰を課して取り締まる政策は緊急に見直されるべきである。そして薬物犯罪に刑罰を与え、薬物犯罪に対して刑罰を支援に置き換えて、基本的人権を尊重する政策を進めなさいという声明でした。

主任弁護人(丸井)
これは国連の国連人権高等弁務官事務所の声明ですね?

はい。

主任弁護人(丸井)
これにつきましては私の方で後で証拠請求もしますし、これに関連して検察官に公訴を取り下げるように検討してくれという申立てをする予定ですが、あなたは今どんな気持ちですか?

これが発表されたのは前回まさにこの裁判が行われるはずだった日付で、その日にこのニュ ースを聞いた時にこの内容を読んで、これはまさに僕のことじゃないかと思えるほどドンヒ゜シャな内容だったので、僕が今年に入って春以降ぐらいから大麻の単純所持、個人使用で重罪を課す政策は国際的に見て人権侵害であるとの旨のコメントをツィッターやS N S上に頻繁に投稿していたのですが、 この発言がこの声明によって僕の言っていたことが決しておかしなことではないというふうに証明された気がしました。

主任弁護人(丸井)
私の方からは最後ですけど、最後に今のことを踏まえて裁判官にどのような審理をしていただきたいのか、あなたの心からの気持ちを裁判官に伝えていただけますか?

まず、今、毎日のように大麻取締法違反で逮捕されてる人がいると思うんですね。そして未だに3 8年前に1 9 8 5年、昭和6 0年に出された最高裁の二つの判決、その判例をもとに大麻の有害性は公知の事実であるというこの言葉から有罪、重罪という判決が今も続いてるわけです。ですが、もう3 8年前です。そして特に8 5年の判決以降9 0年代に入って世界では大麻が人体に影響するエンドカンナビノイドシステムという大発見があり、そのようなカンナビス成分を受け取る受容体が全身にあることが分かり、やがて内因性カンナビノイドといわれる自分の中でカンナビノイドと同等のものを作れる機能もあるということが分かり、それがどんどん解明されています。それにより今は例えばCBD、CBN、花粉成分のテルペノイドや、そして今すごく悪い意味で話題になっている脱法大麻というかそういうものも、いわゆるマイナー カンナビノイ ドといわれるようなものも含め、もちろんTHCも含めたゼンソウがあるからこそ作用する、効果が上がるということまでも分かってきています。そしてTHCがむしろなければ効かない病気だってあるかもしれないともいわれています。そんな時代にTHCを取り締まり、ましてや使用罪などというものを作っていく、そういう政策はあまりにもナンセンスだと僕は思いますし、世界的にどんどん遅れていくことは間違いないと思います。


弁護人(石塚)
先ほどのバ イデンの話ですが、バ イデンは大統領に就任した時に従来の薬物との戦争、ワ ー ・オン ・ ドラッグっていう政策は誤っていたということを認めましたよね?

はい。

弁護人(石塚)
その後に具体的に何をするかという時に二つしたと思うんですが、過去に向けてと将来に向けて。 どういうことか分かりますか?

その二つというのは、恐らくまずそれに該当する者全てに恩赦を与え、そしてこれからは同じものに該当する者を逮捕ぜず、刑務所に入れないことを約束しました。

弁護人(石塚)
大麻は何でも自由に使ってよいとか、乱用してよいとか、アメリカではそういうふうにいわれたでしょうか?

いわれたんではないでしょうか。

弁護人(石塚)
いや、今言ってるのは、法で従来規制していて、前科、前歴のある人が社会的に差別されたり不利益を受けたりしてるのを解決しようっていうのが最初おっしゃった恩赦ですね。よろしいですか?

はい。

弁護人(石塚)
もう一 つは、将来に向けては犯罪ではないって言ってるんではなくて、犯罪
としては処罰しない、刑罰は科さないと言っているわけですね?

はい。

弁護人(石塚)
こういうアメリカの流れは、先ほどの主任からお話あった昭和2 3年の政策と逆の方向を向いてるというふうに考えますか?

はい、全くそう思います。3 8年前の先ほどの話もそうですし、本当に世界の潮流と真逆なことをやっていると思います。

弁護人(石塚)
先ほど引用されました最高裁の判例の中で大麻の有害性は公知の事実であるというふうに事実認識を最高裁が示したんですが、現在の最新の科学的認識でも同様だと考えますか?

いえ、全くそこも違うと思いますし、先ほど言った最新の大麻の研究によれば、有害性というよりはもうTHCも含めて有益なことだらけだというふうに認識しています。

弁護人(石塚)
有意義なことだらけという表現がいいかどうか分からないですが、THCに一定の病気に対する治療効果が認められているという意味ですか?

はい。そして2 0 0 1年から2 0 2 2年の間に1万1 4 0 0件以上の論文もすでに発表されています。それを考えれば、3 8年前の大麻の有害性は公知の事実であるという公知の事実は今や全く違う世界線が見えていて、ある意味全く違うものなのかもしれないと言わざるを得ないぐらいもう違うものになってるかもしれません。現在の大麻の有害性の公知の事実という部分を改めて検証したいというのが私の気持ちで、ですから検察が今までどおり私が重罪だというような主張を続けるのであればそれを立証する必要があると思いますし、また、裁判所にも3 8年前の公知の事実というものが有効であるのかをぜひ検証していただける余地があると私は思っています。ぜひよろしくお願いします。

弁護人(石塚)
検察官には大麻の使用が有害であるということが公知の事実であるというのであれば、それを立証していただきたいということですか?

はい。


検察官
被告人は大麻と麻、これは同じものと考えていらっしゃるんですか?それとも別のもの?

大麻という 一 般にいわれるときには同じものだと考えております。

検察官
麻自体は一 般の社会でも多分繊維として使われたりしていますよね?

はい。

検察官
どこが大麻と麻は同じだっていうふうに考えていらっしゃる。どの点でもって同じだって考えてらっしゃるんでしょう?

ちょっと質問の意図が分からないんですけど、どういった点、いわゆる一 般に大麻といわれているものと何がですか?

検察官
麻というもの。

麻と呼ばれる繊維?

検察官
はい。

同じものだから同じものでしかないと思います。

裁判官
大麻取締法上の大麻とか一 般の言葉としての大麻とか、いろいろ大麻という言葉に多義的な意味があるので、そこはあまり追求してもそれは意味がないのかなと。先ほど来、大麻取締法の大麻の定義については御存じのようなので、そこを聞いてもあまり意味がないのではないかなと思うんですけれども。

検察官
分かりました。被告人は先ほど弁護人の質問の中でパニック障害を2 0 0 0 年頃に起こしたことがあったんですって御発言されましたね。

はい。

検察官
デパスっていう睡眠薬ですかね、そういったものを使い始めてたんですよっていう話もされてましたね。

はい。

検察官
それをきっかけとして大麻を吸ったこともあるんですって、こういうお話もされてたんですか?

はい、そうです。

検察官
パニック障害がきっかけでなぜ大麻の吸引に移ったのかをちょっと御説明していただいていいですか?

先ほど御説明した以外にですか?

裁判官
知人の方から勧められて、いいと言われたので使うようになったら良かったという話をしたような気がするんです。それじゃあもっとですか?

検察官
その知人というのは例えばどこの国の人でとか?

イギリスで何度も、ほか日本人にももちろん言われたことあります。

検察官
日本にいる時もそういう話があったんですか?

はい。

検察官
大麻がいいよと?

はい。

検察官
イギリス、ロンドンの方で使ってたこともあるようなんですけど、日本でも使ったことはあったんですか?

大麻ですか?

検察官
はい。

はい。機会があったとき使いました。

検察官
そのように使っていた大麻というのをどのようにして入手されてたんですか?

それについては答える必要はないかなと思います。黙秘しようと思います。

検察官
その流れで創作活動にもプラスの面があるんですと話し始めましたかね。

はい。

検察官
新しいアイディアを発案して考え出したりするとか、そういうときにも有用なんですと、そのような話もされてたんですかね。

はい。

検察官
今現在も陶芸活動をされてらっしゃいますよね?

なかなか難しいですが、状況的にしております。続けております。

検察官
やはりそういったときにも新しい発想が欲しいとか、そういう考えに至ることもありませんか?

もちろんあります。

検察官
そういったときには大麻を吸った方がプラスになるんじゃないかっていうお気持ちも湧きませんか?

もちろんあります。先ほどもそれは申しました。

検察官
という考えが湧いて、大麻は現在も使っていらっしゃるんでしょうか?

今はこの裁判中なので当然使えませんし、しかし日本では使用は禁止されてません。そして私のように治療目的があって、そして陶芸作品を作るために使う必要があるという、そういう認識で目的が明確であることから、まず医療目的として単純に少量にそのために所持することは決してみだりに持ち歩いてるわけではないので所持にあたらない、罪にあたらないというのが僕の解釈です。

検察官
そのようなお気持ちもおありなんでしょうけども、現在は使用を止めているってことですね?

はい。

検察官
今回の被告人質問に関連してお聞きしますけども、アメリカのそういった動きとか、それ以外の国の、地域の動きとか、いろいろ研究はされている、勉強はされてるってことですね?

はい。

検察官
ただ、他方で日本は日本の法体系があって、現状の大麻取締法がそういう所持等を禁止しており、動きの中では使用も規制していこうかっていうようなことがあるようなんですけども、そういった日本の法律を守る意識というのは被告人自身にはおありなんですか?

はい、もちろん。私は遵法意識は人並みにあると思っていますし、ましてや自分勝手に法を破って自分勝手に生きてやろうなんていうふうな思いは一 度もしたこともありません。その上で、ただ、先ほども申しましたように正当な自分は所持する理由があって、単純にそれだけのために少量を持っているのは禁止されてないというふうに解釈してますが、このように今回の裁判のようにそれが問題となるんであれば、その判断は皆さんというか法の司る皆さんにお任せして、その判断に仰ぎたいなと。それが正当であれば、その判決に従いたいと思っております。

検察官
その正当か否かの評価は御自分でされるんですか?それとも。。

いや、そんなことないです。ただ、当然それ正当なもの、理由じゃないと納得はもちろんいかないです。それは控訴してさらにつていうのも、それを全部認めますよとはさすがに言えません。ただ、もちろん従うつもりで、その代わりちゃんと審理していただきたいという願いを込めてそう言ってます。


弁護人(石塚)
今のところですけども、大藪さんは正当な司法の判断には従うということでよろしいですか?

はい。

裁判官
パニック障害なんですけれども、それは今現在も治療はされてるんですか?

今も起こるときはありますが、そんなにひどくはならないです。倒れるというほどのものはならないです。

裁判官
特に服薬等はしてないんですか?

服薬はしてません。っていうのは裁判所の命令がないと旅行にも行けない身ですので、自宅というのはエ房がすぐありますし、先ほど申しましたようにそういう不安が襲ってきたら何かすれば結構立ち直れるものなんで、それで努力してます。

裁判官
じゃあ、重篤な状況には陥らない?

陥らないという。。はい。

裁判官
今現在は服薬の必要まではないと?

そういうときもあります。飲んだ方が楽なことは間違いないと思います。

裁判官
ただ、医師の治療とか服薬は今現在はしてない?

はい、僕はそういう方はあんまり望みません。

裁判官
それから、この事件に関して令和3年8月に保釈されてますけれども、保釈以後は現在に至るまで大麻を使用したり所持したりはしていないということですか?

はいそうですね。

以上。

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