23歳

23歳になった。こんな誕生日はきっともうないだろうな。きっともう来なくていい。
素敵な誕生日を過ごした。
そばにいてくれた人たちや、遠くから贈り物をくれた友達、メッセージを送ってくれた友達。

22歳が終わった真夜中に、僕はたくさん涙を流した。ただただうれしくて。なにかとても大切で素晴らしいものが見えた気がした。

朝、近所の友達の家へ行って、ブルーハーツのファーストを聴いた。いつの間にか。グッドバイ。はじめてスタ丼を食べた。

夕方、日が暮れる頃、高円寺を歩いた。この街にはまだまだ知らないところがある。建物の隙間の空を見た。あの頃のことを思い出した。こんなふうに見られたらって、いつも思っていたんだ。ホッピーはずっと飲んでみたかったから、はじめて飲んだ。僕は何も知らない、というよりなにもわかっちゃいないのかもしれない。僕はただひとつ、わかることがあるのだけど。

歩いた道やいつかの店。これからの僕はどんなふうに思い出すんだろう。ひとりで勝手にかなしくなって、街並みはぜんぶぼやけて見えた。かなしみからはかなしみぐらいしか生まれないかな。こんなふうになったって、仕方ないのに。でもどうしようもなくかなしくなってしまった。

日付が変わる少し前に、友達の家まで自転車を飛ばすとき、僕はぐちゃぐちゃだった。やっぱりかなしみからは、なんにも生まれない。僕はこどもだ。みっともないと思った。

友達と話すとき、素直な気持ちに気づく。気づかせてもらえる。現実もわかる。僕も、友達のようにやさしい人になりたい。

誕生日だから、すこし夢を見たかったんだ。
朝方に見た夢はとてもおそろしいものだった。
家を出るときに、またねって手を振った。それだけで僕は肩を落とさずにいられる。

誕生日だから、夢を見たかったんだ。


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