味噌

味噌汁があるとする。鍋にはいくつかの具が入っている。椀には汁のみが入っている。それでも鍋にはなにとなにと、なにが入っているかはわかるんじゃないか。そんな気がする。なめこと大根おろし、油揚げと玉ねぎ、まいたけ、しじみ、えのき、じゃがいもわかめ、小松菜、キャベツとか白菜、たまごと玉ねぎ、豆腐もいい。そしてよそったあとの長ねぎ。
味噌汁は誰でも簡単に作れるくせに一瞬で作れる。失敗することもない。だしは粉末のでもじゅうぶんだ。ものたりないときは鰹節をちょっといれるのもいい。なんたって美味しさは味噌で決まると気づいたのは東京に出たすぐの頃。西友に見慣れた味噌がなかった。マルコメの安いやつを買うと格段味気なかった。たまらなくなって今度は高価格のマルコメの料亭の味を買ってみると、それもあじけない。トモエの田舎味噌をいろんなスーパーで探したけど見つからない。北海道にしかないのかもしれない。親がときどき送ってくれた食料の中でトモエの田舎味噌がいちばんうれしかった。

酔っ払って帰ったとき、酔っ払った次の朝、起きられず時間のない朝、米を食べるすべてのとき、おかずが納豆だけのあの朝(むしろ味噌汁ありきで納豆がうまい)、いつも味噌汁はやさしい。実家にいてご飯があるありがたさの中核に味噌汁がある。近い未来の自炊生活の中核にも味噌汁がいるだろう。いつも心に味噌汁を

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