つもる話なんて

同窓会みたいな気分もありつつも、あまり誰ともうまく話せそうもなくなったからライブハウスをひっそりと出た。余分に頼んでしまった一杯の中に泡立つちょっとの後悔を片手に歩き慣れない下北沢を歩く。給料日前日、口座にはライブの入場料とドリンク2杯分ぐらいしかなかった。この前自分で企画したライブで貰ったお金がなかったら今日見に来ることはできなかった。それはそれでよかったけどこれじゃあなんか悔しい気もする。所在なくなってバンドのメンバーに会いたいなとか思う。下北沢の駅は立派に完成したようだ。

今夜は、本棚のモヨコと爆弾ジョニーのツーマン。高校生の頃たくさんライブを見た本棚のモヨコは今日で活動休止。スピリチュアルラウンジにいるような気分になった。あの頃耳にしてたあの曲はちゃんとタイムマシンだった。ハッピーな終わりのこと、まだ始まってもいない僕は考えられないし、そんなことよりも素直に良い音楽だってそう思える演奏だった。バンドってのはそんなに難しいのかあ。

先に演奏した爆弾ジョニーはまぎれもなく僕の原点の奴らで。同じメンバーでずっとやってきてる。

‪まさに10年前の今頃、学ラン来てライブハウスに行くと同級生が学ランで演奏してた。花火大会の2日前にフラれていじけたままの僕はこれがロックンロールなんだと全身で思った。対バンも見るようになった。あの頃かっこいい大人がたくさんいた。僕もロックンローラーになるって、そのときから今も同じ。‬

そもそもライブを見るのも顔を合わせるのも久しぶりでなんか勝手に照れくさい気持ちで見ていた。思い入れの強い曲もたくさんあった。あの頃の自分や彼らのなにが違うだろうとか考えたりした。彼らの演奏は東京をまた生きてる僕にとって頼もしく感じた。なにより最後に演奏してた新しい曲がよかった。いつもそうだったように。

積もる話なんてのは、やっぱりどうでもよくて、僕は今こうでさって話をはやくまた今日再会した人たちとしたいなと思う。またしばらく先になるかも知らないけれど。

焦りはない。今はのらりくらりでもきっとこの調子なら。はじまるべくしてことは起こる。そのときに狙いを定めて。やりたいことをやりたい気持ちがたしかにある、ある。さてどうする。家に帰ってあたたかいもの食べて寝よう。もう少しまる顔になったって大丈夫だから食べたい時に思い切り食べよう。こんな日にれっきとした帰れる家があること、それだけで僕は幸せだ。そこから僕は歌いに出かけたい。聞き慣れた駅名を電車がアナウンスした。誰か今日歌ってるかのぞいてみようかな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?