パンク床屋1000円カット

https://note.com/ya_ha_ta_kun/n/n5229419d84ff

このあと、ぼくは友達のお父さんと作戦を立て少しだけパンクな髪型にしてもらって、ビールを飲んで話して帰った。今まででいちばん短くすることができた。友達のお父さんはこの頃よく体調を崩していて昔からのお得意さんの予約でいっぱいになっていた。友達価格で1000円カットしてもらうぼくは少し遠慮をして地元発寒のスナックと美容院を兼業するママのところで2回ほどマッシュルームじゃない形に髪を切ってもらい、東京へまた出てきた。

東京へ出てきて、電撃のスピードで恋人に出会った。彼女にも何度も髪を切ってもらった。またマッシュルームカットになった。だんだんと髪の毛を真ん中でわけたりかきあげるスタイルになった。これは僕にとっての反抗である。おでこを出すことも、眉毛が見えることも、抵抗がなくなった。視界が開けたかどうかはわからない。恋人には、美容院に行きなよとずっと言われていた。が、引用の記事のとおり僕は知らない奴に髪の毛を切ってもらうのがいやだ。美容院にいけば、やれ趣味はといわれ音楽をしてると話すと大抵つまらない話になるのがわかっているし、特別な髪型にしたいわけでもないのに何千円も払うのは気が進まなかった。いよいよ僕は床屋で1000円カットで角刈りになるしかないのか…と思っていたが、近所に1000円カットのみのパンク床屋があると知る。ここからが本題。いつも前置きが長くなる。

店前にはバインダーがあり、ファミレスのように名前を書き込むようになっている。名前を書いたところで散髪を終えたモヒカンの男が爽やかに出てきた。ドアぎわの灰皿をみつけて煙草に火をつけると、パンクないでたちのお店の女のひとが出てきた。僕の番がもうきたようだ。バッティングセンターのカード販売機みたいなやつに1100円を入れ、カードを渡す。まあ、このまま少し短くする感じで。と伝えてさっそく散髪が始まった。ああ、なにも話さなくていいんだな。むしろなにも話さねえよという空気すら感じながら僕にとって都合よく髪が切られてゆく。途中、「相談なんですけど、うしろは刈り上げますか」「そうします」唯一の会話だった。ものの5分で終わった。僕の注文のとおりで、それ以外に余計なことはしない。なるほどね、これはなかなかいいかもしれない。まさにパンクの曲のようにあっけない速さで終わり、どんな顔をしていいのかわからなかったが、文句なし。安いから、またすぐ行ってもいいんだし。パンク一色の店の中で無理して音楽の話もしなくてもいいし、髪を切る前に緊張したりよくわからない心の準備もしなくていいなら、これからは気軽に散髪ができそうだ。モヒカンとかトゲトゲの仕上がりの写真も多くてかっこいいなあ、べつに俺だってやってみてもいいんだよなあ。やらないだろうなあ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?