雪が積もった。

昔あったできごとにすこし胸が痛んだ。何年も前のことで、ずいぶん長いこと思い出しすらもしなかった。あの時のどこにもいけない気持ちを思い出した。初雪が降る帰り道は本当に惨めだった。だから僕は誰のことも傷つけるべきじゃない。それが知らない誰かだったとしてもだ。自分のハートが割れないように随分ぼくの感度は鈍くなってるらしい。いけないことをしなければどこにもいけないが、裏切ったり、嘘をついたりすると、友達も悲しむ。悲しみから生まれるものは好きじゃない。

雪が積もった。3年ぶりに見る冬の訪れにうきうきした。今年中古で買った雪色の自転車、またいつか。もうぼくを乗せることはないかもしれないよ。ちゃんと車庫に眠ってね。町ではたくさんの自転車が白い帽子をかぶって身動きがとれなくなっている。オレンジの街灯は年々、味気ない白色に変わっていく。真新しい雪も凍ってすけたアスファルトもオレンジがかると本当にあたたかい気持ちになるのにな。JRの3ヶ月定期券を買った。2月の半ばすぎまで使える。冬が来た。