いい天気に乾杯を

ライジングサンロックフェスティバルに三年ぶりに来ている。過去2年は東京に住んでいて行かなかった。今年の夏は札幌にいる。ぼくは20歳、21歳、22歳のときにライジングに行ったので4回目になる。あの年は何を見たとか、誰と一緒だったなとか、偶然誰に会ったなとか、誰を思っていたなとか、そんなことを歩くたび思い出している。僕は過去というものが、けっこう好きなんだと思う。今を愛するために、そう思う。今がいちばんいいのは、ずっとずっとそうだ。未来はいつもあまり見えていない。そのときにならなければわからない。結果的にはぜんぶいいようになってると思う。思わしくないことがあったとしてもぜんぶなるようにしてきた。もうすこし未来のいいイメージをたくさん持って過ごせたらいいな。それをどんどん生きる実感に変えたいんだ。

1日目のライブがすべて終わってテントに戻ったものの、眠れないまま2時間が経とうとしている。強い雨がテントに当たる音と、稲光のせいかと思ったけど、そうではないみたいだ。今は雨もあがって、まだ起きている人がにぎやかにそこらへんを歩いている。今日は雨が降ってない時間はとても少なくて、降り続けてはときよりその足が強まり弱まりを繰り返した。こんなに雨にあたることは日常ではないよね。どうしても雨をよけようとするから。会場で少しだけちゃんとした雨がっぱを買ったおかげで、ライブを見るためにたくさん動きまわることができた。とてもいい演奏をみた。ひとりでライブを見て歩くのは時々さみしいけど感覚は抜群に鋭くなる。演奏がまっすぐ入って来てそれが逃げていかない。ライブの前や後にはここにいるはずのない誰かのことを思った。同じライブを見ていたらその話をしたいなと思った。友達や恋人の側でライブを見る幸せはとてもよく知っているのに、今僕が心に思い浮かべる人と隣で演奏を見たいとは思わなかった。今年はそんな夏。

ずっと楽しみにしてた2日目が来る。この街の夏は、ライジングサンが終われば早すぎる終わりの気配を見せる。そう気がついて、それをまだ受け入れることができない。東京の夏は頭も尻尾も長かったから。一ヶ月後には半袖で外を歩くこともなくなる。コートをひっぱりだす頃にはいろんなイメージがもう動き出してるだろうな。季節が過ぎるのはめでたいこと。来年の8月に、どんな景色を見ているかはわからないけど。スリルがあるほうがいい。ロックンロールはとくにね。僕はあの人にも、ものすごいスリルを感じてる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?