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【#17】都市の悪夢【f_Y.A.(today)】

『日本社会のしくみ』にはかなり衝撃的なことが書かれている。

高度経済成長の頃から、失われた30年に至るまで、東京都の人口は一定して増加し続けている。地方で生まれた人であっても自然と都市に流入し、その多くは地方へ戻ることはない。

ところが、日本で正社員の数はずーっと変わっていないと言うのだ。そのため世代ごとの増減を別にすれば、都市に人が来れば来るほど、正社員として働くことのできる人の割合は減少する。

では、一体そのような人はどのようにして働いているのだろうか。そのような人々は、たいてい非正規(いわゆるパート・アルバイド労働)の雇用形態で働いている。

そもそも都市に、今の人口を正社員として受け入れる余裕はないのである。元々そのような人は地方で(この場合は疎空間ではなく、地方が正しい)、村落共同体に基づいた自営業を営んで生活するはずだった。厚生年金ではなく、地元での人やモノのやり取りをセーフティネットにするような人々である。

ところが、現代ではその人々がセーフティネットから切断される形で非正規になっている。一度非正規で入ってしまうと、なかなかその後のキャリアを積むのが難しい。そして何より、常に仕事を振られる側になってしまうので、自分の裁量範囲が狭く手触り感を持って物事を進めるのが難しい。この手触り感こそが働いている時の楽しさみたいなものだと僕は思っているのだが。

都市はとてつもなく合理的であるし、エネルギー効率も良いので地球環境によく、コスト面で見ても素晴らしい。それでもなお人間が地方で暮らすとしたら、それは人間のセーフティネットになるという役目があるからだと思われる。

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