小説VS漫画 リレー作品:第2話 癌口(小説)
エレベーターの扉が開いた瞬間、生暖かい空気が一気に流れ込んできた。視界に広がるのは現実から遠く離れた狂気の世界。薄暗い中で芋虫のように蠢く臓物と、血溜まりに悦ぶ蛆。一歩先の地面は赤黒くブヨブヨしていて、生肉のようにも見える。エレベーターの床との境目が、現実との境界線にも思えた。
脂と血の臭いが容赦なく肺に流れ込み、胃袋がひっくり返りそうになる。鼻と口を押えてもまるで意味がなかった。頭がぼんやりとしてきて目が霞み、思わず膝をついてしまう。
すると足元に携帯が落ちているのに