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きのホ。 2nd衣装

5/2に公開された株式会社古都レコード きのホ。の2nd衣装です。

2nd衣装は仮称です。
初めて担当させて頂きましたので、前書き的なものを。
飛ばしたい方は戻ります。まで。

ここでは衣装、衣装という仕事を伝えるために担当させていただいた衣装の詳細を書きます。コンセプトは運営様、メンバーの皆さんにはお伝えしていますが、全てデザインプレゼン資料に記載することは不可能なので、運営様、メンバーの皆さんが知らない物も含まれています

また宮﨑自身の感覚に強く由来する部分も多分に含みます。正しさでは無く想定と経験則です。

乱文、誤字脱字あります。何卒ご了承ください。
*衣装とパーツの寄りの写真が掲載されています。

戻ります。



オーダー内容は、1st(デビュー)衣装と印象を変える、着物袖、メンバーごとに異なったデザイン、和風イメージ、ユーモアな要素もあり、です。ざっくり。

衣装の製作に入る前にライブを見させていただいて、可愛いよりはかっこいい印象でした。今はさらにかっこいい。

日本人は世界で最も和の要素を鋭く感じ取れる民族なんですね。和的なものが好みでなくてもです。当然のことですが、結構重要なことだなと思います。

私は和服を作ることは出来ません。和服の仕立ての知識はありません。着付けも出来ません。衣装は洋服の作り方をベースにしています。洋服の作り方で作る衣装に和装の要素を入れています。(和装の要素に見えるように作っています。)

今回は3人ずつ2パターンのデザインから全員異なるデザインに展開しています。2パターンはトップス部分がネイビーのタイプ1と斜めにベルトパーツを配しているタイプ2です。

襟は二重襟を基本にメンバーの皆さんの要望に合わせて形を変えたりしているので、全員異なる物ではなく同じデザインのメンバーもいます。

袖の形は全員共通で、袖丈は大体身長の1/3の長さをとっています。
洋服の場合袖丈はショルダーポイント(肩)から袖裾までの長さを指しますが、和服の場合は腕を真横に伸ばした時、下に垂れるの布長さ、洋服での(袖)幅を指します。
洋服での袖丈は裄丈にあたりますが、洋服でも裄丈はだいたい同じ箇所の寸法を指します。
バックネックポイント(だいたい背中側の首の付付近)からショルダーポイントを通り袖裾までの長さ=裄丈。洋服は多くの場合曲面(線)、和服は平面(直線)です。
袖丈を身長の1/3としているのは基準としてそういったものがあるらしいです。着物の格や年齢、好みにより変わります。




デザインの詳細を書いていきます。専門用語も出てきますが、解説を挟まない部分は意味を調べずそのまま読み進めても大丈夫です。下線が入っている部分は参考ページとリンクしています。タップすると飛んでしまうのでお気をつけください。

まずは襟と首回りについて。
襟は先に書いた通り全員二重仕様です。これは首回りも含め着物の衿と半衿の重なりをベースにしたデザインです。衿(下側)、半衿(上側)それぞれに洋服の上襟を付けています。
洋服の襟で着物の衿の重ねを作るイメージです。
洋服の襟は、下側はフラットカラー、上側は部分的に台襟切り替えのシャツカラーです。異なった襟ですが同じ形の襟を重ねているように見えるラインに。着物の抜き衿を参考に、若干ですが首後ろ側を広く取っています。若干とはいえ見れば分かるくらい。洋服のほとんど、重ね着を前提としたコート等でない限り首の後ろ側にあまり間を空けません。
*後ろ中心での襟の立ち上がりはフラットカラー5mm程度、シャツカラー30mmほどです。

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タイプ1 桜寝あしたさん、御守みこさん、小清水美里さんの3人。
下側衿に続く身頃部分は着物同様の右前(向かって右側が上)の重ね仕様です。
この重ね部分に伊達衿イメージでメンバーカラーパーツを配しています。
これらの上に重ね着のように入るネイビー部分、現場ではビスチェ(パーツ)と呼ぶことが多かったのですがデザインソースは着物の上に羽織る道行です。重ね着に見えますが、フェイクレイヤーです。

道行の角形の衿口、と端の切り替え(小衿)は道行サンプリングそのままです。
ただ前開き部分、道行は重ね(堅衿)ですが、今回は前中心突き合わせでファスナー開きにしています。元は重ねでデザインを作っていましたが、和服に寄りすぎるので突き合わせ、ファスナー仕様にしました。
と、その前に元々は道行の重ねの仕様をそのまま前が重なるの衣服の仕様に転用したデザインにしようと考えていて、ダブルのジャケットの2列のボタン留め、ダブルライダースジャケットのファスナー開きデザインを作っていたのですが、それでも和服感が強く残ってしまった為に前中心突き合わせに変更、ライダースのファスナーがそのまま残りました。シングルライダースですね。とはいえタイプ2とのバランスを取るためにライダースに寄せた仕様にはしていません。ライダースを通過したデザイン。ファスナーはYKKエクセラの5号です。

道行はデザイン初期段階に、るろうに剣心の高荷恵の衣装を思い出し、リサーチ、採用に至りました。漫画ではなく実写映画、蒼井優さんが演じていました。公開は2012年ですが、大学1年(2014年)くらいに見て格好良く思えてそれをイメージしたデザインを書いていた記憶があります。



次はタイプ2。白珠色葉さん、小花衣こはるさん、御堂莉くるみさんの3人です。
見ての通りタイプ1は格好良い、タイプ2は可愛いに寄せています。
タイプ2は袴イメージです。袴と言っても上側はハイウエスト程度の高さです。袴とトップスの接続部はフェイクレイヤーです。

タイプ2の方が和装の要素はデフォルメしています。
袴感が強すぎるのもイメージ違いだったためジャンパースカート(衣服)にイメージを寄せるために斜め掛けのベルトパーツを配置しています。これは着物重ねの片方の衿部分のみをサンプリングした形です。なのでタイプ1同様に伊達衿イメージのメンバーカラーパーツが入っています。半衿(シャツカラー)と衿(フラットカラー)の重ねはタイプ1同様ですが襟に続く身頃は重ねではなく中心付き合わせのファスナー開きです。
ハイウエスト部分切替部分に入っているメンバーカラー位置は袴下帯イメージです。

外側からアイドル衣装に来た人間なのでメンバーカラーの差し込みは基本的に違和感を感じてしまうので、自然、あるいは装飾的に違和感のない入れ方ができるように毎回気にかけています。(後で一部覆ります)
衣装本体(縫い込みパーツ)のメンバーカラー位置、今回の伊達衿や袴下帯は和服の中でも装飾としての意味の強いパーツではあるのかなと思います。伊達衿は必須アイテムですらありませんし。今回は先達の知恵を借りたような配置になりました。先に書いたように、日本人ならば、この位置ならば、きっと、のような。


タイプ1、2共にウエストはベルト締めで、ベルトループを延長してベルト下に紐を通しています。


ベルト下の紐は着物帯の上に締める、帯締めからイメージを引用した装飾です。帯留めを付けるか迷いましたが、上にあるベルトのいかつさ、後に書く目立つ装飾パーツもあり、シンプルに一本にしました。紐はワックスコード(表面がコーティングされた丸紐)で光沢感があり、少しレザーっぽい見え方をするものを採用しています。


向かって右側ウエストベルトループには全員共通の紙垂(しで)を模した装飾パーツをつけています。丸カラビナで着脱式です。
紙垂は神社等でよく見かけるあれです。ここに来て和要素のド直球な装飾パーツです。これまで書いてきた部分と異なった組み込み方です。先にメンバーカラーを自然、装飾的に違和感のない入れ方ができるように〜と書いたばかりですが、これは全然違いますね、既視感と違和感を使った強引?なデザインです。きのホ。だから成立しますね。結果としてはバランス取れたと思っています。この紙垂パーツは生地に刺繍を打ってから裁断して袋縫いにしています。刺繍は段ごとに縫方向を変えているので照明の反射で段ごとの切替線が見えます。生地は表裏それぞれ一枚です。

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形については次が最後、袖です。
ライブを見ていただくと分かると思うのですが、袖の下側(わき)を縫い付けていません。これは着物に準じた仕様です。
袖の身頃側(脇)も縫い付けず全て開きにしています。どちらも縫い閉じない方が袖のドレープは綺麗に出ました。
しかしこのままでは脇が見えてしまうので、袖のみ裏地、と言うより半袖のインナー袖が袖と一緒に縫い込まれています。
袖自体は少し前側にねじれた形になっています。完全な平面として作って腕を下ろした場合に出るドレープが綺麗で無く、先に書いた脇や袖の身頃側の縫線と合わせて検討した結果仕様です。
腕自体垂直に下に向かうのでは無く前振りではあるので、二枚袖と同じような役割を果たしているのではないかと考えています。(スーツのジャケットをハンガーにかけると袖が真下では無く少し前に振れると思います。袖を2枚で作り腕に合わせた形にする仕様です。)
襟の様に立体を作る、固めるイメージと違い、ドレープは流動体、現象のような部分もあるので、検証重ねればアイドル衣装としての着物袖パターンも出来ていくかもしれませんね。着物を着る舞踊を見ると分かるように着物袖はパフォーマンスを補強する、パフォーマンスに使える仕様です。華やかに見える。

腕を並行に上げた時の下側に当たる部分を黄色生地に切り替えています。ここはほぼ同色の光沢サテンとレースの重ねで、上の小花柄生地は軽く、下の方が重ねも相まって重くなっています。振り子。
ある程度重みがあった方が動きは大きく、見た目の豪華さも増します。ただ分量に加え重みまで乗ってしまうとパフォーマンスの邪魔になるのではないかという懸念がありました。また、軽くするために生地を全て軽いもので仕上げると、嫌な言い方ですがペラペラに、貧相に見えてしまいます。
それを解消するために下を重く、振り子のような大きな動きが出るように。先に書いた脇を縫い込んでいないのは中に空気を含ませて、ボリュームを出すためです。袖の下側は縫い目が無く、丸みが出るようにしています(縫い目が入るとそこが折り目になって平面的になってしまいます。着物のように生地の厚みや重ねがあれば問題ありません)

とはいえ袖自体は生地分量の多さに対して軽め(メンバーの皆さんがそうおっしゃっていた)です。装飾よりも機能面の仕様が多いです。
ただ、大きな面がよく動く位置にあるので、引きでも動きが際立つ色割を入れたい思いもありました。

そのほか形についてはメンバーの皆さんの要望やこちらが思う印象でデザインしています。


袖で少し書いてしまいましたが、次は色と生地についてです。

きのホ。にとって初の夏になる、全国ツアーも始まるので何か新しい名刺になるような衣装が作りたいな、と思っていました。

また大きな会場で引きで見てもしっかり見える、大きな面での色割を意識しています。細かいディテールの全ては寄りのための仕様で、引きで見えなくても問題ないように作ります。寄りと引きの仕様は別で考えます。
例えばメンバーカラーでは伊達衿、袴下帯部分は寄り、紙垂は引き用です。

引きで見てもしっかり見える、は簡単に書くとコントラストが強い、です。彩度差よりも明度差のコントラスト。
生地は白部分=小花柄(サテンジャガードonプリント)、黄色部分=光沢サテンとレース重ね、ネイビー=カットジャガード、です。
今回の場合は白とネイビー、後に書くプリント(黒)のコントラストです。

絵画などの平面作品を見るとき人はコントラストの強い部分に目が向かうそうです。ただ人物が描かれている場合は人物の方が目を引くそうですが。例え話です。

初見の人がライブ終わりに、後日に思い出す、思い出そうとした時にディテールが思い出されなくても、おぼろげな記憶にも残るくらいの分かりやすい(見やすい)面割り、色割をを作る。

ちなみに、上で人物の方がコントラストより強いと書きましたが、人物や風景など実存するものと一緒に実在しない異質なものが描かれていると人物よりも目を引くこともあるそうです。異質さはコントラストや人物の上を行くこともある。例え話です。
既視感のあるものを本来の用途と異なる使い方で異質なものとして組み込んだ紙垂パーツはこれにあたります。
メンバーカラーを気にするファンの方は多いと思うので、その目線に合わせて。異質さに目は向きますし、既視感のあるものは見やすい(目に優しい、受け入れやすい)です。どうなんでしょうか。

見やすさ、覚えやすさ、の点で見ると、ネイビーは切り替えよりも重ね、(フェイク)レイヤーの部分に入れています。不自然さ、何か別の意図を感じさせない、順当に見える(見えて欲しい)。
ややこしいのですが、襟と首回りでも現実の衣服、和服に存在しないデザインを入れている、言ってしまえば異質なものではあるのに、強いコントラストも作っているのに、紙垂パーツや後に書くプリントの異質さを邪魔しないように、という意図もあります。なので色割にかかわらず全体で意識はしています。様々な強弱のレイヤー、解像度順とかそんな例え方をしています。


黄色と小花柄は和装の要素と相まって和的な見え方をする(して欲しい)ものを採用しています。なので黄色は実は黄色では無く、サテンは金色、レースは辛子色に見えるものを採用しています。


袖のプリントについて。
引きでも寄りでも見えるサイズでロゴの八の字部分の形をプリントしています。元々はシルクスクリーンプリント(顔料)の予定でしたが、シルクスクリーンプリントはインクが生地の上に乗るのでプリント部分は硬くなってしまいます。袖を部分的に硬くすることは望ましくないので昇華転写プリントに切り替えました。
留袖の袖に入る家紋もデザインソースにありましたが、サイズが大きくなったので別物ですね。
先に書いたコントラストや異質さにかかる機能装飾でもあります。



今回はここまで。ありがとうございました。

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