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#2i2 4th ドレス衣装

12/11に先行公開された
株式会社ゼロイチファミリア HASHTAG RECORDS
#2i2 4th ドレス衣装です。ナンバリングと「ドレス衣装」は自分がそう呼称しているだけで正式名称ではありません。

サムネイル画像はまだ画像が少ないためPop’n’Roll様記事から引用させていただきました。

音楽ナタリー様にも記事が掲載されています。


Twitterにて衣装担当のお知らせツイートの際に自分が仕込んだことを書かずに(書く気になれなかった)感想を書くという、一番衣装のことを知ってる人間が何か第三者的なことをしてしまい、しかも個人的な意見で多分分かりにくい。このまま時間が空いてしまうのは何か無責任な感じがしたので、書けてない記事があるなか恐縮ですが先に書かせて頂きます。

ツイートと内容の重複、推敲する時間がなく長文、乱文、誤字脱字あるかと思いますがご了承ください。また、今回の内容はいつも以上のシンプルな物を周り口説く書くことになってしまいました。これは理解することを重要視している自分の性格故です。ご了承ください。

まずはツイート内容をそのまま記載します。

本日限定先行公開された #2i2 の新衣装担当しました。シンプルなシルエット、濃紺、清楚感をメインにオーダーを頂きました。自分が仕込んだことを書く気になれないので今回はまず作った側の感想を。詳細は後日noteにて(公開日時未定)。

オーダーの意図はお聞きしていたものの個人的にその作用がとんでもなく強く見え、目に見える自分が仕込んだ物たちが霞んで見える。これまでとは全く別ベクトルのライブ映えをした衣装だなと思いました。

これは自分が衣装を担当させていただいているグループの中では#2i2 でしか表現できない物で、空間とか、空気を媒体にする物なので是非現場で感じて欲しいなと思います。

恥を忍んで書くともし自由度の高いオーダーだったらこの衣装は提案できませんでした。これまで自分が考えて来たこととベクトルが違うからね。よって自分が仕込んだ物を書こうと思えない。それよりも伝わって欲しいものがある。
とても勉強になりました。ありがとうございました。

https://twitter.com/4_23332/status/1469656557365633024?s=20
Pop’n’Roll様 記事掲載写真 画像クリックで記事に飛びます。

オーダーはとても具体的な物で、シルエット自体は頂いた物からほとんど変更が入っていません。あのようなワンピース(ドレス)というオーダーに始まり完成までたどり着いています。またツイートには記載しませんでしたが、デザイン要素としてセクシーさ、胸下から腰上までのコルセット風切替え(トワルフィッティング時に初期案から変更)、コルセット風パーツ部分のボタン、ゴールドの髪飾り、凹凸の大きく出る&フワッと広がる分量のスカートもオーダーに含まれています。ほぼ、ですね。

毎度オーダー内容をなるべく記載するようにしています。もしオーダー内容の記載がなかったら全て私が考えたように見えませんか?それが嫌というか、あまりに、ね、、。
例えお任せに近い内容であったても作らせて頂く、運営様と時にはメンバーの皆さんのご意見も頂きながら一緒に作り上げて行くという認識なんですね。
自分は衣装を作る人間で、プロデュースやパフォーマンスをすることは出来ず、外側から思料することしかできません。それぞれ別の立場から良い衣装を作るために意見(自分の場合は技術も)を出していくことが大切だと考えています。当然のことではありますが、自分の場合は個人なので余計にそう思ってしまう部分はあるかもしれません。

今回自分がしたことは分かりやすいデザイン的な部分は少なく、どのように形にするか、ラインを作るかという技術者的な部分と、髪飾りや装飾備品、生地の選考の編集的な部分がメインで、これまでと少し違った製作フローになりました。普段編集的な部分はデザインと一緒に書いていますが今回はそれだと書きにくいので別にしています。

今回一番の要素、シンプルなアウトラインですが、MCでメンバーの皆さんが話されていたようにパフォーマンスを引き立てるため、楽曲やパフォーマンスの激しさと対比させるためのものです。運営様は衣装を着たメンバーと楽曲&パフォーマンスのギャップを見せたいと仰っていました。これは過去の3着の衣装とは全く逆を行く部分です。
自分が製作していない衣装に関してはオーダー内容を知らないので予想になってしまいますが、おそらく同じようにパフォーマンスを引き立てる意図はあっても楽曲やパフォーマンスに合わせた馴染む方向で、対比を図るデザインではありません。

また過去自分が製作した別の案件も含めた全ての衣装は楽曲、パフォーマンス、グループの雰囲気、グループコンセプトに沿う方向で、対比させているものは一つもありません。
これはツイートの#2i2 でしか表現できない、の部分です。
楽曲やパフォーマンスの激しさと衣装の対比は成立させることが出来るのに、その逆の対比は成立しません。だから今まで全く考える機会がなかった。なのでもし自由度の高いオーダーだったら今回の衣装を提案することは出来ませんでした。アイドルとの関わりは衣装製作としてが最初で客としてアイドルやライブに関わった経験が無いのが要因の一つかもしれません。ここに関しては今回までディスアドバンテージになると思っていませんでした。

これまで自分が考えて来た対比、コントラストによる見せ方は様々な使用環境を想定しているため静止画でも見える「物」により近い物で、今回の対比は静止画では見えない、楽曲やパフォーマンスと合わさることによって見える、ライブに特化した「事(こと)」に近い物です。物と事が合わさる場面では物を見せるための事でない限り、物が事に勝る、同列に見えることはないです。物、衣装は事を支える物という認識でしたが、ライブでは楽曲とパフォーマンスと同列になって事を成しているように見えた、もっと感覚的な書き方をすると、今回の対比の作用が想定を超えてあまりにも強く、ライブの最中衣装が楽曲とメンバーのパフォーマンスによって真にライブ衣装として別物に化けたように見えました。自分が一番衣装のことを知っているはずなのにおかしな話ですが。

また着用者であるメンバーの皆さんと衣装の関わりの部分ですが、自分が製作した2ndは特に着用者と衣装を対比させているデザインです。また、他の製作衣装も含め装飾的な分量パーツとタイトなベースシルエットは身体と対比を図っている事が多いです。今回の衣装はそれらが無い、或いは逆を行く物で着用者に対して順当さその物、着用者の雰囲気に身体に馴染む、メンバーの皆さんも私服で着れると仰っている、着用者目線でもそのように思うデザインです。


フルオーダーの衣装を作る側として、既製品の衣服から選ぶでは実現できない1着を作りたい思いでいます。
そのために何か自分が作る物として分かりやすい、伝わりやすい形を組み込みたい、視認しやすい造形として自分の意志を組み込みたい、とそのように考えます。衣装そのものをより良くしたいという思いが先行していますが、自分が衣装を作る意味をより付けていきたいエゴ的な部分もあります。視認し難い物もこれまで多く取り入れていますが、それだけになってしまったらフルオーダーの衣装として極端に言えば作る意味を感じてもらえないのでは無いだろうかと、そう思っていました。結果としてそれは杞憂だったようです。

これらは自分が過去に製作した衣装を否定しているのではなく、グループの特性によりこれまで自分が作ってきた物と全く別ベクトルのデザインが成立する、という話です。



ここから衣装本体の話に入ります。

今回はこれまで多かったデザインソースは〜的なものや、サブテーマ、ファンタジーな物、デザインに係る裏話がほとんどありません。求められる結果のために必要な物だけを組み込んでいく、ミニマルな内容です。よって技術的な話が多くなります。また今回は書けないことが少なからずあります。何卒ご了承ください。

オーダーを確認します。
シンプルなシルエット、セクシーさ、コルセット風切り替え、ゴールドの髪飾り、凹凸の大きく出る&フワッと広がる分量のスカート。

シンプルなシルエットを作る際に、カジュアルにならないこと、
可愛いではなく、美しいラインを取ることを目指しました。あとは毎度のこと、とにかく上品に。

スカートとコルセット部分はさておき、襟なし袖なし前開きなしの生地一種類のみのトップス部分はタイトの一重で仕上げると印象軽く(カジュアルな見え方をする可能性がある)なってしまいます。
また首回り、肩部分は見返しを入れますが、ステッチを入れない場合手縫いで止める事になります。表に出ないように掬いで縫い留めても生地特性上、表に若干のあたり(くぼみ)が出ます。見栄え悪いです。星留めで装飾とするのも合いません。
よって総裏(裏地)仕様にしています。端から2~3cmを表と同じ生地を裏使い(表の生地の裏側は滑りが良いテクスチャーになっている。表側は滑りが悪い。)で見返し、それより先はキュプラ100%のベンベルグです。パフォーマンスでは汗をたくさんかくので水洗い可能な物を採用しています。キュプラは水により縮む特性があるので水洗い不可のものがあります。今回のような低分量でタイトなものは多少縮んでもほとんど影響ありませんが、念には念を。表地が水洗いできるなら裏もそうしたほうが連日ライブで時間がない時でもケアし易いです。

表から全く見えませんが、見返しと裏地の接ぎ合わせ部分の縫代は裏地部分倒して手縫いでステッチを入れています。スーツのジャケットに見られる仕様をサンプリングしたものです。テーラーさんが手縫いで仕立ててるような物を除いてほとんどのものが掬いミシンという工業用のミシンでステッチが入っていますが、元は手縫いです。直線ミシンのステッチでも大丈夫なのですが、手で入れたほうが高級感出るので手縫いで入れました。下の写真はその部分です。

よく見ると織りネームの角が切られています。織りネームの角が少し硬く、この部分は完全に肌に当たる部分なのでチクチクしないように切りました。見栄えは悪いですが着心地優先です。
全員同一デザインなのでメンバーの名前を入れたタグも付けています。

コルセット部分は切り替えよりもフェイクレイヤーを作る感覚で作っています。縦方向の縫代はどちらかに倒して8mmでステッチを入れています。ボーンの入っている本物サンプリングの仕様です。縦方向の切替線は本物ではなくトップスから続く位置に入れています。
コルセット上下のトップスとスカートとの切り替え部分縫代はコルセット側に厚みを出してフェイクレイヤー感を出すためはコルセット側に倒しステッチで留めています。
前中心ボタン部分の開きはもちろんフェイクですが、右側は持ち出しを作っています。左側は上下の縫い込み部分が厚くなるとノイズになるので持ち出しを作らず右側持ち出しの下に一重で入り込ませて2本のステッチで縫いとめています。本当はボタンを安定させるためにボタンボールを作りたかったのですがレース部分のボタンホールは負荷に弱いので無しになりました。かなり負荷かかる部分ですからね。

スカートはウエスト基準の360度のサーキュラースカート相当の分量にしています。大きな凹凸を左右均等に出すためにコルセットとの切り替え部分はスムーズな曲線ではなく、直線と急カーブを合わせたどちらかといえば角形に近いラインをとっています。急カーブ部分は縫う時に広げられ、その下側にドレープがでます。スムーズなカーブでも縫製段階でドレープ位置をコントロールできますが生地特性上パターンでの仕込みになりました。

生地はダブルフェイス(二重織)のサテンです。二重織は言葉の通り2枚の生地を一枚に織り上げ厚みを出した生地です。上で表と裏で質感が違うようなことを書きました。二重織生地ゆえです。同じダブルフェイスでも貼り付け(ボンディング)の物もあります。ボンディングは一時期流行ったので聞き覚えのある方もいると思います。

今回の生地は厚みと重みがあり、反発感と膨らみもあります。この反発感と膨らみがパフォーマンスに合わせてとても良い働きをしています。重みも布の動きを大きく見せるために必要です。振り子と同じです。よく見かけるサテンとはかけ離れた印象です。
とても良い生地なのですが、地の目がずれやすい、バイアス(斜め)方向によく伸びる生地です。スカートは前後中心を生地方向縦に合わせていますが、幅が広い扇型のため横側はバイアス(斜め)になります。長さも分量もあり、重さもあるのでバイアス部分が伸びて長さが変わってしまいます。一周同じ長さなのに、そのままでは仕上がりでバイアス部分、横側が長くなってしまいます。
今回の場合だと前後中心はパターン通りの丈、横側はパターンより多いところでも5cmくらい伸びました。横側のシームの部分は伸び放題でそのまま縫うと寸法ぶれるので寸法合わせながら縫いました。規格寸法ならサンプル作ってパターン修正でいけますが、全員分量も長さも違うので、着用時に並行になるラインを裾以外完成した衣装をフィッティングして頂いて取り直しています。


今回衣装はコンシールファスナー仕様の背開きです。開きはスカートまで食い込むのですが、ここで問題が一つ、コンシールはもちろん生地よりも硬いので、カートがふわっと浮くのを阻害してしまうんですね。横方向にはさらに動かないので、スカートが左右にねじれるのも阻害して開き付近のみですがスカートの動きを悪くします。
先に書くと、今回の背開きには長短2本のコンシールファスナーを使用してスカートの動きをなるべく阻害しないようにしています。長い方はトップスからコルセットを横断してスカートの下に入り込み、コルセット切り替え部分から5mm開けてスカートのみの開きが入っています。
スカートのファスナーをあけるとトップスから続くファスナーが見える形です。コンシールで裏地がないと成立しない仕様です。バンビのアリス衣装では二重スカート外側開き部分はスリット処理にしてスカートの動きを阻害しないようにしていたりします。今回はそれの表地一重バージョンです。リアルクローズには存在しない衣装のための完全オリジナル仕様です。


今回はここまでになります。ありがとうございました。



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