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「レスリーケン」衣装

昨年に10月公演した櫻井香純×三浦康嗣「レスリーケン」の衣装になります。
積み上げたレコードの上にターンテーブルを置き、その周囲で櫻井さんがパフォーマンスをする。
その振動で、針が飛びランダムな音を作る。
同時進行でその録音を行い、後半は録音した音を元に三浦さんがリアルタイムで音楽を作り上げる。といった実験的なパフォーマンス公演です。

櫻井香純さんはコンテンポラリー/フィンガーダンサー。
https://twitter.com/tomachaso
三浦康嗣さんは口ロロの主宰を務めています。
https://twitter.com/koshimiura

写真の衣装を宮崎が製作し、ZOCでもスタイリングを担当していた庄司(https://twitter.com/_yosuke_shoji_ )がスタイリングを担当しています。ヴィジュアルで見える範囲だと、青白等のテーピングは庄司が当日に巻いています(当日宮﨑別件で向かえず、、)。
実は、これと別で制作していた衣装があったのですが、諸事情で衣装を変更し(より良くするために変更させてくれと申し出た)、公演まで時間が無かった為過去に制作したアートワーク(写真右)をリメイクして着用して頂きました。
なので、今回は実際の制作経緯ではなく、公演内容と衣装のこと、アーカイヴについて当時の制作意図等書き連ねて行きます。このアーカイヴが気に入っている作品なので、アイドル衣装の生地よりも概念的な言葉が多く、且つ長文乱文になるかと思いますが、ご容赦ください。


実験的なパフォーマンスには実験的な衣装をと、
基本的に制作したものには名前をつけていますが、この作品の名前はOutside/distance(外側/距離(シームの解放))です。
服を作るときに、パターンに合わせて裁断しますが、その際に切られ捨てられる残布が外側。パターン線(出来上がり線)の外側。
シームを解いたときに出来る布端と布端の間と、衣服内の布と布の間が距離です。学生の時のアーカイヴ作品なのですが、衣服が持つ当然の要素を抽出し、それを再解釈し戻すという言い方で要素を象徴する作品群を作っていた時期があり、その中の一つで、これは要素2個を使ったキメラ体です。外側だけ、距離だけの作品もあります。

外側のみ象徴の作品は、簡単に言えば、裁断無しの四角形の布をパターン線(出来上がり線)で縫って服を作る。という事をしています。もともと、海際地帯の白地図を寄りで見た時にどっちが陸地か海かわからなくなるな、と思った事がきっかけです。こう言ったきっかけは結構覚えています。思考の元を知ることは思考を扱う上で重要で、スタンス的には理由を言えないことには価値がない、くらいの感覚です。(反面、理由がない、と明言出来ることも重要。)パターン線で縫い付けられた四角形の布はシームの曲線それぞれによってランダムなドレープを生みます。意図してドレープを作る場合はドレープを調整することは必須ですが、この場合は四角形のサイズ変更のみでドレープ自体の操作はせずに、むしろシーム内に仕様、タック等の方を優先して採用、調整して行きます。綺麗なシャツのパターンを引いて、そのシャツは作らない。

距離のみの作品は、シームを解く事が主題ではなく、衣服内の空間、布と布の間の空間を可視化するためにシームを解いています。また、着用する場合は身体と布の間の視認性を高めることも目的としています。
衣服制作は二次元(布)から三次元(服)にする操作のこと。という話が時々出ますが、どっちも三次元の物質じゃないか、と思った事を最初に、衣服を作ることは実際にどう言った操作なのか、を考えた結果、布を使って内側に身体が入る空間を持った構造を作ること。と定義した事が始まりです。建築と衣服は身体からの距離が違うだけで同じような物(例:FINAL HOME)という考えも起因しています。(今は2→3の操作は布を衣服に仕立てる事ではなく、絵型、デザイン画を衣服に仕立てること、だと考えています。)
この内側に身体が入る空間を持った構造の空間=距離を象徴にさせた作品です。内側に身体が入る空間を持った構造を作ろうでは、結局普通の衣服が出来上がるので、シームを解き(と仮定して)、透明生地に裁断した布を縫い付け衣服の形に仕上げています。イメージは身体の周りに裁断された布が漂っているようなイメージです。
布と布の間は、手のひらの前に空間は感じにくいですが、手のひらと手のひらを少し間を開けて向かいあわせるとその間に空間を感じる(どうでしょうか)、と言ったイメージです。二物間(手のひら同士)の距離。距離=空間としているのは、この間、空間認識の最低条件を二物間の距離の認識と同じ物だと考えているためです。この場合着用時の衣服、主に身頃の外形を作ることは、布と身体間の距離を作る事と同義です。距離が大きくなると布は落ちドレープを生みます。

そして、今回のアーカイブ、Outside/distanceは上記二つの複合で、距離のみの裁断済みの布が一部四角形の布をパターン線に沿って縫い付けられた形になっています。改めて右写真を見ると分かりやすいかと思います。
Twitterでは、布と身体間の空間の可視化。部分的に未裁断での形成。身体の外側を漂いながら服の形を目指す布。と紹介しましたが、結構的確なのでこのままここで使います。
部分的に未裁断での形成。外側を漂いながら服の形を目指す布。は裁断と縫いが同時に行われ、且つその途中であり、それらが透明生地(理想身体周辺の空間と言いたい)上に縫い付けられ形成されている。と言ったイメージです。

このアーカイブを採用したのは、単純にパフォーマンスの実験性の高さゆえです。公演内で事象を起こし作り上げていく様が、合致しているなと。
あとは、要素複合の作品群が、衣服の視覚的流動性(多角的な視点)を生むこと(鑑賞者の考察のための余白を生むこと、そのために一見での理解を避ける)をサブテーマにしていることもあり、どの角度からも見えるパフォーマンスに最適だと考えていた、というより使いたかったということもあります。
ちなみにこの衣服の視覚的流動性の考えはアイドル衣装に多く流用しています。360°デザイン、硬のディテール等、前々回記事参照。

YouTubeに公演全編の映像がUPされているので、公演のことは書かず、というよりは当日見に行けてないので詳しいことは書きませんので↓からぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=3uM1Lys0jAs



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