陸上競技を考える⑤

今回は、人の心に残るにどうしたら良いか考えてみたいと思います。

ちょっとスポーツの話を離れて、谷川俊太郎さんとASKAさんの対談をYou Tubeで見つけまして、なるほど~と思いましたので良かったら見てみてください。

【ASKAさんコメント】
音楽の力は新鮮なうちは70%はメロディの力
70%を過ぎて残りの30%に入ったときの詩の力は絶大で
時間が経つごとに
比率が変わってきて
良い詞を歌ったものは長く残る
人を振り向かせるのはメロディ
振り向かせた人を掴んでいくのは詞
それを感じた頃から詞の大切さはそこから始まった

確かに名曲と呼ばれるものは、メロディーも良いですが歌詞も良いですよね。音楽もそんなに詳しくないので、この程度で。

本題です。これをスポーツに置き換えても言えるんじゃないかと思ったのです。大会の記録や結果は恐らくメロディーにあたるんじゃないかと思います。そこから発する選手のコメントや行動、キャラクターが詞にあたるのではないかと。

メロディー→競技成績

◯◯選手金メダル!◯◯選手優勝、という形でデレビ、新聞などのメディア、Twitterもとんでもない数のリツイートがされます。

リオ五輪直後、日本陸連はリレーの活躍で珍しく良い意味での電話が殺到していました。テレビや新聞、雑誌、様々な方面からの出演オファーです。瞬間風速的には本当に突風が吹いていました。普段関心のない人も含めて多くの人が陸上界に振り向いていたと思います

詞→行動・言動

では多くの人が振り向いてくれた時に、どうやって掴むのか?ここが勝負の分かれ目じゃないかと思います。歌で言えば詞なんじゃないかということです。

オリンピックで記憶に残る選手のほとんどは名シーンや名台詞がついきてきます。水泳の北島康介さんの「ちょー気持ちいい」とか、有森さんの「自分で自分を褒めたい」とか。

リオ五輪で4×100mリレーの銀メダルは、全スポーツの中でもハイライトのひとつだと思います。個人では世界との差が厳しいけれどもバトンパスの技術で世界に勝つことができた。というストーリーが共感を得るものでありました。多くの金メダル種目がありますが、その中でもメダルの色は銀でもリレーが記憶に残ったのは、そういう側面があったからだと思います。

ただ別に面白いことを狙って言えということではなくて、極限の状態でも思わず出てしまう言葉が行動が共感を得るのであり、普段からの心構えだと思います。

競技で結果を出して世間から注目を浴びて色んなオファーが殺到した時に、青山学院はオファーを受けて積極的に発信しているそうで、そういうの大事だよねぇと神野大地選手のコーチである高木聖也さんがゲストの回でございます。

競技を行うこと自体は手段ではないか?

では良い詩を残す為にはどうすんのよって考えてみます。

競技をやること、競技で結果を出すこと自体は目的ではなく手段であるのではないかと思います。

とあるJクラブの方と話す機会がありました。「Jリーグで優勝すること自体は目的ではなくて、ホームタウンやサポーターに喜んでもらう為の手段でしかない」という話を聞いたことがあります。

似たような話で浦和レッズの長澤選手の考え方もそれに近いんじゃないかと思います。

僕たち選手は試合で結果を出すことが目的ではなくて、試合で結果を出すことを通じて浦和サポのみんなと喜びを分かち合うこと、スポンサーの方々もクラブの一員として同じ方向を向いてタイトル獲得に向けて取り組むこと、そして何よりホームタウンの地域の人たちに自分の地元に浦和レッズがあることに誇りを持っていただくことが大事であり、それが回り回って浦和レッズの価値となり、浦和レッズの経営に結果として現れてくるのだと思います。

陸上競技においては、こうした考えはあまり聞いたことがないのですが、どうなのでしょうか。

そもそも陸上競技の話であまり「ホームタウン」の文脈の話をあまり聞いたことがありません。

サッカーと陸上は違うんだと線を引くのではなく、これはこれで僕は課題だとは思います。TrackTownという番組名にはそのような想いも込められていますが、今回はこの話題は置いておきます。

広く世の中に・・・なんて大上段に構える必要はないと思います。ただ些細なことで良いと思うのですが競技を行う上で目的があった方が良いんじゃないかと思います。「誰か」という他者に向けたものでなくても、中野瞳さんのように「13年前の自分を越えたい」という自分に向けたものでも良いんだと思います。

目的の捉え方は競技を行うことが手段になれるように考えれば良いんじゃないかということです。目的というと硬いですが、テーマに近いのかもしれません。

そういうコアな考えを理解して競技しているかどうかで、同じ記録、同じ結果でも、もらたす意味が大きく異なってくるのではないでしょうか。

競技レベルは簡単には上がりませんが、目的を再確認し、行動することはすぐにできることだと思いますので、そういう選手が増えると良いのになぁと個人的には思うのです。

TV界のレジェンドのことば

とある陸連の研修会で、とあるTV界のレジェンドにお話をいただいた際に印象的だった話があるのでお裾分けさせていただきます。

「みなさんのお陰でここまで来れました」とインタビューで答えるスポーツ選手がよくいるけどテレビの世界じゃ0点だよ。
シドニーオリンピックで柔道の井上康生さんが表彰台で亡くなられたお母様の遺影を掲げたあのシーンは最高だね。
なんとなく大勢の人に注目を浴びる場では、「皆さん」と思いたくなってしまう気持ちも分かるけどさぁ、観客席の中にいるただ1人を指さして「おっちゃんの笑顔が見たくて頑張った」とか言った方が、みんなグッとくるんだよ。そういうことが言える選手になってくれよ。オリンピックでそういうシーンが見たいんだ。

とそんなことをおっしゃられたのです。僕が陸連に5年いて1番勉強になった時間でした。

ちなみにシドニーオリンピックの時の井上康生さんはこんな感じでした。

1+1の答え方

「1+1は?」と聞かれたら普通の人は「2」と答えますね。

でもテレビの世界では「3の1つ下」とか、2ではない言い方で答えるそうです。逆に2にならない答えを言っても正解で、そしたら他の人が突っ込めば良いと。

ヒーローインタビューで質問をされたときに「そうですね」と言うこともテレビの世界ではアウトらしいです。

なんでもいいから聞かれたことにすぐ答えることが大事だと。

その研修ではそういう話から「うれしいです」の言い換えの練習をみんなでしました。

引退した後のこと

あとその研修会で詳しくは話していただけなかったのですが、「引退した後にどうなりたいかを考えて競技をやった方が良いね」という話もありました。その時はピンとこなかったのですが、中長期の目的を持った方が良いということでしょうかね。

確かに引退した後に所属の会社で働きたい人、タレントになりたい人、陸上を教えたい人、事業を起こしたい人、陸連のような陸上界を動かすようなことをしたい人等、引退後のキャリアを挙げてみると、そこに辿り着くために現役の時にやるべきことって変わってきそうですよね。

ただこの話って他人事ではなくて僕も自分の目的は何だろう?と日々悩み書き換えているところです。大学時代に就職活動でバシっと人生の目標語れてる友だちが物凄く眩しく見えたあの頃から既に10年が経ちましたが、いまだに僕は迷子です。まさか陸上競技に携わり、ラジオでエンジョイしているなんて10年前の自分には全く想像もつきませんでした。僕みたいなフラフラ人間でもギリギリなんとかなっているので、不明確なりの進み方もあるようです。

ただ競技人生は短いのでアスリートの方は明確にしておいた方が良いのではないかと思います。

ラジオで一緒に話してて本当すげぇなぁと思うんですが、横田真人さん。あの人は目的とかテーマ設定しっかり持っててブレない感じスゴいなぁと思います。物凄く眩しいです。現役時代をほとんど知らないので見てみたかったなぁと本当に思います笑

まとめ

今回の話をまとめてみると、競技の成績は人を振り向かせることはできるけど、人の心を掴む為には競技を通じて達成したい目的やテーマが必要なんじゃないかなぁ、ということでした~。

お金もったいないのでサポートしなくて大丈夫です。笑