これからのこと。

公のお金を扱うこと

日本陸連とかスポーツ団体がお金を稼ごうとすると凄く悪いイメージがありますよね。今回はお金の話と書きながら2021年以降のことを考えてみたいと思います。2020東京以降のスポーツ界がどうなるのか楽しみでなりません。良くなるのか、悪くなるのか、大して変わらないのか、どうなっていくんでしょうね。

まずイメージとは裏腹に陸連のお金の使い方は物凄く厳しいです。

僕も民間企業時代は一定のルールはあるものの、会食等の費用を経費で落とすことありました。陸連は余程のことがない限りできません。

ちなみに助成金は、ほとんどが強化指定選手の遠征費・合宿費、あとは大会運営費になります。全額出る訳ではなく対象事業の一部が補填される形です。ただ人件費は対象外になりますので、我々職員の給与は対象外です。

つまり結局は陸連が持ち出してやっていますし、持ち出しでできる団体でないと助成金事業を行うことは難しいです。一般の方から電話で「税金もらってるくせに・・・」と心無いこと言われることがありますが、もらってはいるけど・・・というところが本音です。

ちなみに僕たちの給与は賞与は年2回ありますが、インセンティブが働くようなことも全くありません。頑張っても頑張らなくても変わらないと思われます。何年か前に「あびる君が一番評価高かったよ」って言われましたけど褒めてもらっただけです笑 給料高そうって言われるんですがそんなこと全然ないです。子ども2人このまま育てられるのか不安でしかないです。仕事は面白いしやり甲斐あるけど、このままで良いのか、というのが正直なところです。自分でなんとかしないといけません。

まぁまとめると、陸連は120%明朗会計です!

陸連の収益構造(2018年度)

陸連の収入:22億円
事業収入:約17億円
(協賛金12.8億円、参加料0.4億円、入場料0.6億円、放映権料0.5億円、助成金0.85億円等)
助成金収入:約4.7億円
(スポーツ振興くじ2.5億円、JOC1.35億円等)
検定料・認定料:0.5億円
登録料収入:0.3億円

陸連の収入はご覧の通り、収入の約6割が協賛金収入で成り立っております。オフィシャルパートナーのアシックスはじめとするスポンサー企業のお金で陸上界は成り立っています。

代表選手の活動だけではなく、小中高生の全国大会、普及活動、指導者や審判はじめとする担い手の養成等の活動ができているのはスポンサー企業からの協賛金かあるからです。

スポーツビジネスにおける4大収入は①スポンサー料②放映権料③チケット④グッズ販売と言われております。

陸連はスポンサー料以外は正直成り立っておりません。価値の図り方は様々であることは承知ですが、GGPや日本選手権のコンテンツ価値を放映権料で見るなら「5,000万円」という現実があります。実際いくらかは知りません。あくまで決算資料上の金額です。

ラジオで横田さんが「日本選手権出るのに5,000円払っています」という話がありましたが中高生の全国大会含め積み上がると参加料「4,000万円」意外とバカにならないのです。

陸連登録者として競技者の皆さんが払っているお金は陸連には100円しか入りませんので3000万円しか売上ありません。

スポンサーのメリット

スポーツ統括団体が企業に対して提供できる最大の価値は「チームJAPAN」です。「集団肖像権」という権利を買っていただき、権利を使って企業活動を行なっていただきます。これを「アクティベーション」と言います。

つまり日本代表選手の写真とか映像を使って企業価値を発信することがメリットとなります。個人の肖像は選手個人に帰属するので選手単体の肖像は使えません。あくまでチームということで複数名が写っているものになります。

一昔前は大会に看板を置いて、それがTV放映されて、露出量を広告出稿量に換算すると「◯◯億円です」というロジックで評価されておりましたが、もはやそういう時代ではないことはお金を出す側も受け側も承知です。

競技団体のお金の流れ

陸連というかスポーツ統括団体の活動をお金の流れを見たいと思います。

普及活動を行って競技人口を増やし、全国大会を開催してそこで活躍する選手を発掘して、発掘した選手を連盟が強化指定選手として育成して、更に日本代表クラスの選手を強化して国際大会で結果を残す。

その結果から得られた日本代表チームの知名度や名声をもって、企業に対して提案を行いスポンサーになっていただき、肖像権を使ってビジネスやブランド価値向上、CSR等の企業活動を行っていただく。競技団体はそこで得たお金を普及活動に使って・・・という循環です。

なので個人的には世界陸上やオリンピックで結果を残した選手はテレビやメディアに出まくって陸上良いよねって多くの人に思ってもらえるようになっていただけると僕たちも営業し易くなります。

改めて書きたいと思いますがスポーツビジネスの文脈では勝つだけじゃダメなんです。勝つことをきっかけに資金獲得や普及に繋がる活動に繋げる為の準備とアクションをしなければなりません。陸上界はここが全然できていません。

(スポーツビジネス勉強したい方は、僕も学生時代に関わりました「スポーツビジネス最強の教科書」を是非ご覧くださいませ。)

優良物件の見極め方

やっていることはタレント事務所に近いと思います。タレント事務所と連盟が違がうのは、肖像が使えるのはあくまで日本代表の活動期間中のものに限られたり、集団肖像しか使えない上に選手に拒否権があるということです。

従って、スポンサービジネスにおいて優良物件の条件は権利が色々使えることです。マーケティング担当はチームJAPANの権利として、選手個人や所属とどこまで握れるかが肝となります。

陸上の場合、日本国内で日本代表戦が開催されておりません。つまり日本代表ウェアを着た競技中の写真を使うことが難しいです。その結果スポンサーが使う写真はポートレートに限られていると推察されます。担当ではないので実際のところは分かりませんが。

競技団体の予算が意味するもの

各競技団体の予算規模=スポーツに対する投資額と見ても良いと思います。陸連は20億、サッカー協会は200億、この違いは本当に大きいと思います。

もちろんそんなにお金にまみれた考えではないですけど、お金の流れという意味では、普及育成活動も全国大会も、選手の海外派遣も全てコストセンターであることは事実です。正直、GGPも日本選手権も単体では赤字です。

ドーハ世界陸上みたいにプロジェクションマッピングを使ったド派手な演出をしたい、ダイヤモンドリーグ開きたい、室内陸上施設が欲しい、陸上界の色々な夢を実現する為には陸連が儲かってないとできないのです。新国立にサブトラがないと世界陸上ができないという話は良く聞きますが、そもそも開催できるお金ありませんからね。

つまり、陸連というかスポーツ団体はめっちゃ儲かるべきと僕は思います。いちスポーツファンとして、どのスポーツ団体も儲かって欲しいと思っています。スポーツ団体が儲かっても上述したように僕たちには大入り袋は出ませんから。もし僕が1億円貰ったら家買ったりクルマ買ったり旅行したりって豪遊できちゃいますけど、陸連が1億円貰ったら1億円分陸上界に還元することになります。なので、夢を叶える為に稼ぐチカラをつけないといけません。

公益法人会計は収支相償と言って基本は収入と支出はイコール。利益は「積立金」という形で用途が決まった形でストックされます。用途を変える場合は理事会で決議し、内閣府に申請を上げる必要があります。

ちなみに世界リレーは陸連の積立金から捻出をして開催をしております。マラソン日本記録の1億円も実業団連合の基本財産とスポンサーから捻出されています。

2020東京の成功に向けて文字通り身銭を切った取り組みをしています。陸上界はやっていませんが他のスポーツでは借り入れをしている団体もいると聞きます。

みんな貯金使ったり借金したりして2020東京を盛り上げようとしています。なかなか厳しい状況です。

ちなみにちなみにMGCは東京メトロ様はじめスポンサー様についていただいたので、ギリギリセーフらしいです。

企業の関心の変化

古き良き昭和の時代は大義に対して惜しみなく投資をしていただきました。例えば全国小学生陸上を支援いただいている日清食品さんは朝ドラ「まんぷく」の萬平さんこと安藤百福さんの志が今も受け継がれており現在も変わらぬご支援いただいております。もはやメリット云々の世界ではありません。

未来ある小学生たちが正しい走法を学べば、大きな可能性が広がります。安藤財団は、日本陸上競技連盟の考えに賛同し、1985年の第一回大会から「“日清食品カップ”全国小学生陸上競技交流大会」を支援し続けてきました。
http://www.ando-zaidan.jp/html/katudou_01.html

変わりつつある企業が持つスポーツに対する価値

当然ですが2020東京に向けて企業も身の丈以上に多くのお金を投入してきましたので、2020東京が終われば当然、収束に向かいます。

陸連スポンサーではありませんが、僕の知り合い方にお話を聞くと2020東京に向けて「2020に向けて盛り上がると思って多額の投資を行ったけど回収できなかった」「もうこれ以上お金は出せない」という話を良く耳にします。

インターネットの時代になり費用対効果を様々な指標で見易くなってきたこともあり、スポーツへの投資に対しても費用対効果が見られるようになってきています。しかも長くても3年といったスパンで回収をしにかかりますので非常に難しい状況です。

広告出稿を当てにした雑誌やWebメディアとスポーツが異なるのは、スポーツ団体の目的は競技の発展ですから広告出稿をしてもらおうと思って媒体を作っている訳ではありません。

「コンバージョンレートが低い」とか言われてしまっても「そりゃそうでしょ」と言わざるを得ないです。スポーツビジネスって莫大なお金が動くと思われがちですが冷静に陸上界の元締めの陸連が20億ですからね。インパクトは大きいですが、そんなに多くのお金は動いていません。

スポンサー収入というキャッシュを得ることに躍起になりすぎて入り口の期待値設計がちゃんとできてなくて、スポンサーと競技団体の目指すところがずれている、そういうケースが多い気がします。そしてその歪は大きくなってきているのかなぁと思います。今まで日本のスポーツ界は多くの企業に支えられてきましたが、ちょっと気まずい空気が漂ってきているのが気になるところです。

日清さんのように競技団体が目指すところに対して支援いただいていたところから、企業が目指すところとに対して競技団体が支援するようになってきつつあるのかなぁと思います。そこにきちんと対応できるスポーツ団体が今後も成長していけるんだと思います。

陸連の話に戻ると、スポンサー収入が6割なので、正直2021年以降かなり厳しいと思います。予算増加はほぼ厳しく良くてトントン、現実的にはマイナスなのではと思います。実際の交渉についていないので分かりませんが。。。

リスクの分散

資産運用で大事なのはリスクの分散ですよね。ということで陸連はスポンサー以外の稼ぎ方を考えるべきということで、頭の体操をしてみました。

スポーツビジネスの4大収入は「①スポンサー料②放映権料③チケット④グッズ販売」でした。

②放映権料収入は陸連が放映権を販売できる大会はGGPと日本選手権しかありません。グランプリシリーズの権利を一括で保有するか、マラソン代表選考レースを一括で保有するか・・・あんまり現実的ではないかもですね。

③チケット収入もチケット売れる大会2大会しかないので、放映権と同じ問題があります。

④グッズ収入はリレーやマラソン等人気選手の日本代表グッズを販売する・・・若干売れるかもしれませんが陸連の屋台骨になるほどの売上を上げるには、厳しいよなぁ・・・。

という形で、既存のスポーツビジネスの枠組みでは陸連が今より収入が増えるようなシナリオが僕には思いつきませんでした。むしろ、現状維持も厳しいのではないかと・・・。ヤバいなぁ。

コストを下げる

では次の頭の体操は、収入が増えないのなら支出を減らしましょう。陸連の決算書だと支出項目が分かりずらいのですが、基本は大会運営費と強化費です。繰り返します。分かりづらいですが、明朗会計です。笑

ネガティブに考えると大会を辞める、派遣対象者を限定する・・等でコストを削ることになります。逆にポジティブに考えると、やり方を変えればコストが下がるということだと思います。

例えば、ラジオで西本さんと横田さんが「10000mの欧州選手権は織田フィールドみたいなところが開催されている」と言っていました。"Night of 10K"というイベントです。

日本選手権やGGPの開催は簡単に言うとデカいスタジアムでやるレギュレーションになっています。デカいスタジアムだと当然ですが警備員がたくさん必要になったり、お客さんが迷わないように案内看板を立てたり、色々やらないといけません。

Jリーグやプロ野球なら同じ会場で何回も試合しますから、自前で買って減価償却してコストを下げていくこともできますが、陸上は巡業スタイルなので全てレンタルで、仮設で、会場ごとに寸法が違うので色々図ったり調整したり手間がかかります。

僕が関わった2016年名古屋の日本選手権では陸連は雨天でもしっかりアップできるようにサブトラックのホームストレートに巨大テントを作ります。メディアに取材してもらう為にメディアテント作りました。観客が少ないとみっともないし選手にも申し訳ないので、たくさん宣伝をして、地元地域に大量の無料券を撒きました。売上は一旦考慮せずとにかく客を埋めようと躍起になっています。2万人程度入って胸をなでおろす。みたいな状況です。自分で書いていてそりゃ職員総出で準備することになるわなぁと思います。

ラジオで西本さんと横田さんがたまに言う「サブトラで良くね!?」は意外と芯食っていると思います。そもそも全種目一堂に会してやる必要もないかもですね。

陸上競技の良いところは記録のスポーツなので究極は全員集まらなくても記録で1番決めれば良いのではないかと思います。集まってやるのはMGCとか日本選手権とか見てる方もシビれる大会だけで良いんじゃないかと。

こんな感じでインカムを増やすアイディアは浮かばないけどコストカットをするポジティブな案はたくさん浮かびました。他に収入増やす名案が無ければ、遅かれ早かれそういう方向に変わっていかざるを得ないと思います。

そういう意味では今後選手は陸連の強化費当てにしない方が良いんじゃないかと思います。オリンピックイヤーで盛り上がっているうちに、セルフプロデュースしてスポンサーやファンを付けて自分で稼いぐことを考えないと、やりたいことやれなくなってしまうかもしれません。あくまで可能性の話ですけどね。

ファンと競技者からお金をいただいた方が良いかもしれない

あるマラソン大会の主催者から面白い話を聞きました。「大会の作り方は誰からお金を貰っているかで方向性が違う」と。つまりスポンサーで成り立っている大会は「スポンサー目線の大会」、行政の助成金で成り立っている大会は「行政目線の大会」、参加料で成り立っている大会は「ランナー目線の大会」になっていると。なるほどなぁと思いました。

イベントやろうとしたら、まずはスポンサー、厳しければ助成金、そして最終手段として参加料でなんとかする、みたいな三段活用になります。

スポンサーなら、極端な話スポンサーしてもらう為の手段としてお客さんをたくさん入れる。「どんな人にどう見てもらって、どういう喜びを分かち合うか」みたいな話にはなかなかなりません。

広告媒体ってそうですよね。広告出稿してもらう為に内容構わず炎上記事を取り上げてPV上げる。僕の友だちがキュレーターやってますが、陸連が炎上すると喜んで記事をピックアップしてますよ。良い悪いじゃなくてそういう商売のやり方があるということです。

だから払えないかもしれないけど日本選手権は1人1万円で1万人入れてお客さんが喜ぶ企画立てた方が良いんじゃないかと。OTTが楽しいのは参加料で回っているからもひとつの要因でもあると思います。

考えて見た結果2021年以降多分色々変わる

結局のところ今後どうなるか本当に分かりません。スポーツ界は今まで企業に支えていただきましたが、今までの方法論が通用しなくなるのはほぼ間違いないでしょう。陸連も今ほどの体力も一時的にはなくなるでしょう。

となるとファンや競技者からお金を貰って循環させる仕組みを考えせざるを得ないと思います。ふざけんなと思う方もいるかもしれませんが、そうなると逆に本当にファンのこと競技者のことを考え行動するようになると思いますのでむしろスポーツ界良くなるんじゃないかと思います。

音楽イベントってチケット代高いですよね。企業の協賛ついてるってあんまり見たことないですよね。先日東京ドームでとあるロックミュージシャンのライブ見に行きましたがファンへの愛が半端じゃなかった。「ファンの皆さん」なんて言わない。「そこのお前!」って。一瞬ドキッとするし。言葉がバンバン入ってくる。ちゃんとファンと向き合ってくれてるなぁって思いました。

今は陸連と選手って対立軸にあるように見えますが本来、演者とスタッフみたいなもんで仲間じゃんって思います。一緒になって会場に来てくれるファンや子どもたちを思いっきり楽しませるのが選手と僕たち裏方の仕事じゃないかと思うんですけどねぇ。

音楽ライブのメイキング映像とかで開演前にバックヤードで演者とスタッフが円陣組むやつ、あれに憧れます。

対立軸作って炎上して喜ぶの僕の友だちなんで。「陸連あざす!PV爆上がりっす」ってLINE送られて来ちゃうから。笑 

そんな奴に負けないように一枚岩になりたいものです。

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〆^””””ヽ( ̄▽ ̄)槍投げー!!
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渋谷のラジオ「TrackTownShibuya」/文化放送「TrackTownJPN」/日本陸連エンジョイ職員/とある大学の非常勤講師/陸上競技を考える

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