物理の学び方3

 物理の入試問題を解くときに大切なことは,考えないことです。
 「?」と思うかも知れませんが,自然現象の仕組みが人間に解るはずがありません。だから,われわれは物理法則を学ぶのです。物理法則に従えば,入試の問題くらいは誰にでも解くことができます。そうすることで解答できるように作られているので。つまり「考えない」というのは,物理法則を適用して方程式を書き,その方程式に基づいた判断を行うということを意味します。自分で考え出さないということです。
 試験のときには時間制限もあるので,答を出すことを急いで,ややもすると,上述のような正しい過程を経ることなく根拠のない判断で結論を出してしまいます。しかし,そのような結論はたいてい間違えています。「急がば回れ」ではありませんが,制限時間に正しい判断を行うためにも,落ち着いて方程式を書き,それのみに依拠して議論を進める必要があります。
 みなさんの学んでいる物理法則は過去の物理学者たちの努力の結晶です。力学の問題に対しては,自分の独断よりもニュートンに従う方が安全で確実なことは明白です。
 問題文を曲解したり,勝手に都合よくストーリーを書き換えることなく,問題文と物理法則のみに従うという習慣化することが大切です。これは,態度の問題なので短時間では身につきません。問題演習のときに常に意識しましょう。

 ところで,「物理法則を適用して方程式を書き」とは具体的にはどうすればよいのか?
 問題設定をそのまま数式で表現すればよいのです。しかし,そのまま表現するためには物理の知見が必要になります。物理の方程式は,単に日本語を数式に翻訳して得られるものではなく,抽象的な物理法則の方程式を問題設定に応じて具体的に表示していく必要があります。例えば,運動方程式は ma=f ですが,この式を書いても何も解決しません。提示された状況から m,a,f を読み取っていく必要があります。そのためには,物理の目を通して物理の心で問題文を読む必要があります。物理を学んだことのない人には出来ない作業です。
 「物理の目と心」を養う訓練が,繰り返し述べている教科書を学ぶということです。

高校生,受験生に物理を教えています。