下鴨車窓『微熱ガーデン』@ゆめアール大橋
朝、開演までには十分余裕をみて熊本を出発したものの、高速道路の事故渋滞のため高速バスが遅れに遅れ、博多駅からタクシーに飛び乗ってなんとかギリギリ開演に間に合った。下鴨車窓は、2011年の『人魚』以来、2回目の観劇。
ちょっとバタバタした気持ちのまま客席に座って、まず驚いたのはアクティングスペースの狭さ。アパートの一室に見立てられた、それほど広くない舞台のほとんどを、何脚もの長机の上に並べられた鉢植え(代わりのバケツ)が占めていた。つまり俳優の動くスペースがすごく限定されている。
開演前のアナウンスで、上演時間が約90分とのことだったけど、こんな限られた活動域で90分もつのかな、と思った。が、まったくの杞憂だった。最後まで愉しく集中して観劇した。
観劇後に残ったいちばんの印象は、「とにかく巧い」。人物のキャラクターや関係性をさりげなく、でも的確にスパンと表現する台詞とか、細部の設定の仕方とか、タランティーノの映画を思い起させる時間軸をスマートにずらす構成とか。とても秀逸なサスペンスとして観た。
その一方で、きわめて「映画的」だった、という印象も受けた。というよりむしろ、上記の秀逸さを本当に活かしきれるのは、演劇ではなくて、映画という媒体じゃないか、と思った。昔の8mmとか16mmフィルムとかのトーンの映画であったほうがずっと面白かったのでは、という、ちょっと確信めいた感想をもった。
あと、女優のふたりが良かった。とくに中村彩乃さん。役柄ともマッチしていたこともあって抜群に魅力的だった。もしかしたら前述の「映画にした方が…」との感想は、単純に、中村さんの顔立ちが映画映えしそうだから、というのが意外と大きいかもしれない。
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