大帝ポペ『ふたりはぼっちで』観劇@はあもにい多目的ホール【ネタバレ注意】

熊本地震の年に、福岡で行われた作品の再演。
ぼくは運よくこの初演も観ていて、そのときは「狂」が付くくらいの熱をビシビシ感じた作品だった。「熱狂」というよりも「狂熱」。作品世界が多少崩れようがどうしようがそれよりも熱源の持続を最優先するような疾走感。

それに対して今回の再演版では、「熱」はあのときほど感じなかった。でも「狂」は、よりパワーアップしていた。

キャストが変わったことで、男2人による二人芝居から、男女の二人芝居へ。それに伴って脚本もけっこう大幅にリノベーションされていた。二人の関係性が変わったことで、物語自体はシンプルになったと感じた。

構成としては4章+αの章立て。
1章は「9マイルは遠すぎる」みたいな短編ミステリ風の趣向があって、そういうテイストの作品なのかと思って観ていたら、どんどん違う世界に連れてかれる。

初演のときは3、4章くらいからちょっと異常な感じが漂いはじめたと記憶しているけど、前述したとおり再演版では二人の関係性が変わったため、4章まではわりと類型的な親子の物語に収束するように見えた。

けどその分、部屋が破壊されるあたりからの狂いっぷりが際立った。4章まではわりとよくある不思議系のお芝居、でもその先にあの光景が繰り広げられるのが大帝ポペの強みだと思った。無の感情で「部屋のセットを壊していく」という役割に勤しむ裏方。彼は観客の目を避けようともせず、堂々と淡々と仕事をこなしていく。そしてセットが崩れてナニモノでもなくなった空間で繰り広げられる茶番。圧巻。

気になったのは二人の関係性について。初演のときは「国王」とそれに振り回される男、というのがぴったりハマっていた。でも今回はそこが飲みこみ難かった。原因は、役柄を離れたときの役者2人の関係性が、実際はむしろ逆なのを個人的に知ってるからなのか。それとも、その実際の関係性が舞台上で透けて見えてしまっていたからか。
どっちなのかぼくには判別できなかった。

最後に「熱」について。
なぜ初演のときほど今回は熱を感じなかったのか、観た直後はあんまり分からなかったけど、いろんな人の感想に触れたことで、いくつか思い当たった。
一つは、会場が広くなったこと。単純にそれで熱が拡散した可能性はある。
もう一つは、月緒役のはまゆうの声。ぼくはそのへんぜんぜん専門じゃないから、それが声量なのか声質なのか分からないけど、まだはまゆうの声に観客を巻き込むだけの熱量を孕むキャパがなかった気がする。
あとは上に書いたように、二人の関係性がハマりきれなかったというのも大きいと思う。

ともあれ、前説と物販で活躍(?)したポペ人形をはじめ、独自の道を歩んでいく大帝ポペ。その存在はとても心強いし、今後の活動がとても楽しみ(とくに今冬の公演は必見!!)。


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