真夜中ミサイル「ミサイル危機一髪」@現代美術館アートロフト

とある小さな銀行の支店を舞台にしたシチュエーションコメディ。観てる最中に思い出したのだけれど、ぼくこれ、だいぶ前にジョビジョバのオリジナル版を映像で観ている。あらかた覚えてなかったけど。
(調べたら今ユーチューブで全編見ることができるみたい。画質悪いけど)

序盤、高岡さんによる「政治家の秘書」は、声にリアリティがあってオリジナル版よりずっと良かった。ただその分、後半でどんどん常識的範疇から踏み外していくところの説得力は弱まってしまったと思う。

「デジャブ」のくだりは、オリジナルからプロットを弄ったことで、ほぼ本来のメタ演劇的な意味合いを失ってしまった。削るなら「デジャブだ」と言い出す台詞まで削っても良かったんじゃないかと思った。

全体の印象としては、序盤の「銀行員が言われるままに3千万を貸し出す」というところに、常識的な意味じゃなくコント的な文脈でリアリティを感じられるかどうか(ノレるかどうか)が、そのあとの展開を楽しめるかどうかの分水嶺だと思った。そしてこの脚本は、「ノレる」状態にもっていくハードルがとても高い。オリジナル版でもそこをクリアしてるかは微妙。

脚本では、「トイレに行って警察の突入に気づく」くだりとか、「みんなからリーダーと呼ばれて浮かれる」くだりとか、オリジナル版(というより今見れるユーチューブ版)から改良されてる細部がいくつかあった。

後半につれてエキゾチック組合の面々を応援したくなるところは素直に楽しい。でもやっぱり粗い。脚本がそもそも粗いと感じるし、コントの文脈のなかでキャラクターをどこまで生身の人間(の生理)に落としこむかは本当に難しいと思った。

そこを余計に難しくしてるのがラストシーン。最後の最後、物語がコント文脈から逸脱して終わるので、逆算して言うと、そこまでにキャラクター達が「人間」になってなければならない。いわばコントの生理からドラマの生理に移行するわけで、しかもそこをあからさまにやってしまうと「白けてしまう」。水面下でのかなり高度な調整が必要だと思った。

で、ぶっちゃけ個人的には、そこまでの労力をかけるほどの価値があのラストにあるとは思えないというのが率直な感想。ここを改変するのはオリジナル脚本への批判の範疇に入るけど、個人的には、コントのまま気持ちよく終わってくれたほうが断然いいと思った。

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