FOURTEEN PLUS 14+『マンシューまで15分』@ぽんプラザホール

 「ホール演劇」と「テント芝居」がリミックスされたような公演だったと思った。
 そして個人的には、「テント芝居」の要素がとても好みだった。全体の印象をたとえて云うなら、定食屋の店主が「美味いだろ」と思うものをてんこ盛りにした大盛海鮮丼、みたいな感じ。
以下、ちょっと分析的に書いてみると…

序盤は、映画的な時間操作がこまめに行われ、物語のエンジンがゆっくりと始動する。で観ていると今回の物語は、現実(とされる時空)と「マンシューコク」に代表されるような架空とを行き来することで駆動するのだと分かってくる。でそれに呼応するように、芝居中、メタ演劇的な自己言及が何度も差しはさまれて、観客と物語の距離もそのたびに伸縮する。
 ちなみに冒頭に書いた「ホール演劇」というのは、「テント芝居」に対応させるために、ついさっき勝手に考えた造語だけど、「ホールで公演されるのが最もしっくりくる演劇」くらいの意味。で、この作品では、中嶋さとさん演じる「中沢陽子」を軸とする物語が、それに該当すると感じた。
 一方、ヨウ手嶋さん演じる「中沢太郎」を軸とする物語は、架空のマンシューコク、もしくは架空の「白テント芝居(劇中劇)」によって語られる。この二つの物語は、まったく別物だけれど唯一点、「陽子」と「太郎」の心象によってつながっている。

 個人的にすごくタイムリーなのは、ちょうどぼくも今書こうとしている新作で、「テント芝居」の面白さを自分のなかに取り込みたいと思っていて、もっと言えば「ホール演劇」にそれを取り込みたいというふうに思っていて、そのヒントをいくつか貰えたこと。いろいろと参考になって勝手に感謝。

 ただ今回、この二つ、「ホール演劇」「テント芝居」が一つの作品としてうまく融合していたかと云うと、やっぱり混乱(混線)はしていたと思う。もちろんこの作品は、そこの融合をコンセプトとする作品ではなかった、というのが大きいとは思うけど。ついでに云うと、もっとも観客を混乱させたんじゃないかとぼくが感じたのは、この作品が「ホール演劇」から始まったこと。『マンシューまで15分』というタイトルなのに、マンシューとはまったく別の物語から始まったことで、少なくともぼくはちょっと混乱した(観ている最中に、というよりも、むしろ観劇後に「一個の作品」として全体像を捉えようとしたときに)。

これは物語のバランスの問題で、ぼくは「中沢太郎」の物語がもっとデーンと作品の大黒柱になっていたほうが安定すると思った。もちろんこれは、ぼくが「テント芝居」好きだから、というだけかもしれないけど。

 以下、いいと思ったところ。中嶋さとさんの表情の陰翳がよかった。ヨウ手嶋さんの舞台上での立ち居のカッコよさ。中山ヨシロヲさんの渋い声。ともなが舞さんと後藤香さんはセリフが腑までしっかり落ちて身体に馴染んでいる安定感が心地よかった。佐藤柚葉さんの「佳乃子の妹」の熱演。山本由貴さんの終盤のストップモーションのときのぴくりともしない美しさ。そして石橋征太郎さんのキャラクター。マンシューコクのリアリティの半分以上は、あのキャラクターが支えてたと思った。

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