title of show 観劇@studio.in.K.【ネタバレ注意】
今作は、2008年にブロードウェイで上演されたミュージカル作品。『タイトル・オブ・ショウ』。キャストは4人、セットは4脚の椅子と1台のピアノのみ(今回の公演ではキーボード)。
2004年、誰でも応募できる「ニューヨーク・ミュージカル・シアター・フェスティバル」で厳しい書類審査を通過した本作は、フェスティバルでの上演が大評判となり、2006年にはオフ・ブロードウェイで、さらに2008年からはブロードウェイで上演されるヒット作となった。らしい。(以上、ネット上の情報より)
で、今作の妙味は、上記のサクセスストーリーをほぼそのまま舞台の上で再現ないしミュージカルとして再構築していくところ。応募締切3週間前から、仲間たちとの打ち合わせを経て、台本が出来上がり、曲が出来上がり、フェスティバルでの上演がプロデューサーの目に留まって、成功の階段を駆け上がっていく。
それらのストーリーが描かれる過程で、観客は自然と彼ら4人を応援したくなる。しかもその「彼ら4人」とは、演じられている物語内の「彼ら4人」であると同時に、いま目の前で物語を演じている彼ら4人自身でもある、という趣向。
その2重構造に、熱狂の源泉がある。
これは、たとえば最近の映画「カメラを止めるな!」の大ヒットにも通ずるし、たとえば全国各地で上演するたびにファンを増やす「劇団短距離男道ミサイル」の愛され方にも通ずるものを感じる。
観客の「応援したい」という感情が、演じられる物語のドキュメンタリ性、つまり虚構と現実の2重構造によって、倍加されるのだ。
ただ、その場合の「熱狂」の対象はいったい誰か?
言い換えれば、今作において観客の熱狂を受けとる「彼ら4人」とは誰なのか?
今回の公演の場合、それはオリジナルキャストの4人だったと思った。その証拠に、ぼくが観劇後に感じた「ああ面白かった」という満足感の大部分は、ブロードウェイでの本家公演を「追体験できた」という満足感と重なっていた。
もっと端的に言うと、観劇後、「ああ今作のオリジナル舞台が観たい!!」と強く思った。
それはそれで、今公演の狙いのひとつだったかもしれない。けれど、それだけじゃぼくは勿体ないと思う。
この作品を熊本で上演する以上、観客に愛されるべき「彼ら4人」は、やっぱり今公演のキャスト4人であるべきだと思う。
もしこれが商業演劇なら、そこまで望むのはほぼ無理筋だと思うけれども、小劇場なら、それができる。というより、小劇場の醍醐味はまさにそこだとぼくは思うし、「title of show」という作品はそれこそを求めているとも思う。
一公演としてはもちろん、ちゃんと満足して会場を後にするるくらいには面白かった。けれど、もう一歩先を観たい。と思った。
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