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スポロレが8カ月で2本買えた話_その3

這えば立て、立てば歩めの…

きっと皆さんご存じのとおり、スポロレのSSモデルには購入制限があり、ここから1年先はサブマリーナ、GMT、デイトナ…は国内正規店では買えません。同じモデル(私の場合サブマリーナノンデイト)は5年間も買えません。建前としては一人でも多くの客に売りたいからということですが、普通に考えて転売対策だと思います。

そうなると人間の性(個人的な癖かも)でしょうか、違うモデルが欲しくなります。ロレックス2本持ちなんて身の丈には完全に合っていないけど、資産だと思えば大丈夫!とかなんとか適当な自分に都合の良い言い訳を探して、新しいもう1本を探しはじめたのが3月でした。
次のターゲットは、GMTマスター2のエバーローズゴールドのコンビ。
今年イエローゴールドが発表されて人気が二分するはずなので、狙い目だと思ったからです。
サブマリーナノンデイトを思いの外早く手に入れたことで、次もスグに買えると思って探しはじめたが、そうは問屋が卸さない。都内のあちこちの店を廻って言われることはだいたい3種類。なかでも圧倒的に一番多いのは「コンビは入荷数が少ないです」。次に「エバーローズゴールドは年配の方からも人気で」。その次が「女性も探されている方が多くて」だった。挙句の果てには「今、購入制限中ですか?やっぱり。そういうお客さまけっこう多くて」と呆れ顔で芯を食ったことも言われた。こちらとしては「だからどうした」と思うのだが、一方で「みんな考えることは同じようなもんだな」とも思いました。

小さな実験のはじまり

しかし今回はただ手当たり次第に入店するのではなく、毎回ひとつなにかを実験をすることにしました。
まずは服装。
少し高そうに見える服装の日やその筋の人にしか良さがわからない古着の日、アメカジの日、ミリタリーの日、派手めな日、チャラめの日、とにかく地味な日、などなど試しました。
次に会話。
GMTマスター2を探している理由を毎回アレンジしてみました。素直に二本目を探していることを伝えてみたり、まだロレックスを一本も持っていない体裁にしたり、年代物を持っているが今は違う方向のロレックスが欲しくて、といった作り話を並べてみた。(店員の皆さまごめんなさい)
あと時計。
サブマリーナノンデイトを着けていくか、やっぱりゲンを担いでスピードマスター?はたまたアップルウォッチ?チープカシオ?30年前に買ったインドのHMTなどを試してみました。
結果わかったことは、まず服装というか個体としての雰囲気はしっかり見られているということ。特に腕時計と靴はすごくチェックされているなぁと感じました。
また会話そのものにはほとんど意味がなかった印象です。よほど会話上手な人なら「あいにく~」の後から「もう一回見てきますね」に持っていけるのかもしれないですが、私は元々人見知りな陰キャなのでわりとあっさり踵を返してました。
そして腕時計。サブマリーナノンデイトを着けていくと会話のきっかけにはなりえますが、ロレックス正規店としては「一人でも多くのお客さまにロレックスを届けたい」そうなのでプラスには作用しないと感じました。ロレックスはユーザーの裾野を広げていく戦略のようです。そりゃ年間100万本以上生産している(らしい)いわゆる工業製品なので納得もいきますよね。

マラソンなんて意味が無いと思った矢先

「あと半年待てばSSモデルの制限が解けるし、もういいか」と思いはじめた8月のある日、携帯に「来店予約の確定」という見慣れない文字の入ったショートメールが届いた。そう毎週外れつづけていた入店抽選がある都内の正規店に初めて当選!

ショートメールから10日。その日がやって来た。早めに仕事を切り上げて指定された時間よりも早く店に着く。もし15分以上遅れたら入店の権利がなくなるらしいが、さすがに1時間前は早すぎた。まあでもここまで来ておけば、電車が止まっても、脚が攣っても絶対に店にたどり着けると安堵した。どうせ時間を潰すなら金持ちがたくさんいそうな所に行って、そこの空気を吸って少しでもその空気を纏っていけば、なんとなくいい雰囲気が醸し出せるかもしれない。書いてて恥ずかしくなるようなアホなことを考えて百貨店のハイブランドフロアに行った。結局ただ場違いを実感しただけだったが。
そんなこんなしているうちにけっこう時間が経っていて気が付けば指定時刻の15分前。そそくさと店舗前に戻り、中からは見えない場所でその時を待った。そもそもその時って何時だ?5分前?ちょっと早いかな?ジャストオンタイム?遅いか?じゃぁ3分前を切ったら向かおうと中庸をこよなく愛する日本人の典型的かつ安易な考えのもと、その時をインド製の時計とにらめっこしながら待った。

そしておよそ1時間30分後。
私はGMTマスター2エバーローズゴールドが入った紙袋を握りしめて店を出た。目の前の車や街並みが滲んで見える。急に暗いところに出たせいか、乱視のせいか、それとも汗か、涙か。
その後、お金のやり繰りにたいへん苦労したことは割愛しますが、とにかくこうして私は8カ月の間に2本もスポロレを手にすることができました。
そして今は、来年2月からはじめるであろうデイトナマラソンに向けて、2本のロレックスのその針が止まらないように交互に楽しんでいます。

つづく(次でおしまいです)

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