私選 #315な本 Café Parade編

今回はカフェパレ編です!

★Café Parade
第一印象がとにかく華やか。曲もオシャレで幸せになる〜!
そしてご多分にもれず、女の子が二人……いや一人? いらっしゃる? あれ男の子ばかりのアイドル事務所では? と混乱しました。

🟡神谷幸広
  生い立ちと追い剥ぎの話を見たときには驚いたものの、モバエム神戸歌謡祭イベストからどうも神戸あたりの出身じゃないかと読み取れて、元神戸市民としては色々と納得。
  神戸、偏差値の高い私立がゴロゴロあるので教育熱心な親御さんが中学受験に一生懸命になりがちだし、そういった意味で窮屈な思いをしてるのかな、という感じの同級生を見ることはちょくちょくあったので……。
  三宮とか市街地は異国情緒が強いし、外国への憧れが自然と育っていきそうなのも理解できる。
  あとメキシコでの追い剥ぎは普通に怖い。よく生きてたね(本人も言ってるけど)。この恐怖心は私が佐藤究「テスカトリポカ」(KADOKAWA)を読んだせいもあると思いますが……。

そういうわけで、異国への旅(そしてミステリ)といえば、のどうしても外せない1冊を選びました。

梓崎優「叫びと祈り」(創元推理文庫)

「物語さ。言っただろ。俺は旅人なんだ」

梓崎優『叫びと祈り』創元推理文庫 289頁

海外の動向を分析する雑誌を刊行する会社に務めている斉木は、語学力を買われて海外の取材に飛び回る。アフリカ大陸の砂漠のキャラバン、スペインの田舎にある風車、ロシアの修道院におさめられた不朽体、アマゾンの奥地にある少数民族の集落――。各地で斉木が出会う異国の謎。

  世界を旅したと聞いて真っ先に思いついた1冊。
  こちらの想像力を掻き立てる異国描写がとても素敵で、神谷もこういう景色を見てきたのかな、という気分になる。
  ミステリ的には特に最初の短編「砂漠を走る船の道」の完成度に心を掴まれてしまった。これだけでも読んで衝撃を受けてほしい、とすら思ってる。
  「凍れるルーシー」はロシアを舞台にしているので、ワートレ的にも◎、でしょうか。

  神谷といえばで切っても切れない「紅茶」で考えた1冊もあるので、こちらも紹介。

有栖川有栖「ロシア紅茶の謎」(講談社文庫)

被害者の飲み物に誰が、いつ、どうやって毒物を入れたのかが判らないんです。

有栖川有栖『ロシア紅茶の謎』講談社文庫 207頁

  山下次郎の本の項で挙げた「ペルシャ猫の謎」と同じ、臨床犯罪学者・火村英生と推理作家・有栖川有栖が活躍する国名シリーズの1冊。こちらは第一弾(なので時代設定がより古い。なにしろ携帯電話も出てこない)。
  表題作が神戸を舞台にした紅茶にまつわる事件なので、先程の「叫びと祈り」と同時に思いついたものの――お茶が出てくるミステリ、お茶で毒殺されるんだよなぁ(2回目)と謎に良心が働いてリストに入れるのを躊躇ってしまった。でもせっかくなので今回は紹介。もちろん他の短編も面白い。舞台が関西なので、きっと身近に思ってくれるだろうし。
  個人的には毒殺のトリックを導き出すロジックが好き。あと10代の頃にこれを読んでロシア紅茶に憧れた思い出補正もあります。

🔵東雲荘一郎
何らかの条件下でいつも閉じてる目が開くのかとか、友好度(?)が上がると大阪弁が増えるのかとか考えていたらどちらも全くそんなことはなかった。リメショの青い瞳がまぶしい。
個人的に探偵ドラマガシャの雰囲気がめちゃくちゃ好きだったので引けて嬉しかったです。サイスタであんなにもガシャカードのストーリーが読みたかったことはない。

近藤史恵「タルト・タタンの夢」(創元推理文庫)

りんごの酸味とキャラメルのほろ苦い味が渾然一体となって、うっとりするほどだ。

近藤史恵『タルト・タタンの夢』創元推理文庫 19頁

商店街の小さなフレンチレストラン、ビストロ・パ・マル。気取らないフランス料理とデセールを作るシェフ三舟は、お客さんの巻き込まれた事件や不可解なできごとの謎を鮮やかに解く名探偵でもある。

  美味しそうなお菓子の出てくるミステリを本棚で探していた時に、候補として2冊上がったうちの1冊は巻緒くん、こちらの1冊は東雲さんだなとすぐ決まった。レストランの話なためお料理の話も同じくらいに魅力的なので、シリーズものとして次作をアスランに当てはめてしまったくらいにはお気に入りの本。
  こちらはタルト・タタンやガレット・デ・ロワ、暑い夏のデセールやチョコレートといったお菓子のエピソードが印象的。シェフ三舟はお料理もお菓子も一人で作っちゃうけど、アスランと協力してフルコースを創りあげる東雲さんは作中のようなお料理の相談をいつもしてるんだろうな。

🔴アスラン
山下次郎ソロを目当てにCDを買い再生し、音圧のすごさに飛び上がりそうになったのはいい思い出。色々と生きづらそうな中、器の大きい男と出会えてよかったね……。
そしてサイスタでお部屋が映る度に寝具への並々ならぬこだわりを感じる。
あと、ランダムお仕事で単発ドラマを引くとめちゃくちゃテンションがあがる。

クローズドサークルだ!!!

こういうお仕事を49人分見たい。毎回言う。

近藤史恵「ヴァン・ショーをあなたに」(創元推理文庫)

「春の野菜は、たいして手を加える必要はないんです。生命の息吹にあふれていますからね。その味を引き出してやるだけでいいんですよ」

近藤史恵『ヴァン・ショーをあなたに』創元推理文庫 20頁

  東雲の項で挙げた「タルト・タタンの夢」の続きにあたる1冊(なのであらすじは割愛)。こちらはお料理の話がメインで、引用のような美味しそうな描写がパワーアップしてる印象があり、厨房組に似合うシリーズだなと選書。
  三舟シェフの人間らしさというか可愛らしさが垣間見えるエピソードが増えてその魅力に気付かされるのは、アスランの苦悩やそれを乗り越える姿から彼の魅力を知ることにも通じるなと思う。

 
今回315な本を選ぶにあたって海外作品を入れてなかったのです。
  これは単純に私自身が海外の小説に疎いので入れられないな……と思ったからなのですが、ここでおまけとしてお料理にまつわるどうしても好きな海外小説を1冊紹介したいと思います。

ハリー・クレッシング/一ノ瀬直二訳「料理人」(ハヤカワ文庫NV)

「君の手紙によると、君は何年も道楽で料理をやっていて、二十人前は楽につくれるようだな。それから簡単な食事も手のこんだ料理もどちらもできると言っているが――ほんとにそうかね?」

ハリー・クレッシング著  一ノ瀬直二訳「料理人」ハヤカワ文庫NV 22頁

平和な田舎町コブに自転車に乗ってやってきた料理人コンラッド。町の半分を所有するヒル家のコックとして雇われた彼は、その傲岸不遜な言動と料理の腕でヒル家の者たちを、そして町の者たちを魅了していく。そしてコンラッドの料理を食べ続けるうちに肥満していた者は痩せ始め、痩せていた者は太り始める……。

  アスランとは方向性が違うけど、まさに悪魔的なコックの物語。アクが強いけど見事な人心掌握術は見どころ。
  個人的に2年に1回くらい無性に読みたくなる本。奇妙な味というかブラックユーモアというか、独特の読み口が癖になる。
  今の表紙も大人の童話みたいで悪くないけど、私は旧版の表紙がより悪魔的で好みです。

この表紙、ほどよく不気味で好き。



🟡卯月巻緒
本当に申し訳ないけどもしかしてこの子も女の子なんだろうか……と一瞬思ってしまったことを許してほしい。
ケーキがお好きだということは理解したけど……くらいの頃にモバエムの「緑蔭のGymnasium」の少し粗野な役柄と「サマー・グッバイ」の繊細な役柄を立て続けに観ることになり、演技の振れ幅がすごいな……という印象でした。あとオフショットで居眠りしてた隣の子に教科書見せてあげるのめちゃくちゃ優しいな……。

米澤穂信「春期限定いちごタルト事件」(創元推理文庫)

「わたし、スタンダードシフォンと、コーヒー」
  まずはシフォンで肩慣らしか、と思ったが、
「……とミルフィーユとパンナコッタとストロベリーショート」
  いきなり全開ですか。

米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』創元推理文庫 155頁

高校進学とともに清く慎ましく「小市民」として生きよう――中学時代のお互いの「失敗」を繰り返さないようにしよう、と互恵関係を結ぶ小鳩君と小佐内さん。平穏な高校生活と放課後の美味しいケーキがあればいいはずなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵みたいに目立つことなんてしたくないのに、謎を解く必要に迫られる小鳩君は、穏やかな小市民の座を得ることができるのか。

  いやもうケーキと言ったらこのシリーズを選ばざるを得ないでしょう。
  ハンプティ・ダンプティのケーキバイキング1500円、作中の小佐内さんの食べっぷりもなかなかだけど、巻緒くんならどれくらい食べてしまうかな……なんて考えてしまう。
  巻緒くんに小鳩君を演じて欲しいというより、読み終わってから東雲さんに作中に出てくるケーキをおねだりする姿を見てみたい。


🔴水嶋咲
もちろんご多分にもれず「女の子がいる!?」と驚きましたし、いやそれにしても「咲」と名付ける親御さんもすごくない?と思ったら芸名でアッそうですよね察しの悪いPで本当に申し訳ない……となりました。
自分の本当の姿をお家では隠してるとなると、毎日の荷物大変だろうな……。いつか真に自分のお気に入りに囲まれた、のびのびとした生活を送って欲しいです。

長沢樹「消失グラデーション」(角川文庫)

「何と戦ってるのかわからないけど、独りで頑張るのって大変だよね」

長沢樹『消失グラデーション』角川文庫 74頁

男子バスケ部に所属する椎名康は、校内に侵入する不審者、通称「ヒカル君」の侵入をカメラでチェックする放送部の樋口真由に女子生徒との逢い引きを咎められる。椎名は複数の女子生徒と遊ぶ一方で、女子バスケ部のエース・網川緑に密かな恋心を抱くが、ひょんなことから彼女の自傷癖を知ることになる。ある日、バスケ部を辞めたがる網川と引き止める周囲との膠着状態の最中、網川がクラブ棟の屋上から転落してしまう――。

  前半はバスケ部を核にした青春小説、それが後半には屋上から転落した生徒の消失事件にまつわるミステリに鮮やかに反転する。十代の男女の不安定な感情やアイデンティティが描く、色とりどりのグラデーションが印象的な1冊。
  普通の男子から、放課後には可愛い「水嶋咲」に反転する咲ちゃんを連想して選びました。

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