私選 #315な本 C.FIRST編

最後はC.FIRSTです!


★C.FIRST
名物生徒会長3人組ユニット。生徒会長3人組ユニット……?
いやそもそも生徒会長になれるのって何年生だっけ……と思うくらい学生時代は遠い話なのですが、それにしたって1年生の生徒会長て何だ……?
ユニットモチーフは3つの三角形だけど、お誕生日エピソードを経てそれぞれ不安定なものを抱える3人の作る、ひとつの三角形の強度が上がっていってるようにも思える。


🔵天峰秀
16歳ならではの傲岸不遜さと青さがまぶしい。
本人としては作曲活動で有名になったこともアイドル活動を始めたのも至って普通の生活の延長なんだけど、それで周りと距離ができたことを立ち止まって考えられるし、親友が離れたこともずっと忘れてないし考え続けてる。えらい……。

麻耶雄嵩「あいにくの雨で」(集英社文庫)

「こういう時は温泉にでも入ってぱあっとした方がいいんだよ。俺たち親友だろ」

麻耶雄嵩『あいにくの雨で』集英社文庫 217頁

町に初雪が降った日、廃墟の“塔”についた明かりを見つけた香取祐今は、親友の如月烏兎と熊野獅子丸を誘って現場に向かう。そこで発見されたホームレスの死体は、祐今の父親だった。8年前に同じ“塔”で離婚した妻を殺した疑いをかけられ、失踪していた彼はなぜ戻ってきたのか。両親を失った祐今を案じて、烏兎と獅子丸は犯人を探し始めるが……。

  麻耶雄嵩作品を選ぶのはどうしようかな……と思っていたのですが、親友案件でこればかりはどうしても我慢できなかったです本当にすみません。
  殺人事件と並行して語られるのが主人公たちが通う高校の生徒会調査室(クリーク)という独自の内偵機関のエピソードなのもなかなか「ぽい」と思いませんか。
  個人的には烏兎→天峰、祐今→花園、獅子丸→眉見で観てみたいのですが、我ながら人の心がない配役だと思ってるのであまり大きな声では言えませんね……。


🟡花園百々人
なんちゅう家庭環境だ……。
時には隣にいる男の子が眩しすぎて嫌になることもあるけど、それを口に出せる、当の本人がその本音を聞いてくれるようになってきてるのが胸に来る。
幸せになってほしいというか、自分の手で幸せを掴めるようになってほしい。

砥上裕將「線は、僕を描く」(講談社文庫)

「水墨の本質はこの楽しさだよ。挑戦と失敗を繰り返して楽しさを学んでいくのが、絵を描くことだ。今日の講義はここでおしまい。今日は、来てくれてありがとう」

砥上裕將『線は、僕を描く』講談社文庫 66頁

両親を失ったことで心を閉ざし、流されるまま大学生活を送っていた青山霜介は、ひょんなことから日本画の大家・篠田湖山と出会い、彼の内弟子となる。絵筆すら握ったことのない霜介だったが、水墨画の楽しさを知ることで少しずつ外の世界に目を向けていく……。

  独りぼっちな青年の真っ白な心にどんどん線が引かれ、豊かな世界の色で彩られていくような1冊を選出。なので7thの「Hundreds Color」のライブ映像の、モノクロからカラーにうつろう演出を観てちょっとガッツポーズをしました。
  喪失の過程や度合いは違うけど、花園百々人くんの色のない世界も、315プロの皆との出会いからこういう感じに少しずつ色づいていってほしいし、きっとそうなっていると思いたいです。

🔴眉見鋭心
「趣味が水上バイク」の昭和の俳優ぽさがすごいと思ったら俳優一家でなるほど! お父さんは若大将ですか?
しかしまさかの過去が明かされて未だに消化しきれない……己を律するのは大事なことだけど、己を殺すまではいかないでほしい……。ほら皆で映画観て楽しんで……。

斜線堂有紀「キネマ探偵カレイドミステリー」(メディアワークス文庫)

「もう一本観てから決めようじゃないか」

斜線堂有紀『キネマ探偵カレイドミステリー』メディアワークス文庫 92頁

留年の危機にある大学生・奈緒崎は、進級を賭けて「大学に来ることなく引きこもっている嗄井戸高久を連れてくる」という課題を高畑教授から受けて下北沢の嗄井戸の居宅に向かうが、にべもなく追い返される。そんな中、昔馴染みの男性が支配人を務める近所の映画館『パラダイス座』をめぐる事件が起きる。事のあらましを聞いた嗄井戸は家から一歩も出ることなく、映画の知識でその謎を崩していく……。

  わけありの引きこもりで映画を愛する嗄井戸と、成り行きで彼と出会う奈緒崎。お互いの地雷を踏んで喧嘩しながらも少しずつ絆を深めていく不器用な友情描写が作者の真骨頂だし、読みどころだなと思う。
  私は映画に疎くて元ネタの映画を全く見たことがないくらいなのですが、眉見くんならどうですかね。知ってて楽しめるでしょうか。

我孫子武丸「探偵映画」(文春文庫)

「『探偵映画』を、完成させるのよ」

我孫子武丸『探偵映画』文春文庫 127頁

新作映画『探偵映画』の撮影中に謎の失踪を遂げた監督・大柳登志蔵。この時点で作品の結末を知るのは監督のみという状況で放り出されたスタッフと俳優たちは、撮影済みのシーンからスクリーン上の犯人を推理し、なんとか映画を完成させようとするが……。

  エムステ時代の名作エイプリルフールネタ『さいこうの夜』の元ネタである『かまいたちの夜』の作者・我孫子武丸の初期作品から1冊選出。失踪した監督を探しつつも、映画の犯人という、場合によっては主役を食うこともできるおいしい役が自分の演じる役であってほしいという欲を込めて犯人を推理するという、ユーモラスな謎解きを含んだ映画ミステリ。
  眉見くんは助手(舎弟)ならもう演ったけど、犯人役が来たらどう思うんだろうな……。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?