私選 #315な本 彩編

今回は彩です!


★彩
  和ユニットだ! 紫基調のカラーリングもいいし曲もオシャレ!  あと髪色が派手な方がおふたりほどいらっしゃるのが華やかですね。
  GSのいとをかし!のイベント衣装がかなり好きです。ネイルチップも作りました。

和柄のネイルシール使いまくるの楽しい。


🔵猫柳キリオ
え!?
待って!?
猫丸先輩がいる!?!?
えっ待って落語家?!
円紫さんなの!?(円紫さんではない)

誂えたように探偵役(刑事?)のお仕事をしてて動揺しながら撮った。

えええええ、東京創元社とコラボして!!!

倉知淳「日曜の夜は出たくない」(創元推理文庫)

この、スーツが似合わない、仔猫みたいなまん丸い目をした小男こそ、学生時代からの伝説の奇人変人なのだ――。

倉知淳『日曜の夜は出たくない』創元推理文庫 26頁

だぶだぶの上着を着た、仔猫のような目をした小男・猫丸先輩。好奇心旺盛で興味の赴くまま行動する彼は後輩の夢の話から自身のユニークなアルバイト先で起きた事件まで、持ち前の洞察力で推理していく。

  いやほんと騙されたと思って一度読んでみてほしい。外見描写が少ないのに猫丸先輩の脳内像が猫柳キリオになってしまうから。「お前さん」とか「そうさな」とか、ちょくちょく雨彦さんぽい口ぶりだけどそれはそれとして。というか私が長年ふんわりと持ってた猫丸先輩のイメージが猫柳キリオという形で現れてそこそこ動揺してます。
  若里春名くんの項で紹介した「幻獣遁走曲」は同じく猫丸先輩シリーズ(かつ、日常の謎寄り)ですが、それぞれが独立した短編集なのでどちらから読んでも大丈夫、のはず。

北村薫「空飛ぶ馬」(創元推理文庫)

ぴたりと座についた円紫さんが顔を上げて微笑した時、太宰治の読者ではないが、私にだけ笑いかけたような気がしてしまった。

北村薫『空飛ぶ馬』創元推理文庫 32頁

文学部の大学生『私』は、縁あって近世文学概論の加茂教授とともに、大学の先輩である落語家・五代目春桜亭円紫のインタビューに臨む。その際、円紫さんは加茂教授の思い出にまつわる謎を解きほぐす。落語と本を愛する『私』の成長物語と日常の謎、円紫さんの優しさと一流の芸を楽しめる1冊。

  本と落語ですよ、本と落語。まさに猫柳キリオのための1冊じゃないですか?  しかも最初の短編「織部の霊」は古田織部にまつわる話で、茶道のこともほんの少し掠めていく。うってつけとしか言いようがない。
  著者が元・国語教師で主人公が文学部の学生ということもあり、本や文学関係の描写が多いのも古書店巡りをするキリオくんに似合う。


🟡華村翔真
お名前も容姿も何もかもが華やか!
梨園の出ではないけど、中学生の頃に観た歌舞伎に魅せられてその道に飛び込んだんですね。サイスタでは中学生の「皇子」(王子ではないのがまた)が拝見できてびっくりしました。

なるほどなるほど。そういう小説、私知ってます。

近藤史恵「ねむりねずみ」(創元推理文庫)

でも、わたしはときどき夢を見る。舞台の真ん中で、幾百の観客の、えぐるような視線を浴びながら、立っている夢だ。

近藤史恵『ねむりねずみ』創元推理文庫 247頁

学生時代に歌舞伎の世界に魅入られ、役者の世界に飛び込んだ瀬川小菊。大学の同級生で私立探偵の今泉文吾が2ヶ月前に劇場の客席で起きた殺人事件の調査を依頼されたことを知り、成り行きで協力することに。同時に語られる人気女形の歌舞伎役者とその妻、そして雑誌記者との三角関係と、2ヶ月前の事件が少しずつ重なっていく。

  初めて華村翔真さんの人となりを知ったときに即座に思い出した1冊。特に211〜212ページの瀬川小菊がなぜ歌舞伎役者になったかを語るシーンは、本当に華村さんとオーバーラップするので。
  作中で語られるように、来る役はお姫様を映えさせる腰元や仲居の役、台詞が貰えれば御の字の世界。それでも華村さんの芝居はキリオくんの目を惹き、ライバルとなる御曹司の白鶴さんも一目置く独特の華やかさがあるんだろうな、と想像するに難くない。

追加1冊。近刊より。

柴田勝家「メイド喫茶探偵 黒苺フガシの事件簿」(星海社FICTIONS)

「そうさ。私は秋葉原で働き始めて十数年、メイド歴なら一流だ。そんな私だから依頼が来る。メイド喫茶が健全に運営できるよう、内部から調査してくれ、と」

柴田勝家『メイド喫茶探偵 黒苺フガシの事件簿』星海社FICTIONS 31頁

高校の修学旅行でひやかし半分にメイド喫茶を訪れたボク(ぼっちー)は、クラスの女子よりずっと華やかでアイドルよりも身近なメイドさんにすっかり魅了され、大学進学を機に秋葉原のメイド喫茶巡りをするようになる。コロナ禍の休業により行きつけのメイド喫茶〈はぴぶる〉に通えなくなったものの、メイドさんのリモート配信を楽しむが、コメント欄から不穏な雰囲気を感じて指定されていた待ち合わせ場所に向かう。そこにいたのは黒苺フガシと名乗る美女で――。

  今やいろんな探偵の出てくるミステリが存在しますが、メイド喫茶のメイドさんが探偵をする小説ももちろんあるのです。
  こちらは連作短編になっており、広い意味でメイド喫茶なれど、様々なコンセプトの店舗が出てくる(そして事件が起きる)。また、カフェ店員さんでありながらも身近なアイドル的存在であるメイドさんの在り方についても語られており、そういう意味でも興味深い作品。

 なお著者の柴田勝家さんはシンデレラガールズのPであり、ブルータスNo.933のアイマス特集号にもインタビューが載ってます。


🟡清澄九郎
お名前から容姿からすべてが清らか。
キリオくんや華村さんに翻弄されながらも、真面目で堅いところから少しずつ視野が広がったりするのかな、と思ったりします。

へちまたわしで体洗うの!?

あとおじいさまのインパクト強いですね。家元というより師範の雰囲気がある。棒術とか古武術の達人みたいな。

坂木司(編)「坂木司リクエスト!  和菓子のアンソロジー」(光文社文庫)

「僕が思う日本らしさは、包み込むこと。相手を尊重して、いいところはどんどん受け入れる。それもただ真似するんじゃなくて、自分たちなりのアレンジを加えて包む。それってすごく素直で伸びやかな感覚だと思うんだけど、どうかな」

『和菓子のアンソロジー』所収 坂木司『空の春告鳥』 36頁

デパートの和菓子売り場で遭遇する「飴細工の鳥」、季節ごとの果物を餡に挟んだ果物どら焼き、葛のような三途の川、モロッコで回想する松露、高原のカフェの泡雪羹、作業療法のこなし、父と息子の和菓子勝負、夏の牡丹餅・夜船、両親の思い出の葛さくらと黄身しぐれ、個性的な性格の男が送る上菓子。色とりどりの和菓子の詰め合わせそのもののようなアンソロジー。

  お茶や茶道にまつわる小説よりも和菓子のほうが思いつきやすくて……。中でもこちらはアンソロジーで、いろいろな話をつまむように読めるので楽しい。引用した坂木司「空の春告鳥」の日本らしさを表す台詞だったり、牧野修「チチとクズの国」の真面目に生きてきた故に追い詰められた主人公の話だったり、九郎くんのことを少し思い出すようなエピソードがあるような気がする。

  もちろん茶道が絡むミステリ小説の候補はあったのですが、思うところあって後述。

西條奈加「まるまるの毬」(講談社文庫)

「それなら、抹茶砂糖にした方が、それらしいのじゃなくて?」
「本当だ。それならまさに、松の翠になりますね」

西條奈加『まるまるの毬』講談社文庫 79頁

江戸の麹町にある小さいながらも行列のできる菓子店・南星屋。若い時分に修行で国中を巡った治兵衛の作る、諸国の名物菓子を庶民でも買える値段で店頭に並べている。何かを抱えている治兵衛と、出戻り娘のお永、おてんばな看板娘の孫お君、治兵衛の弟で大住職の石海と、温かな家族にひたひたと不穏の影が迫る――。

  時代小説には明るくないのですが、九郎くんになら選んでみたくて和菓子にまつわる好きな1冊を選出。美味しそうな和菓子と温かい人情話、気に入って読んでくれそう。

東野圭吾「卒業」(講談社文庫)

ずっしりとした重みを感じながら茶碗を取る。、深い草色の淀みがそこにある。ビーズよりももっと細かい泡と共に飲み干した後、何も言わずに茶碗を戻すのが裏千家だ。

東野圭吾『卒業』講談社文庫 62頁

国立T大の女子学生専用アパート『白鷺荘』で、大学茶道部の4年生・牧村祥子が2階の自室で死んでいるのが隣人の金井波香と友人の相原沙都子により発見される。祥子の死が自殺か他殺か、警察の捜査も進展しないうちに、茶会で行われた『雪月花之式』の途中で、今度は金井波香が毒物死する。一連の事件の動機は? 他殺ならば犯人は誰なのか? 被害者の共通の友人である加賀恭一郎は謎に挑戦する。

  お茶の出てくるミステリ、お茶で殺してしまうからなんとなくあげにくいんですよね……という理由でおまけでの紹介。
  作中で出てくる雪月花之式が(事件のことはさておき)楽しそう。


さらに後から思いついた分として、彩のみんなに似合う本を1冊。

三浦しをん「仏果を得ず」(双葉文庫)

「文楽の世界は昔っから、世襲制やない。実力と才能だけが物を言うんや」

三浦しをん『仏果を得ず』双葉文庫 147頁

高校の修学旅行先でいやいや見学した人形浄瑠璃・文楽のエネルギーに圧倒された健(たける)はその虜になり、師匠に振り回されながらも義太夫を極めるべく日々奮闘している。ある時変わり者の義太夫三味線・兎一郎と組むことになり、その変人ぶりにさらに振り回されながらも少しずつ相方として絆を深めていく。まさに文楽バカの健だが、ひょんなことからある女性に一目惚れをしてしまい、芸と恋の間で悩むことになる。

  いやこれは3人で読んでほしい。
  世襲だけではなく実力と才能が物を言うのは、恐らく3人の職業の中だと落語が一番近そうだなと思うし、なんだかんだ義太夫のことばかり考えてる健のことをほっこり顔で見守りそう。

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