02 TXT Vol.2 IDを語りたい

最初は本当に何の気なしに。
いやそれもおかしいか、
立体の萩ちゃんに初めまして、をしたこの舞台。

2021年6月東京・7月大阪
https://txt-theater.jp/

見てみたら、演者 萩谷慧悟にどっぷり引き込まれ
そしてこのIDの世界に脳を全て持っていかれ。
結果自分的初日に加えて2回、追加で観劇をしたという
それはそれは大きな出会いだったIDを語ります。

てか当時深夜まで書き殴っていたものを再構築します。
ここから本編の内容に沢山触れます。
演者 萩谷慧悟を語る部分はほぼないです。
舞台そのものを語ります。


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同時期に怜央さんはタンブリングでしたね。
タンブリングより、世界観がわからないままの観劇でした。
1人2役を演じること、図書委員でサッド。感情の輪。
ほんとに、それくらいの理解力で挑みました。

高い知能を持つ、知能の結集体、委員会。
テーマは。アイデンティティは、何に宿るのか?
それぞれの個体が持つ、感情こそがアイデンティティだと
それを証明するための、実験。

まず、ここ世界観がドンピシャに好きだった。
興味のあるテーマだった。

そして実験を演じる、このナマモノの舞台。
回を重ねることが、これ自体が実験であり
今目にしている演目そのものが実験の様子
そのものであること。
重ねるごとに変化していく人間と、アバター。
ナマモノの醍醐味をこれでもかと、味わった。

Ⅰ.葛藤の擬人化から見えた、人間の脆さ


細分化され、1つずつの感情を与えられた彼ら。彼らがぶつかりあうことは1人の人間の葛藤の擬人化。
テラが勝てば、その状況に怯えて。アンジが勝てば、カッとなって、ヘイトに共感なんてしたらそれはもうすごく残酷な方向へと力が発揮されて。
信頼はヘイトの対極にあって、ホープの存在は拠り所で。アンジの片腕にはホープが宿るけど、もう片腕にはヘイト。
どちらに傾けるかで、行動は大きく変わっていく。

葛藤の擬人化を見て、人間の脆さを目の当たりにした気がした。ちょっとバランスを崩したら、感情って簡単に崩壊する。そして、人間のアイデンティティが感情に由来するのなら。人間って、簡単に崩壊する。

Ⅱ.感情が自分を動かすのか、自分が感情を動かすのか


8つの感情は、感情を由来とする行動をとる。
けれど、そこには感情ありきではなくて、目的がある。
怒りたいから怒るんじゃなくて、閉じ込められた状況、監視下、パンばかり、その不満を明らかにするためにアンジは怒った。ホープも、何だろう、目的に都合よく、期待するよね。
ヘイトだって、何かを憎むことが主目的じゃない、憎い何かを、「変えたい」と思ったらあとは憎しみの気持ちで、方法で突き進むというだけで。

目的を見誤ったり、それでとある感情を暴走させちゃったり、すると良くないことが起きるのかな、じゃあその良し悪しを決めているのは誰だ?それが自分?その良し悪しのジャッジができるのは知性?じゃあ自分ってやっぱり「何に宿るの?」

Ⅲ.自尊心と、偏った感情


テラが怖がったもの。たくさんあったけど、不気味な場所に入るのも、はぐれるのも、このまま逃げ続けるのも怖くて、でも最も怖かったのは、自分のアイデンティティ、terrorという感情が失われること。
だから、ヘイトには賛同できなかった。みんなも同じ。
8人とも、与えられたその感情しかないのだから。

ヘイトは、感情を委員会に消されるくらいなら、自分の手で感情を破壊した=最後を迎えたんだよね。
憎悪の感情が肥大したら、怒りを食い殺し、自分も傷つける。支え、抑制する感情がなきゃいけないんだ。

感情は、目的のためにねじ曲がる。
感情を細分化され偏った彼ら、1人また1人とピースが減って、4人しかいなくなった彼らには均衡をとる術はなかった。
1人の人間も、何かの感情が欠落していれば、葛藤の擬人化と同じように、ぶつかり合ってしまって正しく結論を導けないんだろう。

更には。彼らは序盤も序盤、サッドの、悲観のミスリードで
目的を見誤った。委員会は更生させることを目的としてスタートしたのに、委員会の非人道的計画に立ち向かった。目的を読み違えた。
この実験、成功するには?という話が特典映像内にあったと思う。私の考えは、まず目的に対して8つの感情で検討すること。そして8つの感情、欠けてはいけない。サッドが消された時点で、実験は失敗なんだ。

Ⅳ.葛藤と知性の顛末


ヘイトが、アンジを殺してしまう。感情同士の葛藤
生徒会長が、学級委員の記憶を消してしまう。知性同士の争い
その2つが、同時に描かれている意味にハッとした。
感情同士のぶつかり合いが招く顛末、
知性同士のぶつかり合いが招く顛末。

どちらも他者のことをだめにしてしまった。
知性同士の争いのほうが見た目としてはわかりやすいかもしれない。歩み寄れなければ、力で、黙らせるしかない。
でも、感情同士でもそれは同じで。人間の心の中で、いとも簡単に殺人は起きる。感情は損なわれる。誰の心の中でも、簡単に起きてしまう可能性がある。

Ⅴ.感情を持たない彼らに感情が宿るとき


感情を1つ1つ取り出し分けるなんて。そんな尖った感情持たせたら何が起こるか…そういう可能性に言及することはできても、彼ら委員会の分業体制ではその点について議論する、なんてことはない。デザイナーは、生徒会長だから。
あとはみな、実現のために動くパフォーマーたちだから。

たっくさん繰り返してきた研究。その過程で、7つの知性に、宿ってきた感情。知性をアイデンティティとし、知性を拠り所として生きる彼らだ。そりゃ、自分の才能に自惚れる人ばかりになるよ。だって感情を初期装備で持たされていない。拠り所は才能に、しかない。

知性は、自分の知性、その知性から導き出される正論、その正論のために行動する。
開発された人工知能。彼らは正真正銘の実験台。
まさに実験の最中。いや、佳境。

自分が人間ではなく人工知能だと知り、
それでも段々に感情が芽生えてきていることを知り、
目に涙を感じた図書委員。その涙はどこからきたの。
どんな感情に連れられて、やってきたのかな。
感情の存在を感じて、嬉しかった、嬉し涙だといいな。


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当時の自分が驚くほどに思いを書き散らしていて
再構成とか言ったけど全然無理でした。
無理矢理に小見出し的なものを作ってみたけど
全然うまいことなってない。

要はね、こんなにも脳と心の容量をかっさらっていった舞台は初めてで。この作品そのものが大切な存在だし、そこに携わった萩谷慧悟という役者に拍手を送り続けたかった。

色んな側面を持っている彼ら、そして萩ちゃんだけど
板の上の萩谷慧悟に特別な存在感を感じている。
そんなわけで、
これから始まる舞台が楽しみで仕方ないのでした。

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