03 映画30Sをとことん語りたい

映画30S

この夏にこの映画があってくれて良かったなと思う。

本編の内容にガンガン触れるような感想を垂れ流し、
そして勝手な考察を書き殴ります。
きっと今しか書けないことだから、忘れたくないから。

---


まず。

映画30S
この夏の日々に、
私に寄り添って背中を押してくれてありがとう。
いつまでも、この夏のこと忘れないんだろうと思うんだ。

30歳。嘘。人生。自分。過去。未来。

映画の世界は135分。
でも30Sの人生の時間分そのまま重ねて、
気づいたらとんでもないところまで感情移入してた。

あまりに今の自分に近いこと。
気づいたらあっちもこっちも自分ごとのようだった。

色んな感情になったけど、1番にやっぱり、タケル。
ドレス姿の奥さんに対してのあの状況は
いつまでも許しませんが
30を1番に、
真正面から受け止めて…受け止めきれてなかったりもして
御手洗からの連絡がある前からきっと
30になる自分のこと、
考えたり、考えないようにしたり、
見つめすぎたり、見ないようにしてきたり、
してたのかなって。
ちゃんと受け止める人、ちゃんと信じる人、タケル。


蓮香は、その裏の裏まで見る人。
角度をつけて鋭角から見る人、自分をさらけ出すまでに
おそらく途方もない時間がかかるような人。
やりたいことがない、ほんとにないんだもん、のあの子は
周りの人間によって自分自身を形成していた、きっと。
月と太陽が離れていくことが、
彼女にとってどれだけのダメージだったか
最早嘘も取り繕いも何もなさそうな蓮香だけど
1番、頑丈な鎧を着ている人なのだと思う。


タケルと蓮香。
御手洗が言ったことを同時に聞いていた2人だけど
1人は真実として受け止め、
もう1人は10年間嘘だと思い続けた。
嘘も真実も、誰かがいないと成り立たないし
誰がいるかによって形を変えてしまうんだなぁ
何が嘘か。何が真実か。
そんなこと世の中には溢れるほどあって
真実も嘘も、等しく脆いものだと思い知った。


薫にとって兄の失踪は、自分自身を見失うこと。
兄の嘘から生まれた自分。甲の妹の薫。それが私。
兄は嘘つきでしたか?と問うシーンがあった。
あの時、兄は嘘つきではなかったと思いたい気持ちも
兄は嘘つきだったと思いたい気持ちもあったのかなって。
兄が嘘つきでなければ、自分は生まれていないから。
兄が嘘つきだったら、それさえも嘘かも知れないから。
「あの嘘」が本当であることを祈ること
思いが強ければ強いほど、現実になる、
あのセリフを聞いたのはタケルと蓮香だけど、
薫が1番そう思いたいんじゃないかな。


御手洗甲。10年前のあなたは向かうところ敵なしのような
希望に満ち溢れた青年だったのでしょうか。
その裏には、どんなことも自分の信念で貫いてきた姿が
あったのでしょうか。
10年後のあなたは、弱々しすぎるなと思いました。
敵なしだったのではなくて、敵はいないと思い込み続けた
約束された未来が、ないなんて選択肢になかった
ある日突然その糸が切れてしまったとしたら
あなたは押しつぶされてしまうんじゃないかと
そう思い始めた時から、
10年前のあなたにも背負った何かが見える気がした。


特別なシーンがある。
タケルが涙するシーン。
特別なセリフがある。
もう、世界の中心ではいられない。


30S
自分は世界の中心ではなくて。
それは自分を押し殺せとか犠牲になれとかそうじゃなくて
他者との関係性の中や距離感や空間やコミュニティや
それは今この瞬間のことだけでなく
過去との距離感や、未来との位置付けや
そんなあらゆるものたちの中で成り立つべき自分
それを知ること。タケルがこのまま30歳にはなれないと
必死に探すように出ていった先でのこの言葉。
タケルが求めていたのは、これだったんじゃないかなって。


30S
たとえ画角の端の方に自分が位置していても。
世界の中心ではない自分を受け入れることが30なのかな。
それを受け入れられたのが、あの涙なのかな。


ちなみに、私も受け入れた。
映画公開期間中に30歳になった。受け入れたら楽になった。

それでいうと夕美は。きっと彼女も30Sだろうけど
世界の中心ではいられないこと、
いなくていいのだということ
早くに知っていたのかなと思う。
もしかして、世界の中心という考え方すら
始めから持っていなかった可能性もある。
それは少し寂しいな。

こんなふうに。
このひとつきほどの時間、何回かの観賞で
私は彼らと生きていた気になっている。
だからやっぱり、
素敵な135分だったの感想では留まれない。
彼らの人生と出会えて良かったと、思っている。


---


ここからは。推理ものかと思うくらいの深読み合戦。

先に断っておきます、
ただの一個人のお気持ちの書き殴りです。
自己責任で読んでください。


1番嘘のない人。というか嘘にできない人、タケル。
あなたがついた嘘は、カレー、、?くらいかな。

それから薫。あなたの存在証明に嘘は不可欠ですが
だからこそ御手洗薫は真実の人なのだと思う。

御手洗甲。
月に立っている。
約束された明るい未来がある。
別れる。
嘘になったのは、どれですか。それでも尚あなたは
嘘なんてついたことがないと言いますか。

蓮香。
あなたをそうさせたのは本当に3年の月日ですか。

高来さん。
そこまで含めて、あなたの優しさですか。
守れなかった蓮香への、あなたの誠意ですか。

御手洗と蓮香が別れて3年。それが本当だとしても
2人は関わりを続けていた線の物語を考えます。
発端は興信所が出してきた写真。
写る2人。新しい機種のスマホ。
3年前別れる時には古い機種なのに。

別れたころから御手洗は
後ろめたいことに手を染めていった。
もしくはそれで別れた。
詐欺なのか、詐欺ではなくとも、よくないこと。
隠してきた。それを蓮香が知ってしまった。
いやずっと知ってたかもしれない。知ってて、
私だけ幸せになるわけにはいかないと言ったのかな。
追い打ちをかけるように、失踪の知らせ。
もしかしたら失踪のことも知っていたのかも知れない。
鍵を返す、なんてもの以上の
もっともっと深い別れに、直面したのかも知れない。

元々アルコールに逃げてはいたものの、悪化。
もう御手洗の姿形を感じることはできないと、思ってた?


タケルがあの日。
あの日タケルだけが向き合った御手洗は、
タケルの想像の世界だと思う。
30歳を迎えるために、
過去の自分に未練みたいなもの残して、
それで蔵野に会いにいったタケルだもの。
そこで自分自身を受け入れた上で、
書いた夢は叶わない、叶えないよと、
御手洗にも会わないと
彼は30になれなかったんじゃないかな

ギターを燃やしてみせたことが
自分自身への決意表明で、御手洗への嘘のない姿勢で。

薫を巻き込んだのは誰か。
御手洗、自作自演ってことあるかい?
協力者がいて、最後に自分の存在証明である薫へ。
薫があの嘘から自分自身の存在を確かめていったように
御手洗にとっても薫の存在が自分の存在だったはず。

御手洗は、タケルの嘘を赦した。でも
御手洗は、自分自身の嘘を赦せなかったんじゃないか。

10月31日という偉大な日を
ある男が嘘つきじゃなくなった日を
月に立てない嘘つきで、約束守れなくてごめんな、の彼は
迎えること耐えられなかったんじゃないか

御手洗は30歳を迎えずに。地球を去った、?
そして月に。夢も希望もない世界に。

タケルは、
御手洗への思い、強く願うことで、御手洗に赦された。
信じ抜くことで嘘や幻も真実になったんだきっと。
蓮香は、もう自分の一部になっている御手洗を、そして自分を赦すことで前を向いた。
嘘ばかりの世界で生きるのは、やめた。
薫は兄へと辿る道中で兄を感じ、そして自分を成り立たせた

兄の居場所がわかりました、
それが幸せの始まりではなかったとしても
嘘によって、自分を見失わずにいられた。嘘に生かされた。

それから高来さんは、
自分自身の手でメールしたのではないにせよ
誤解をとかなかったとか、聞いた上で受け入れたとか、
あの歩道橋で少しはっとする表情が気になる。
その誤解をとくことが必要不可欠なのか、
高来さん自身にとってはもちろん潔白を証明すべきなのに
それよりも蓮香の悪循環を止めてあげたいと祈った。
そのためにはこれも役立つのでは、
出社せず、給与が保障されるであろう彼女への措置を想像しながら。
もちろん、彼女には内緒。嘘をつく。優しい嘘。


嘘が真実になること、真実が嘘になること
いい嘘、悪い嘘、自分のための嘘、あなたのための嘘
全てを委ねる嘘、真実に執着すること、嘘に執着すること

色んな嘘があって。やっぱり嘘も真実も脆くて。

でも生きてさえいれば。
夢だって希望だって、未来だって。

なんて。
現実味ばかりになりがちな私の、行き着いた先でした。


30Sとともに過ごした30Sな日々。
忘れません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?